•  一般的に戦闘機は、ほかの航空機に比べて搭載燃料が少なく長時間飛ぶことができない。空に給油所があれば、基地に戻らず給油でき、長時間任務を継続できるわけだ。

     そこで、飛行中に給油しようと登場したのが空中給油・輸送機。さらに輸送機へ空中給油すれば、輸送距離を延ばすことができる。

     航空自衛隊にはKC-767のほか、KC-130H、新型のKC-46Aの3機種の空中給油・輸送機があるが、最近、ウクライナやスーダン関連の報道にも登場し、現在メインで活躍する日本のKC-767について、リポートしよう。

    KC-767はこんな手順で空中給油を行う

     空中給油のシステムには、給油機から数本のホースを垂らして複数機に同時に給油する「プローブアンドドローグ方式」(注1)と、給油機から1つの給油管(ブ―ム)を伸ばして1機に対して短時間に大量に給油する「フライングブーム方式」(注2)とがあるが、KC-767は後者だ。

     輸送機にも同様に給油するが、ここではF-15への給油の流れを見てみよう。

    (注1)同時に複数機への給油が可能だが、時間当たりの給油量は少なく、受油機側に高度な技術が必要とされる。KC-130Hはこの方式

    (注2)同時には1機にしか給油できないが、時間当たりの給油量は多く、受油機側の負担は少ない。KC-767のほか、新型のKC-46Aは両方の方式が可能

    1:両機の位置を調整

    画像: 1:両機の位置を調整

     空中で給油するポイントは事前に決めており、戦闘エリアから離れた安全な空域で行われる。

     戦闘機の場合、編隊で飛行してKC-767の進行方向左側に待機し、1機ずつ給油機(空中給油をする航空機)の後方下の位置に進入。KC-767の給油位置指示灯に従って適切な位置へと移動。

     さらに給油を担当するブームオペレーターからの指示でポジションを調整する。このときの両機の速度はおよそ時速700キロメートル、両機の間は15メートルほど。

    2:給油ブーム(管)の位置を調整

    画像: 2:給油ブーム(管)の位置を調整

     受油機(空中給油を受ける航空機)が正しい位置についたら、KC-767の後方下部から給油ブームが伸びてくる。この給油ブームを操作するブームオペレーターは、機体下部の3次元立体視覚カメラが捉えた受油機の立体映像を見ながら給油ブームの位置を調整する。

     さらに給油ブームは、先端にある黒い羽のような「ラダベータ」と呼ばれる2枚の動翼をジョイスティックで操作することで位置を微調整できる。

    3:給油口に差し入れて給油

    画像: 3:給油口に差し入れて給油

     給油ブームと受油機の位置が決まると、給油ブームの先端から「テレスコーピングチューブ」と呼ばれるノズルを伸ばし、受油機が操作して開けた給油口(F-15の場合は左翼)に差し込む。同時に給油ブームの先端はロックされ、給油が開始される。

     給油が終わると給油ブームを外し、受油機はKC-767の右側に退き、左側に待機していた新たな受油機が進入して、次なる給油作業が始まる。1機あたりにかかる作業所要時間はわずか5分ほどで、訓練の場合は1回に4、5機に対して順番に給油が行われる。

    (MAMOR2023年8月号)

    〈文/古里学 写真提供/防衛省〉

    戦闘機に給油できるKC-767

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