•  自衛官候補生として過ごす約3カ月間の前期教育を終え、これから各部隊に配属され新隊員特技課程に臨むリアルの新米自衛官たちが集結。訓練中の苦労や休日の過ごし方まで語り合ってもらった。新入り陸上自衛官の“ホンネ全開”トークをどうぞ。

    画像: 自衛官候補生教育を終えた練馬駐屯地にて、記念撮影。この数日後には、それぞれの後期教育の場となる任地へ向かっていった

    自衛官候補生教育を終えた練馬駐屯地にて、記念撮影。この数日後には、それぞれの後期教育の場となる任地へ向かっていった

    写真右から
    【勝間田叶伍(19歳)】
    埼玉県出身。通信科・北部方面システム通信群(注1)配属。専門学校で公務員を目指す中で「人の役に立ちたい」と自衛官を志望。自衛官の親戚がいる

    【藤田拓己(25歳)】
    東京都出身。野戦特科・第1空挺団特科大隊(注2)配属。小学2年生からずっとなりたかった自衛官になる夢をかなえた。参加者で唯一の「彼女持ち」

    【枝村凌太(29歳)】
    東京都出身。機甲科・第3即応機動連隊(注3)配属。過去に6年間陸上自衛官を経験し民間企業に転職した。「2度目の自衛官に本気で取り組みたい」

    【藤岡誠(25歳)】
    大阪府出身。警務科・第302保安警務中隊(注4)配属。やりがいのある仕事を探している中で、国を守る大きな使命を果たしたいと自衛官を志望

    【鐙谷滉太(18歳)】
    東京都出身。普通科・第1普通科連隊(注5)配属。陸上自衛官である父親の影響で、自衛官を目指した。父も勤務した練馬駐屯地でデビューを迎える

    (注1)北海道札幌市の札幌駐屯地に所在する、無線・有線などの通信を担当する部隊

    (注2)千葉県船橋市の習志野駐屯地に所在する日本で唯一の落下傘部隊である第1空挺団隷下の、火砲を備えた戦闘部隊

    (注3)北海道名寄市の名寄駐屯地に所在する、機動戦闘車や装甲車などを備えた部隊

    (注4)防衛省がある東京都新宿区の市ケ谷駐屯地に所在する、駐屯地内の警備や防衛省を訪問する国賓に対する儀礼(儀じょう)などを行う部隊

    (注5)東京都練馬区の練馬駐屯地に所在する、首都防衛などを任務とした部隊

    訓練や集団生活のつらさはこうやって乗り越えた!

    画像: 候補生の多くが大変と話す約3.5キログラムの小銃を保持して走る「ハイポート」。小銃の重さが時間とともに疲労に拍車をかける

    候補生の多くが大変と話す約3.5キログラムの小銃を保持して走る「ハイポート」。小銃の重さが時間とともに疲労に拍車をかける

    ——3カ月の自衛官候補生教育、お疲れさまでした。集団生活や訓練で大変なこともあったと思いますが、どのように乗り越えましたか?

    鐙谷:自分が苦しいときはみんなも一緒だと考えて、周りの人の顔を見回して頑張りました。

    藤岡:どうせつらいなら、楽しくやろうと考えました。声出しを積極的にするなど気分を盛り上げるようにしました。教官にもそのようにアドバイスされましたから。

    枝村:私は同じ教育課程を1度受けていますので、置いてきた青春の延長という感じで楽しんでいました。2度目の自衛官生活ですし、つらいことはなかったですね。

    藤田:私は第1空挺団に行くことが目標だったので、自衛官候補生教育でへこたれてはいられないなと思っていました。ただ、入隊前は大学生としてのびのび過ごしていたので、いきなりの集団生活、プライバシーもほとんどない私生活に慣れるのは大変でしたね。入隊して最初の2週間は精神的に特にきつかったです。

    勝間田:体力がないほうだったので、最初はほふく前進の訓練で筋肉痛になりました。周りに体力の付け方を聞いたり、教官から腕立てのコツや持久走の呼吸法を教わりながら、自分なりに工夫して頑張りました。

    ——どの訓練が1番大変でしたか?

    枝村:全部大変でしたね(笑)。私は29歳で周りより年齢が上なので、10代の体力がある同期がうらやましいと思うこともありました。同世代の同期が何人かいたのですが、お互いに励ましあったりしました。

    勝間田:戦闘訓練です。前傾でダッシュをしたり、 ほふく前進の姿勢をキープするのが大変でした。ほふく前進も、膝立ちの姿勢から腹ばいにうつ伏せになった状態まで5種類あることを知らなくて。教官はすごい速さで進むのに、自分はなかなか上手にできず、翌日の筋肉痛もひどかったです。日常生活ではしない動きですし、小銃の銃口も地面に当ててしまったりして余計な力が入ってしまったのかも。

