日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。
今回は三重県明野駐屯地の「松阪牛すじカレー」を紹介します。世界的にも有名な地元のブランド牛のすじ肉を使用したコク、まろやかさ、甘さを感じるスペシャルカレーです。
陸自パイロットのふるさと、明野駐屯地
陸上自衛隊明野駐屯地は“日本人の心の故郷”ともいわれるパワースポット、伊勢神宮の北西約10キロメートルに位置し、名所や旧跡に囲まれた風光明媚な場所にあります。旧陸軍の飛行学校が、1955年に陸自の航空学校となりました。主に航空科職種の幹部隊員に対し、部隊運用や操縦の教育などが行われています。長い歴史の中で多くのパイロットが巣立ち、国内や海外で重要な任務にあたり活躍しており、陸自パイロットの“心の故郷”ともいえる場所です。
当駐屯地には航空学校のほかに、飛行実験隊、第5対戦車ヘリコプター隊、第10飛行隊などが所在。新多用途ヘリコプターUH−2も全国に先駆けて装備され、注目を集めています。また、三重県唯一の飛行場を有する駐屯地として、大規模災害時の拠点としても重要な役割を担っています。さらに敷地内には、大正時代にフランス人の設計で建てられた航空記念館もあります。旧陸軍飛行学校当時のものが展示され、見学が可能な場合もあります。
松坂牛を使った贅沢カレー
当駐屯地の隊員食堂で提供される「松阪牛すじカレー」は2015年に栄養士を中心に、駐屯地の名物メニューを、と開発されたそうで、地元のブランド牛として有名な松阪牛のすじ肉が入っています。
そのとろとろの食感がたまらないと幅広い年代の隊員に大好評なのだとか。家庭で作る場合、すじ肉はゆで過ぎると溶けてしまうので要注意。また、カレールウは2種類を混ぜて使うとコクが出て味に深みが加わるそうです。
隊員食堂でブランド牛が食べれるなんて…
「ソースも野菜もとてもおいしい。特に松阪牛すじ肉は柔らかくてサイコー! これを食べるとさらに訓練を頑張れます」(3曹/女性・30代)
「カレーはもともと好きですが、明野駐屯地の「松阪牛すじカレー」は特に好きです。お肉も柔らかくて、辛さもベスト!」(3佐/男性・40代)
「松阪牛すじ肉の脂のうまみがルウに溶け込み、コクが増して絶品! 隊員食堂でブランド牛が食べられるなんて感謝です」(1尉/男性・50代)
ベテラン栄養士がつくる絶品カレー
【陸上自衛隊明野駐屯地 総務部管理課給食班 栄養士 坂本真弓】
栄養摂取基準を満たした上で、おいしい献立を考えるのは大変ですが、毎日違う、新しい発見があるのであっという間だった気がします。
昼食の利用者は500人前後。全員の細かい要望に応えるのは難しいのですが、できる限り、手作りメニューを多くし、旬の食材、地元の食材を活用しながら、行事食、日本全国の郷土料理、B級グルメなどを取り入れ、バラエティー豊かな食事を心掛けています。
松阪牛すじカレーのレシピを紹介!
<材料>
ご飯(米:もち麦を8:2の割合で炊いたもの):丼4杯分
牛すじ肉:200g
【A】
タマネギ(薄切り):中1個
おろしニンニク、おろしショウガ:各小さじ1
ジャガイモ(ひと口大に切る):2個
ニンジン(いちょう切り):小1本
カレールウ(2種):計100g
【B】
カレー粉:小さじ1
ウスターソース:大さじ1
ガーリックパウダー:少々
サラダ油:大さじ1
<つくり方>
1:牛すじ肉はさっと洗い、鍋に入れ、たっぷりの水を加えて中火にかける。沸騰して1分ほど加熱し、アクが出たら、ゆでた湯ごとザルに上げる。水で洗い、4㎝くらいの食べやすい大きさに切る。再び鍋に戻し、たっぷりの水を入れて中火にかけ、沸騰したら弱火にし、1時間半〜2時間ほどゆでる。途中、様子を見て水を足す。柔らかくなったらザルに上げ、湯をきる。
2:鍋にサラダ油とⒶを入れ、焦がさないように中火弱でよく炒める。
3:②にジャガイモ、ニンジンと①を入れ、3分ほど炒め合わせて水4〜5カップ(分量外)を加え、中火にかけ、沸騰したらアクを取る。中火弱にし、ニンジンが柔らかくなるまで20分ほど煮込む。
4:③にカレールウとⒷを入れて溶かし、しばらく煮込む。
5:皿にご飯を盛り、④をかける。
注目食材:松阪牛
松阪牛は、三重県松阪市とその近郊で肥育された高級牛肉で、「肉の芸術品」の異名を持つ。部位の中ではすじ肉(牛のアキレス腱部分、またはスネなど腱の付いた肉)は比較的安価なため、隊員食堂でも取り入れられている。
独特の臭みがあり硬い肉質だが、下処理(作り方①)をすることで柔らかくなる。プルプルとした部分は脂ではなくコラーゲン。骨粗しょう症予防に効果が期待できるというビタミンKも含まれる。
(MAMOR2022年8月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/山田耕司(扶桑社) 写真提供/防衛省>