日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう?
ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。今回は北海道釧路駐屯地の「ザンタレ」を紹介します。
サクッとジューシーな鶏の唐揚げに、こってりとした甘酸っぱいたれをからめた地元発祥の人気メニュー。酢とごま油の効いたたれは意外にもさっぱりとした味わいです。
今年で創立70周年!陸上自衛隊釧路駐屯地
陸上自衛隊釧路駐屯地は、自動車で釧路空港から約30分、JR釧路駅から約20分の位置にあり、釧路湿原国立公園にも近く、大自然を身近に感じることができます。
1953年に開設された駐屯地には、現在、第27普通科連隊のほか、第5後方支援隊第2整備中隊第3普通科直接支援小隊や第14施設群第397施設中隊などが駐屯しており、今年で創立70周年を迎えます。
甘酸っぱいタレがくせになる味
今回紹介する「ザンタレ」は、釧路の鶏料理店が発祥といわれ、北海道の味としても認知度が高い、鶏の唐揚げ「ザンギ」のアレンジバージョン。いまや鶏肉だけでなく、「タコザンギ」、「鮭ザンギ」などバリエーションメニューも登場していますが、「ザンタレ」はその名のとおり、ザンギにたれをかけたもの。
隊員食堂では、ザンギは揚げる前の下味を少し濃くしてレモンを添え、ザンタレは仕上げにたっぷりのたれをかけるので、下味を薄めにしているそうです。下味を付けた鶏肉にからめる、片栗粉、小麦粉、溶き卵を混ぜた衣のことを、地元の人、とくに昭和世代は「どろんこ」と呼ぶのだとか。
衣がどろっとしているからだそうです。副菜にはポテトサラダ、みそ汁または中華スープを付けることが多いとのこと。甘酸っぱい特製のたれは胃にもたれることなく、午後の任務を軽快にこなせると好評です。
スパゲティの上にトンカツをのせた、釧路のもう1つのローカルフード「スパカツ」とともに、「ザンタレ」の人気も全国区になること間違いなし!
食べた感想は?
「甘酸っぱいたれがからめてあるだけで、揚げ物も軽やかに感じます。唐揚げもご飯もパクパクいけちゃいますね~」(3曹/男性・20代)
「釧路駐屯地に異動して初めてザンタレを食べたときは、『こんなアレンジがあるのかー!』と感動しました」(3曹/男性・30代)
「サクサクした衣に、しっとりしたたれ。この絶妙なバランスが癖になります。ザンタレの日が楽しみでなりません!」(士長/女性・20代)
世界各国の料理で給食時間を楽しく
【陸上自衛隊釧路駐屯地 業務隊補給科糧食班 栄養管理主任 中里多佳子】
釧路町の隣町・標茶町出身です。栄養士を目指して釧路市内の短期大学に通っていたときに実習生として当駐屯地に来て、隊員食堂の献立作りに関わってみたいなと思いました。
1993年に入隊、2年間の実務経験をこなし、95年に管理栄養士の資格を取得、98年からこちらで勤務しています。月1回エゾシカ料理を提供したり、ハワイのロコモコ、韓国のチヂミ、チゲ、スペインのアヒージョなど、予算の関係上あくまでも「風」ですが、世界各国の料理を作ったり、少しでも給食時間を楽しんでもらえるよう、工夫を凝らしています。
「ザンタレ」のレシピを紹介
<材料(2人分)>
鶏モモ肉(約3㎝角に切る):300g
<A>
しょうゆ:大さじ1
酒:小さじ2
おろしショウガ:小さじ1
<B>
片栗粉、小麦粉:各大さじ2
卵:小1個
揚げ油:適量
リーフレタスなど:適量
[特製だれ]
しょうゆ:大さじ2
砂糖、酢:各大さじ1
みりん、酒:各大さじ1/2
ゴマ油:小さじ2
<作り方>
1:鶏肉はAの調味料をもみ込み、1時間以上おいて下味を付ける。
2:特製だれを作る。小鍋に調味料を入れ、少し加熱しながら混ぜ合わせる。
3:ボウルにBの材料を混ぜ合わせて衣を作り、1にからめる。
4:揚げ油を180℃に熱し、3を入れてカラッと揚げ、油をきる。
5:器にリーフレタスなどを敷き、上に4を盛り、2をかける。
注目食材:ザンギとザンタレ
北海道では鶏の唐揚げを「ザンギ」と呼ぶ。1950年代半ばに釧路市の鶏料理店が鶏1羽をぶつ切りにして唐揚げにしたのが始まりとされ、語源は中国語の鶏の唐揚げ「炸鶏(ザーチー/ザーギー)」から、鶏をザンギリにして揚げるから、など諸説ある。
揚げる前にしょうゆベースのたれに漬け込むのが特徴。「ザンタレ」はザンギから派生したアレンジメニューで、ザンギにさらに甘酸っぱいたれをかけたもの。こちらも釧路市発祥とされ、たれの味は各家庭、各店で異なる。
(MAMOR2023年11月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/星 亘(扶桑社) 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです