•  自衛隊には、スイーツの作り方を教える学校から、デザートのコンテストまであると知っていましたか?

     自衛隊とスイーツの、人知れず深まっている甘くて意外な関係をもっと知りたい方に、硬軟織り交ぜた「あま~い話」を進呈しよう。あなたのお好みはどれかな?

    「デザート甲子園」は陸上自衛隊の熱いスイーツバトル!

    画像: 「デザート甲子園」は陸上自衛隊の熱いスイーツバトル!

     陸自の中部方面隊が、独自の給食向上施策としてデザートに焦点を当てたコンテストを開催。

     それが2021年度に開催された「デザート甲子園」だ。命名の由来は、中部方面総監部が所在する兵庫県にある高校野球の聖地にちなんだもの。

     コンテストの開催が決まると、中部方面隊に属する各駐屯地から32品ものレシピがエントリーされた。

    最優秀、優秀献立に選ばれた4つの駐屯地には、認定証のほかに副賞として、三ツ星ならぬ三ツ桜のグルメガイド風の認定盾が贈られた

     まずは陸上幕僚監部に所属する栄養士、需品学校教官などによる1次審査(書類選考)が行われた。1個あたり90円以下で作れることが条件。

     評価ポイントは、見た目、独創性、手作り感、大量調理への適合性の4項目だ。この段階で選出されたのが、姫路駐屯地(兵庫県)の「アーモンドキャラメルタルト」を含む4レシピだ。

    画像: 大津駐屯地の「中混団子inびわ湖」

    大津駐屯地の「中混団子inびわ湖」

     次にその4レシピを各駐屯地に送付。それぞれの隊員食堂で実際に作って提供され、隊員の投票による2次審査が行われた。

    出雲駐屯地の「出雲トライフル」

     厳正な審査の結果、初代最優秀献立に輝いたのが、出雲駐屯地の「出雲トライフル」だった。

    善通寺駐屯地の「抹茶プリン」

     審査員を務めた中部方面総監部装備部需品課の栄養士は、「デザートの充実は、近年、増加の一途をたどる女性自衛官から絶大な支持を得ていると自負しています。コンテストの際に総監(当時)がおっしゃった『甘いものを食べると、みんな自然と笑顔になるよな』の言葉どおり、隊員食堂にも笑顔が増えたように思い、デザート甲子園の意義を強く感じています」と語ってくれた。

    アーモンドキャラメルタルト(兵庫県・姫路駐屯地)の作り方

    画像: アーモンドキャラメルタルト(兵庫県・姫路駐屯地)の作り方

    材料(1人分)

    タルトカップ(内径4.7cm):1個
    麩:1.8g
    バター:1.5g
    砂糖:2.5g
    牛乳:1.5ml
    スライスアーモンド:1.5g
    冷凍ホイップクリーム:6g
    好みのドライフルーツ:5g

    作り方

    1:鍋にバター、砂糖、牛乳を入れて火にかけ、混ぜながらバターを溶かし、麩とアーモンドを加えてからめ、オーブンの天板に並べる。

    2:170度に予熱したオーブンに1を入れ、170度で10分ほど焼く。

    3:2が冷めたら、タルトカップに入れ(1個につき麩3個くらい)、ホイップクリームを絞り、ドライフルーツをトッピングする。

    海自、空自の「スイーツも作れるシェフを育てる学校」

    画像: 海自の第4術科学校では、洋菓子の先生も招いて、ケーキ作りの技などが直伝される。先生の手の動きを見逃すまいと真剣なまなざしの学生

    海自の第4術科学校では、洋菓子の先生も招いて、ケーキ作りの技などが直伝される。先生の手の動きを見逃すまいと真剣なまなざしの学生

     海自と空自では、共に専門職として、隊員の食事を調理する「給養員」を育てている。それが、京都府舞鶴地区にある海自第4術科学校と、福岡県芦屋基地にある空自第3術科学校だ。

     海自第4術科学校で給養を学ぶ学生は、年間約135人。基本編と上級編に分かれ、教育期間はそれぞれ約12週間と約14週間だ。

    画像: 海自の第4術科学校では、飾り切りも学ぶ。包丁で細工され、大皿に盛り付けられたフルーツは、会食のテーブルを華やかに演出してくれる

    海自の第4術科学校では、飾り切りも学ぶ。包丁で細工され、大皿に盛り付けられたフルーツは、会食のテーブルを華やかに演出してくれる

     設備の大きな特徴は、「集団給食実習室」に普段の給食に使う器材だけでなく、賓客を招いた艦上レセプションや会食といった特別な場で提供する日本料理、中国料理、西洋料理のための器材、食器が取りそろえられていること。

