日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。今回は沖縄県宮古島駐屯地の「宮古そば」を紹介します。豚骨スープと和風だしを合わせたスープは、あっさりとコクのある味わいです。甘辛い豚バラ肉をのせてボリュームアップ。
宮古島の中心に新設。宮古島駐屯地
沖縄本島から南西へ約300キロメートル、大小8つの島からなる宮古列島の中で最も大きいのが宮古島。サンゴ礁の隆起によってできた平坦な島は、“宮古ブルー”と呼ばれる海の青さと、美しいあかね色の夕暮れ時が人気のビーチリゾートとして有名です。
そのほぼ中央にある陸上自衛隊宮古島駐屯地は、南西諸島海域における離島防衛強化の一環で2019年3月に新設されました。陸自の中でも新しい駐屯地の1つです。当初は宮古列島の防衛警備および災害派遣などを任務とする宮古警備隊約360人で発足。翌年には第7高射特科群、第302地対艦ミサイル中隊のミサイル部隊などが加わり、約700人体制となりました。
今回紹介するメニューは宮古島の伝統的な郷土料理「宮古そば」。たくさんの豚骨をショウガとじっくり煮て作る、本物の豚骨スープをベースにカツオと昆布の和風だしを加えたあっさり味のスープは麺との相性も抜群です(掲載レシピは作りやすいよう顆粒スープの素を使用)。具は豚バラ肉の煮付けやカマボコ。いつもは具を麺の上にのせていたのを、サプライズで伝統的な盛り付け(記事後半にて紹介)にして提供したところ「具がない! 具が消えた!」と隊員たちが本当に驚いてしまったとか。
食べる際に、好みで沖縄特産品として名高いコーレグスー(島唐辛子の泡盛漬け)や七味唐辛子を振って辛みを足してもおいしいのだそう。また、沖縄風炊き込みご飯“ジューシー”と一緒に提供されることが多いそうです。
カツオだしの風味が麺にベストマッチ!
「観光地でも有名な宮古島。数ある飲食店でも宮古そばを食べ比べましたが、隊員食堂の宮古そばが一番おいしいです!」(士長/男性・20代)
「カツオだしの風味が麺にベストマッチ!ご当地グルメのトップに挙がる宮古そばが出る日は、朝から楽しみでなりません」(3曹/女性・20代)
「沖縄そばとは少し違う味で、麺に歯応えもあり、とてもおいしいです。あっさりスープに濃い味の豚の煮付けも相性抜群!」(2曹/男性・30代)
地産地消で宮古島の食文化を伝える
【陸上自衛隊宮古島駐屯地 宮古警備隊後方支援隊糧食班 栄養担当官 与那城幸奈】
入隊して6年、当駐屯地が新設されたと同時に赴任したので今年で4年目に突入します。昼食で400人弱の大量調理、また離島の特性上、夏は台風の影響、冬でもしけで海が荒れると船便が欠航するため食材が調達できず、食事内容の変更を余儀なくされることも多くて大変ですが、栄養価や満足度に影響が出ないよう、臨機応変な対応を心掛けています。
宮古島の食文化に慣れ親しんでもらえればと地産地消に努め、さらに九州や沖縄以外の出身者のためにも全国のご当地メニューが楽しめる献立を定期的に提供しています。
宮古そばのレシピを紹介!
<材料(2人分)>
沖縄そば(ゆで・あれば宮古そば):400g
[豚バラ肉の煮付け]
豚バラ肉(塊・2〜3㎝幅に切る):200g
砂糖:大さじ2
しょうゆ:大さじ11/2
酒:大さじ1
ショウガ(皮付きのままスライス):1かけ(10g)
[スープ]
<A>
水:3カップ
白湯豚骨顆粒スープの素:大さじ1
ショウガ(皮付きのまま厚くスライス):2かけ(20g)
<B>
水:2カップ
だし昆布(約5×5㎝):1枚
カツオ節(3g入り):1パック
<C>
和風顆粒だしの素:小さじ2/3
薄口しょうゆ:大さじ1(なければしょうゆ 小さじ1)
塩:少々
[トッピング]
カマボコ(食べやすく切る)、万能ネギ(小口切り)、紅ショウガ:各適量
<作り方>
1:豚バラ肉の煮付けを作る。豚バラ肉はゆでこぼす(水からゆで、沸騰したらザルに上げ、湯を捨てる)。鍋に調味料を入れて弱火にかけ、砂糖が溶けたら、下ゆでした豚バラ肉とショウガを加え、中火弱で煮汁がなくなるくらいまで煮からめる。
2:スープを作る。鍋にⒶを入れ、アクを取りながら10分ほど中火にかけ、豚骨ベースのスープを作る。別の鍋にⒷを入れ、沸とうさせないよう弱火で5〜6分煮て和風だしを作る。ⒶにⒷをザルでこしながら加えて合わせ、Ⓒで味を調える。
3:そばはたっぷりの湯にほぐしながら入れて表示どおりにゆで、湯をきり、器に盛る。①とトッピングを彩りよくのせ、②を注ぐ。
宮古そばの伝統的な盛り付けとは?
沖縄そばの中でも宮古島で製造される「宮古そば」は、縮れのない平たい麺で、あっさりとした味のスープで食べるのが特徴。具材は豚バラ肉の煮付けやカマボコなどになるが、伝統的な盛り付けでは具材を麺の下に隠し、その上に刻みネギをのせる。理由は、盛り付けた上にサービスで麺を足したのが始まりとか、具を麺で隠して温かさを保つため、など諸説あり。近年は具を上にのせることが多い。
※隊員食堂で作られているレシピをもとに編集部で家庭向けにアレンジしました。
(MAMOR2022年6月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/山川修一(扶桑社) 写真提供/防衛省>