• 画像: 掃海艇『ちちじま』に搭載されるゴムボート、通称「ベイビー」に取材班は乗り込み、陸奥湾機雷戦訓練を追った

    掃海艇『ちちじま』に搭載されるゴムボート、通称「ベイビー」に取材班は乗り込み、陸奥湾機雷戦訓練を追った

     海に囲まれた日本が他国からの侵略を阻止するために必要不可欠となるのが海上自衛隊の掃海部隊だ。海の爆弾である機雷を、海中や洋上から除去する掃海。また、逆に敵の侵入を防ぐ機雷を敷設するのも掃海部隊の任務である。

     国連に加盟している大国が、世界の安全保障環境に対し、力による一方的な現状変更を行おうとしている今日。わが国にとって掃海任務の重要性はますます増すばかり。掃海部隊は、いかに危機に備えているのだろうか?

    海中に潜む機雷との戦い、掃海部隊の役割とは?

     2022年3月、黒海に機雷が発見されウクライナの艦船が航行できないという報道があった。機雷はその国の軍艦の出撃も、流通も止める兵器だ。島国である日本の航路に機雷を仕掛けられれば、国民生活はマヒする。

     海の爆発物、機雷にはさまざまな種類がある。たとえ海中で古い機雷の発火機構が朽ちても、爆薬は腐食せず「死なない兵器」なのだ。いまだ海底には第2次世界大戦時の機雷が生きている。

     機雷を処分する方法には「掃海」と「掃討」がある。艦船が発する音や磁気、水圧などに反応する感応機雷に対し、艦船を模擬して(機雷をだまして)自爆させるのが「掃海」。一方、探知機で機雷をみつけ、水中無人機などで処分する方法が「掃討」である。また、掃海ヘリコプターによる空からの機雷処分も行われている。日本は艦艇と航空機の2段構えで、海の安全を守っている。

     日進月歩の高性能機雷、その処分には最新の装備が必要だ。しかも死なない兵器だけに、旧型の処分法も常に維持しておかなければいけない。このような厄介な兵器、機雷に毅然と立ち向かうのが掃海部隊なのだ。

    機雷の種類と「掃討」と「掃海」の違いを解説

    海の爆発物、機雷にはさまざまな種類がある

    画像: 海の爆発物、機雷にはさまざまな種類がある

    (A)浮遊機雷と、海底に沈めたアンカーとワイヤーでつながっている(B)係維触発機雷は、艦船と接触することにより爆発する。(C)沈底感応機雷は目標に直接接触せずに、艦船の航行により発する音や磁気、水圧を感知して作動し、浮遊機雷よりも広範囲にダメージを与える。

     そのほか、機雷自らが目標に接近し魚雷のように追尾する(D)上昇機雷や、機雷探知機の音波をそらすステルス性の機雷、掃海具が出す磁気信号にだまされない高知能機雷もある。

    掃討:機雷探知機と機雷処分具で機雷を個別に処分

    画像: 掃討:機雷探知機と機雷処分具で機雷を個別に処分

    (1)機雷探知機(ソナー)や(2)海底無人探査機で発見した機雷に、(3)機雷処分具(水中航走体)を誘導し、爆破処分する。

     機雷処分具が行けない複雑な海底地形の場合は、機雷のある場所まで泳いで行き、機雷を処分する水中処分員が対処することもある。

    感応掃海:艦船が通ったと欺まんして機雷を自爆させる方法

    画像: 感応掃海:艦船が通ったと欺まんして機雷を自爆させる方法

     艦船が発する音や磁気、水圧に反応して爆発する機雷(感応機雷)に対し、艦船を模擬した磁気や音響シグナルを出す掃海具により、あたかも艦船が通ったと欺まんして機雷を自爆させるのが感応掃海。

    係維掃海:海底からワイヤーにつながれて浮遊する機雷の処分方法

    画像: 係維掃海:海底からワイヤーにつながれて浮遊する機雷の処分方法

     トロール漁業と同じ方法で掃海艦艇の船尾からカッターを取り付けた掃海具をえい航し、機雷(係維機雷)をつなぐワイヤーを切断する。海面に浮き上がってきた機雷を、機関砲で射撃し処分する。図の白いフロートは水中に吊り下げた展開器などの位置を示す浮き。

    (MAMOR2022年11月号)

    <文/鈴木千春(株式会社ぷれす) 撮影/村上淳 イラスト/永井淳雄>

    今、日本の防衛に必要なのは機雷戦訓練だ!

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