日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。
今月は山口県防府北基地の「鶏肉の山賊焼き」を紹介します。ご当地グルメとして有名な料理をアレンジしたもの。たれをしっかり染み込ませてじっくりこんがり焼き上げます。
パイロットを志す者が集う、防府北基地
航空自衛隊防府北基地は、南は瀬戸内海、北は中国山地に挟まれた山口県防府市の南西部にあり、敷地面積は約254万平方メートル(東京ドーム約55個分)という広大さです。周辺には日本三大天神の1つといわれる防府天満宮や、国指定名勝の毛利氏庭園などがあります。
当基地は空自のパイロットを志す者が最初に足を踏み入れる場所で、1955年より飛行訓練が行われてきました。現在は第12飛行教育団が地上学習やT−7初等練習機による飛行訓練、シミュレーターを使った訓練などを行っています。そのほかに当基地には、防府管制隊、防府気象隊などが所在。また、62年には敷地内に陸上自衛隊防府分屯地が併設され、防衛・警備、災害派遣などの多様な任務にあたっています。
「長州どり」を使った鶏肉の山賊焼き
将来の戦闘機、輸送機、救難機などのパイロットになることを目標に、日々訓練に励む隊員が楽しみにしている料理が「鶏肉の山賊焼き」です。隊員食堂では、山口県長門市近郊で養鶏されているブランド鶏肉の「長州どり」を使用。おろしニンニクの入ったたれに、体を温め、免疫力アップにもつながるハチミツとショウガ汁を加えるのがポイントです。
「長州どり」は平飼い(地面に放して飼う養鶏法)のため適度に運動ができるので肉質に弾力があり、ハーブ入りの飼料により風味も良くビタミンも豊富なのだとか。有名店と同じく串に刺して出したいところですが、大量調理では手間がかかるため、切らずにフォーク&ナイフを添えて提供しているそうです。
「間違いなく隊員の活力になる!」
「鶏肉がとても柔らかく、かめばかむほど口の中にうまみが広がります。このおいしさは間違いなく隊員の活力になります!」(1士/男性・10代)
「山賊焼きの注目すべき点は、鶏モモ肉の柔らかさと、パリッと焼き上げられた皮です。どこを食べてもおいしい逸品です」(士長/男性・20代)
「ほのかに残るニンニクの香りと、しっかりとした味付けが、鶏肉のおいしさを一層高めていて、箸が止まりません!」(3尉/男性・20代)
若い隊員向けにバラエティー豊かな献立を
【航空自衛隊防府北基地 第12飛行教育団基地業務群業務隊 給養小隊 栄養士 政崎敦美】
当基地を発着する飛行機を見ながら育った地元っ子です。保育園で栄養士兼調理師として20年勤めた後、入隊して約10年。400〜500人分の献立作成をするのが私の主な業務です。利用者の半数以上が20代の隊員たちなので、同世代の4人の娘たちに試作がてら作った料理を食べてもらい、好評だったときは、献立に取り入れることもあるんですよ(笑)。
隊員のパフォーマンスを引き上げるために、スポーツ栄養学の本を読んだりしながら、食事に興味をもってもらえるようバラエティーに富んだ献立をと、頭を悩ませています。
鶏肉の山賊焼きのレシピを紹介!
<材料>(2人分)
鶏モモ肉:小2枚
サラダ油:大さじ1/2
【たれ(下味用+仕上げ用)】
酒:大さじ3
しょうゆ、みりん:各大さじ2
めんつゆの素(2倍濃縮):大さじ1+1/2
ハチミツ:小さじ2
おろしニンニク、ショウガ汁:各小さじ1
【付け合わせ】
リーフレタス(ちぎる):適量
カボチャ(ひと口大の乱切りにし、ゆでる):適量
カリフラワー(小房に分けてゆでる):適量
<作り方>
1:鶏肉は、ところどころにフォークで穴をあけ、たれを染み込みやすくする。
2:ボウルにたれの材料を入れて混ぜる。そのうちの大さじ3を仕上げ用として別の容器に移す。
3:(2)の残りの下味用のたれに(1)の鶏肉を入れてもみ込み、15〜30分漬ける。
4:フライパンにサラダ油と、軽く汁気をきった(3)を皮目を下にして入れ、中火にかけて4〜5分焼く。カリッとした焦げ目がついたらひっくり返す。中火弱でさらに5分ほど、途中でときどき肉を漬け込んだ下味用のたれをかけながら、じっくりこんがり焼き上げる。
5:皿に(4)をのせ、(2)で残しておいたたれを適量かけ、付け合わせを彩りよく盛る。
注目料理:山賊焼き
山口県のソウルフードとしてメディアでも紹介されている鶏肉料理。中でも元祖を名乗る岩国市のレストラン「いろり山賊」の「山賊焼」は豪快。骨付きの鷄モモ肉を1本丸ごと秘伝のたれに漬けて、太い串に刺し、炭火であぶり焼きにして提供される。
山賊焼きは信州の郷土料理としても知られるが、そちらは焼かずに油で揚げる。最近は焼いた鶏肉、揚げた鶏肉にからめる市販の「山賊焼のたれ」もある。
(MAMOR2022年9月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/山田耕司(扶桑社) 写真提供/防衛省>