陸上自衛隊が実践する野営は、行軍の中間地点において戦闘部隊が天幕を展開する以外の方法もある。任務内容や野営をする地域の状況に合わせて、さまざまな宿営のかたちがあるのだ。ここではそのいくつかを紹介しよう。
演習場に併設されたしょう舎に宿泊
陸上自衛隊の演習場には訓練中の隊員が寝泊まりするためのエリアに簡易宿泊施設がある。しょう舎と呼ばれるその施設は、雨風をしのげるくらいの簡素な造りの小屋で、なかにはかなりの年季が入っているものもある。
マットレスが備え付けられたしょう舎では、隊員たちはその上に寝袋を広げたり、シーツを敷いたりするなど、各自で工夫して眠り、厳しい訓練で疲れた体を休める。
寒冷地では雪洞を掘りその中で夜を明かす
陸自の偵察部隊などが冬季に降雪地で訓練を行う場合、隊員たちはエンピ(スコップ)で雪洞を掘り、その中で眠ることもある。
雪洞は休息の場所としてだけでなく、目立たないように身を隠す偵察拠点としても活用される。雪洞内では、風をしのげて、外よりは暖かいとはいえ、極寒であることに変わりはない。それでも、寝て体を休め、次の活動に備えることも自衛官の仕事なのだ。
災害派遣では、現地の宿営地や車中で寝泊まり
災害派遣では被災者の避難が優先されるため、自衛官は当然、避難所で休むことはできない。また、災害は突発的に起きるので、派遣当初は野営の計画が立てられないため、隊員は災害派遣先では車中泊をすることもある。
長期間の野営は複数の天幕を設置した大所帯で
陸自の部隊によっては、長期にわたる野営を実施することがある。その場合、演習場や駐屯地内に複数の宿営用天幕を設営し、隊員たちが宿泊する。指揮所として使用される本部のほか、隊員らが生活するための天幕が張られる。
(MAMOR2022年5月号)
<文/魚本拓>