     公式な場における食事提供に必須の「テーブルマナー実習」では、主に西洋料理の略式フルコース、ビュッフェを提供するためのテーブルセッティングや演出、プロトコール(国際儀礼)の基本的な考え方を取り入れたサービスを学ぶ。

     さらに和洋中それぞれの料理やスイーツについては、その道のプロフェッショナルに講師を依頼するというから本格的だ。

     一方、空自第3術科学校で給養を学ぶ学生数は最大24人。課程は初級と上級に分かれ、教育期間はそれぞれ約5週間と8週間だ。

    画像: 空自の第3術科学校の厨房で、「ガトーショコラ」を作る学生たち。竹串を刺し、焼き上がり具合を確認しているところ

    空自の第3術科学校の厨房で、「ガトーショコラ」を作る学生たち。竹串を刺し、焼き上がり具合を確認しているところ

     和洋中さまざまな料理について学ぶが、その中の会食用メニューとして、プリンやクッキー、ガトーショコラ、白玉ぜんざいなどのスイーツの作り方を習得する。

    画像: 味がおいしいのはもちろんだが、会食用に飾り立て、美しい1皿に仕上げるところまで求められる

    味がおいしいのはもちろんだが、会食用に飾り立て、美しい1皿に仕上げるところまで求められる

     課程を終えた給養員は、部隊新編による記念式典や公人などの来訪に伴う会食、各種レセプションでその技術を披露する。

    特務艇『はしだて』のシェフは「スイーツの腕前」がスゴイ!

    画像: 外国からの来賓を招いた『はしだて』のレセプション会場。交流の場を盛り上げる色とりどりの料理やデザートは全て給養員が作ったものだ

    外国からの来賓を招いた『はしだて』のレセプション会場。交流の場を盛り上げる色とりどりの料理やデザートは全て給養員が作ったものだ

     特務艇『はしだて』の「特別な任務」の1つに、来賓への「接遇」がある。防衛省がホストとなり国内外の賓客を『はしだて』に招き、「おもてなし」の心で相互の架け橋となるのだ。

    画像: チョコレートで絵を描く給養員。細かい作業もお手のものだ

    チョコレートで絵を描く給養員。細かい作業もお手のものだ

    『はしだて』でパティシエとしての任務に当たる清水陽一2等海曹は、「『はしだて』に乗艇した給養員は、1年間見習いとして料理やデザート作りの雑務をこなします。

     先輩から料理に関する基本的な知識や技能を教えてもらうほか、年に数回、民間の料理講習に参加して技能習得を目指します」と教えてくれた。

    画像: デザートプレートはまるでアート作品

    デザートプレートはまるでアート作品

     清水2曹自身も、約80種類のスイーツを作製してきたという。

     日本らしい季節感を表現したデザート作製の工夫はもちろん、「この国からの来賓は甘めの味を好む」といった経験による知識を生かし、ゲストによって味を調える。

    画像: カラフルなデザートが並ぶビュッフェは一流ホテルのよう

    カラフルなデザートが並ぶビュッフェは一流ホテルのよう

    「見て楽しく、食べては人を笑顔にするスイーツは、人の心を射止める最大の武器になり得ると考え、日々精進を重ねています」と語る。

    災害時には被災者支援を行う

    画像: 災害時にはベッドを並べ、応急治療を行える場に

    災害時にはベッドを並べ、応急治療を行える場に

    『はしだて』は災害時には状況に応じて医官看護官衛生員などを同行させ、被災地で傷病者の手当てや洋上搬送を行うため、日ごろから訓練を実施している。

     東日本大震災では、海域での行方不明者の捜索や避難所への給食支援活動を行った。

    画像: ほかの艦艇では見られない「白」を基調とした『はしだて』。全長62メートル、全幅9.4メートルと小型のため、離島や水深の浅い港にも入港できる

    ほかの艦艇では見られない「白」を基調とした『はしだて』。全長62メートル、全幅9.4メートルと小型のため、離島や水深の浅い港にも入港できる

     艦内の特徴としては、接遇区画と呼ばれるエリアは足への負担が少ないウッドデッキが整備され、ほかの自衛隊艦艇と比べ幅が広く傾斜が緩やかな階段など、被災者の安全が考慮された構造となっている。

    (MAMOR2023年9月号)

    <文/真嶋夏歩 写真提供/防衛省>

    自衛隊スイーツ部へようこそ!

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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