日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。
今回紹介する香川県善通寺駐屯地の「乃木うどん冷やしぶっかけ」は駐屯地ゆかりの乃木希典将軍が考案したとされる「乃木うどん」の冷やしぶっかけバージョンです。さっぱり味なのに満足度100%で暑い時季にお勧め!
善通寺駐屯地の任務とは
陸上自衛隊善通寺駐屯地は、香川県内で唯一海に面していない市、善通寺市にあります。同市内の総本山善通寺はパワースポットとしても人気で、全国から多くの参拝者が訪れます。
当駐屯地は開設73周年、第14旅団は創隊17周年を迎え、旅団には司令部はじめ主要部隊が駐屯しており、四国4県の防衛警備などを担っています。
実は兵食がルーツだった!「乃木うどん冷やしぶっかけ」
香川県といえば讃岐うどん! 今回紹介する「乃木うどん冷やしぶっかけ」は、善通寺市内約20店舗でも食べることができるご当地グルメ「乃木うどん」をアレンジしたオリジナルです。
「乃木うどん」とは、1898年に当駐屯地と同じ場所に旧陸軍第11師団が創設された際、初代師団長の乃木希典が、兵士たちの好むうどんに、鶏肉や餅を入れて栄養価を高め、兵食として作らせたのが始まりといわれています。
敷地内には乃木将軍に関する品々が展示されている資料館(通称:乃木館)もあり、一般公開されています。
2009年からは当食堂でもこの「乃木うどん」を提供し、人気メニューとして定着していましたが、20年に「中部方面隊創隊60周年プロジェクト」として「駐屯地名物献立」を作成することになり、「冷たい乃木うどんも食べてみたい」という隊員の声から完成させたのが、今回紹介する冷やしぶっかけというわけです。
ショウガがきいた鶏肉と餅の天ぷらが特徴で、パワーチャージにはもってこい。乃木将軍が試食したら、あまりのおいしさに“言葉ではない”と言うに違いありません?
讃岐うどんのコシと、餅の天ぷらが絶品
「鶏肉としょうゆベースのだしに、アクセントのショウガがマッチして、夏でもあっさり食べやすいうどんです」(曹長/男性・40代)
「讃岐うどんらしい麺のコシがたまりません!加えて餅の天ぷらが絶品で、しっかりおなかも満たしてくれます」(3曹/男性・30代)
「暑いときにも冷たいうどんととろろがスルッと喉を通ります。さらに味の染みた鶏肉で食欲はマシマシに!」(2曹/男性・20代)
隊員の栄養教育にも力を入れています
【陸上自衛隊善通寺駐屯地 業務隊補給科糧食班 栄養管理主任 飯尾美由紀】
入隊は1990年、地元香川県出身です。
「しっかり食べて、自己管理をし、元気に仕事をしてもらいたい」という思いから、栄養教育にも力を入れつつ、毎月の献立をあれこれ工夫しながら考え続けていたら、あっという間に30年以上が過ぎてしまいました。
うちの食堂では、できる限り隊員のリクエストに応じた料理を提供するようにしています。生活習慣病予防、筋力や持久力アップなど、各部隊の希望する栄養についての講義をすることもあるんですよ。
共通しているのは「朝ご飯は必ず食べないとダメ!」ということですね。
「乃木うどん冷やしぶっかけ」のレシピを紹介!
材料(2人前)
うどん(冷凍):2玉(360g)
[うどんつゆ]
しょうゆ:大さじ1と1/2
みりん:大さじ1/2
いりこ顆粒だしの素:小さじ1/2
水:3/4カップ強
[鶏肉のショウガの炒り煮]
鶏モモ肉(一口大に切る):大1/2枚(160g)
しょうゆ:大さじ1
水:大さじ1
酒:大さじ1/2
三温糖(なければ砂糖):大さじ1/2
ショウガ(千切り):1かけ
[餅の天ぷら]
餅(あれば丸小餅):4個(1個30g)
天ぷら粉:大さじ3
水:大さじ1と1/2
揚げ油:適量
[トッピング]
長イモまたはヤマトイモ(すりおろす・冷凍とろろの場合は解凍する)80gとオクラ(さっとゆで、5mm幅に切る)2本を混ぜたもの
温泉卵(市販品):2個
紅白カマボコ(薄切り):4切れ
長ネギ(小口切り):適量
作り方
1:うどんつゆを作る。鍋に水とそのほかの調味料を入れてさっと火にかける。
2:鶏肉のショウガの甘煮を作る。小鍋に全ての材料を入れて火にかけ、ときどき混ぜながら鶏肉に火を通す。1に加えて冷やしておく。
3:餅の天ぷらを作る。小さめのボウルに天ぷら粉と水を入れて混ぜ、少しぽってりとした衣を作り、餅をくぐらせ、180℃に熱した揚げ油で揚げる。餅がふくらんで割れたら、油をきる。油はねに注意。
4:うどんを表示どおりにゆで、冷水でしめる。
5:器に4を盛り、2の鶏肉、3と、トッピングを彩りよくのせ、最後に2のうどんつゆをかける。
※隊員食堂で作られているレシピをもとに編集部で家庭向けにアレンジしました。
注目食材:丸餅
一部例外はあるが、岐阜県関ヶ原のあたりから東側が角餅、西側が丸餅というのが一般的とされる。
香川県では丸餅で、郷土料理の「あん餅雑煮」も有名。讃岐うどんに欠かせないいりこだしの白みそ仕立てに甘いあんこ入り丸餅が入った雑煮だ。
江戸時代の香川県の特産品は「讃岐三白」と呼ばれていた砂糖、塩、綿。砂糖が高級品だったため、正月に餅の中にあんこを隠して食べたのが始まりといわれている。
(MAMOR2023年8月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/山田耕司(扶桑社) 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです