地震、台風、河川の氾濫など、毎年のように起きる自然災害。加えて年々緊張が高まる世界の安全保障環境。さらに街中で起きるテロや暴力行為など、私たちの平穏な日常に不安の影を落とす事態が頻発している。大災害や有事が発生した際に、自衛隊、消防、警察、医療などの「公助」がすぐに対応できるとは限らない。
日常生活で自衛官が減災のために行っている習慣とは
救助活動における発災後72時間は生死を分けるタイムリミットといわれている。その間を生き延びるためには、私たちはどうすればよいのか。
被災地や避難場所を実際に見てきた経験から、毎日の生活の中で、自衛官自身が実践している減災のための習慣や行動、工夫を聞いてみた。
自身の行動の心掛けや防災アイテムの準備、家族との情報共有など内容はさまざまだが、すぐに取り入れられる知恵が多いので、環境に応じてまねをしてみるのもよいだろう。日ごろから行っていることが、そのまま減災につながれば、いざというときにも慌てずに済む。
入浴後、お風呂の水はながさない?
自動車の燃料タンクは常に半分以上入っている状態にする
突然やってくる災害に備え、常に自動車の給油を心掛ける。エンジンがかかれば、スマホの充電やエアコンで暖をとるなどの一時しのぎにも使える。
通勤用カバンやマイカーなどに常に手袋を携行
避難の際、割れたガラスなどの危険物に触れてけがをしたり、熱いものに触れてやけどをしたりするのを防ぐため。
カーテンを閉めて就寝し、ベッドの近くに靴を置いておく
寝室のベッドは、もしもの地震に備え、ガラスが割れる可能性のある窓側に頭を向けない。さらに寝るときは、割れた窓ガラスが飛散するのを防ぐためにカーテンは閉める。また、避難の際、割れたガラスやがれきなどを踏んでけがをしないよう、履く靴をベッドサイドに用意しておく。
普段はコンタクトレンズ使用だが、常に眼鏡も携行
災害時、コンタクトレンズを落としてしまっても見えるように。また、コンタクトレンズの予備を多めに自動車に積んでいる。
自分の子どもに、発災時の行動や避難場所などを定期的に教育している
子どもが1人でいるときに災害が発生した場合でも、どんな場所や行動が危険で、どう回避すればよいのかが分かるように教えている。また、避難場所はどこで、どのように向かえばいいのかを、実際に外に出て一緒にルートを確認しながら教えている。
モバイルバッテリーは常に充電完了状態に
突然の災害発生で、いざ取り出したバッテリーが空ということがないように。また、スマホは常に充電しておく。
入浴後の風呂の水をため、清掃時に水を入れ替えている
断水になった場合にも、しばらくはトイレの流し水などに活用できるため。また、アウトドア用の浄水器があれば飲用にもなる。
毎日の心がけが、減災につながる
避難時の集合場所を家族で共有している
家族がバラバラの場所で災害に遭っても、あらかじめ決めた集合場所に向かえば落ち合えるため。また、家族の1日の行動を前日に確認しあって把握しておく。
自宅の廊下に物を置かない。常夜灯を設置する
夜間の避難経路確保のために、廊下や部屋の出入り口付近に物を置かない。
普段からエレベーターを使わない
災害発生時にエレベーター内に閉じ込められないようにするため。
緊急時の連絡先をメモ帳に記している
電話帳や住所録は、全てスマホに入っているとバッテリーが切れたら見られないため、念のために、緊急時に必要となる連絡先は、紙に書いて身に着けている。
スマホは常に携行する。入浴時も浴室の入り口に置いておく
災害時の大事な情報入手ツールとなるので、すぐに手に取れるようにしている。
家族でキャンプに出掛け、外での炊事やテント泊を体験しておく
避難生活で不便な状況に陥っても、キャンプで屋外で食事を作ったり、たき火で暖をとったり、寝袋で寝たりするなどの体験をしておけば、慌てずに対応できる。
家中のカギ(玄関、車、勝手口など)を集約し、常に同じ場所に保管
いざ避難のときに慌てて探すと見つからないこともあるので、探さずにすぐ手に取れるようにしておく。
寝るときは、携帯電話の着信音を最大限に設定し、枕の下へ
災害を知らせるアラームが、耳元で大音量で鳴ることで目が覚めやすくなる。また、枕の下に置いておけば、暗闇でもスマホを探すことなくすぐ手に取れる。
日ごろから小銭は多めに持っておく
停電になるとクレジットカードや電子マネーが使えなくなることもあり、経験上、小銭(現金)を持っていると便利。
トイレはがまんせずに行けるときに行く
前触れなく突然、災害が発生して、室内やエレベーターに閉じ込められたり、早急に避難する必要がある場合などには、すぐにトイレに行けないこともあるので、がまんせず行けるときに行っておく。同様に、食べられるときに食事をしておく。
(MAMOR2022年9月号)
<取材・文/MAMOR編集部>