戦場、被災地での作戦行動中、または訓練中に取るために配給される食糧のことを「戦闘糧食」と呼びます。英語では、combat rationといい、日本では略してレーション、また、最近は“ミリメシ”と呼ばれることが多いようです。
軍隊のレーションの味について、それぞれの国の兵士は自分たちのレーションにどのような印象を持っているのだろうか? 各国のレーションを食べる際、分けてもらうように交渉を行ったり、どのように食べるのかを取材するなど、現地の兵士と多くのコミュニケーションを重ねた『軍事研究』編集者の大久保氏に伺った。
フランス軍のレーションは格別?
大久保義信氏は1993年、ユーゴスラビア紛争についての取材中、国連保護軍に参加していたフランス軍の戦闘糧食を試食し、カルチャーショックを受けたという。「それまではミリタリーショップで売っているアメリカ軍放出品のレーションしか食べたことがなくて。それに比べてフランス軍のレーションはとてもおいしかったんです」。
以後、各国軍の戦闘糧食を食べ比べるようになったという大久保氏。現地で「レーションを分けてほしい」というと、ほとんどの軍隊の兵士から不思議がられたという。
「なんでこんなマズいものを?という反応でした。どの国の軍隊の人もたいていはそう思ってるんですよね。なかには、『そんなに腹がへってるなら俺が駐屯地の食堂でおごってやるよ』という人もいたりして」
ただし、フランス軍人の反応は違っていたという。
「プライドの高いフランス人だけに、自国のレーションにも誇りを持っているんです。そして、たしかにうまい」
自衛隊の戦闘糧食の評価は?
各国のレーションは、温めたりお湯で粉末を溶かしたりして食べることが基本となっているが、レーションの温め方も国によってそれぞれ。現在では、化学剤を使用した加熱が主流になりつつあるが、イタリア軍やスペイン軍、ロシア軍のレーションには、組み立て式の小さなストーブが入っていたという。
そうして各国のレーションを食べてきた大久保氏だが、では、自衛隊の戦闘糧食の評価は?
「各国軍と比べても、自衛隊のレーションは昔からおいしかったです。カンボジアPKOに参加した各国軍が、余興としてレーションのコンテストを開催したとき、自衛隊が優勝した、という話も伝わっています。詳細は不明ですが、この味ならさもありなん、ですね」
【大久保義信】
1963年生まれ。茨城県出身。軍事アナリスト、月刊『軍事研究』(ジャパン・ミリタリー・レビュー)編集部所属。著書に『戦闘糧食の三ツ星をさがせ!』(潮書房光人新社)など
<文/魚本拓 写真提供/大久保義信>
(MAMOR2022年11月号)