    藤岡:私も同じです。大雨が降ったあとの戦闘訓練で水たまりに飛び込んでほふく前進したときは全身がびしょ濡れになりました。

    鐙谷:水たまりに最初に飛び込むとき、なかなか勇気が出ないんですよね。私は25キロメートルの行進訓練です。荷物は重いし足も痛くなる。訓練なので周囲も警戒しなくてはいけません。体力だけでなく精神力も大切だと学びました。

    藤田:あとはハイポート(小銃を保持して走る訓練)! 小銃は重いし、教官はなかなか終了の号令をかけてくれませんし、「一体いつ終わるんだ……」と。つらかった。

    —— 一同うなずく。

    貴重なプライベート時間。課業後&休日の過ごし方

    画像1: 写真はイメージです

    写真はイメージです

    ——皆さん、集団生活の中での貴重な息抜きは何をしていたのでしょう。

    鐙谷:課業後はアイロン掛け、靴磨き、ひまがあれば体力錬成ですね。「一緒に筋トレしよう」と教官から声を掛けられて、同じ班の仲間とやっていました。

    「自由時間なのに何で筋トレ?」と初めは思いましたが、トレーニングが段々楽しくなりました。休日も、自衛官候補生教育期間は駐屯地周辺しか出掛けられなかったので、駅周辺のショッピングモールに行きました。みんな同じ考えなのか、周りは候補生だらけ(笑)。

    藤岡:休日は仲間と食事に行くくらい。課業後は翌日の準備が忙しく、終わったらスマホでEメールや電話。周りも自由に過ごしていました。

    枝村:教育期間中は喫煙禁止ですが、自由時間に1回だけ許された喫煙が楽しみでした。あとは同じくアイロンに靴磨き、筋トレです。休日はカフェ巡りや食事が楽しみで、スマホでお店を調べてました。余力があれば婚活もしたかったのですが……そんな余裕もなく。

    藤田:外食は楽しみでしたね。休日なのでゆっくり食事をしてよいのですが、教育隊で素早く食事をする習慣がついてしまって「何でこんなに早く食べちゃったんだろう」と思うことも(笑)。

     あとは彼女に駐屯地の近くまで来てもらって、デートしました。課業後も、次の日の準備や筋トレ以外は、彼女と連絡を取り合ってます。

    枝村:うらやましい(笑)。

    勝間田:自由時間は親や友達と電話します。休日は近くのショッピングモールで映画を見たり、仲間と食事をしたりしていました。

    期待と不安が半分半分。次のステージへの決意は

    画像2: 写真はイメージです

    写真はイメージです

    ——3カ月の自衛官候補生教育で自分なりにどんな成長ができましたか? そして新隊員特技課程の配属も決まりましたね。今の素直な感想を聞かせてください。

    勝間田:成長したのは、全てにおいて行動が早くなったこと。そして体力が付きました。今後は初めてのことだらけなので、正直不安が大きいです。もちろん、将来専門とする職種のことが学べる楽しみもあります。

    藤田:自分の目指していた部隊に行けるので、とても楽しみです。ただ、第1空挺団は厳しいところと聞いていますので、体力で不安もあります。自衛官候補生教育課程では、大学生時代のルーズな自分から時間にキッチリできる自分に成長できたと思います。

    枝村:つらい中でも気力・体力を維持し、周りを励ますことができたのは自分なりに成長できました。2度目の自衛官ですから、今度は辞めずに「永年勤続」(注6)を目指したいです。次は都会から離れた場所での勤務なので、結婚できるか心配です(笑)。

    (注6)自衛官を含む防衛省職員は、勤続25年以上かつ勤務成績の良好な職員を「永年勤続者」として表彰する制度がある

    ——ぜひ「マモルの婚活(防衛省・自衛隊の広報誌『MAMOR』に掲載している自衛隊員の婚活コーナー)」にご応募を(笑)。藤岡さんは次の任地は市ヶ谷駐屯地ですね。

    藤岡:所属部隊は市ヶ谷駐屯地ですが、新隊員特技課程は引き続き練馬でやります。なのでここに残ります。一緒に過ごし、つらい訓練を乗り越えた仲間が全国各地に散っていくのは、やはり寂しいですね。

    鐙谷:体力、精神面ともに成長できたと思います。私も練馬駐屯地の配属です。新隊員特技課程ではメンバーがまた変わるので、人間関係がうまくできるか、少し不安もあります。

    ——最後に、目指す自衛官像を教えてください。

    勝間田:迅速に行動でき、国民に信頼され、感謝される自衛官です。目標は未来の幕僚長です、というのは冗談ですが、上を目指したいです。

    藤田:階級という意味ではなく、知識や技術をたくさん身に付け、「上のレベル」を目指したいです。

    藤岡:仲間のために動ける自衛官になりたいです。

    鐙谷:教育隊の教官のような、ハートの強い自衛官を目指しています。

    枝村:仲間を見捨てない自衛官です。起きないほうがいいのですが、万が一の有事の際は現場で役に立てるよう頑張りたいです。

    (MAMOR2022年10月号)

    <文/臼井総理 撮影/村上淳>

    これが新入り陸上自衛官のリアル・ドラマだ!

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