2022年、海上自衛隊は創設70周年を迎えます。海自というと、とかく「伝統」が語られがちですが、マモルは、海から空へ昇っていく旭日のように、未来へ向かう海自に着目した。明日の海自を支える入隊志望者を増やすため、海自の魅力について紹介しよう。洋上においては機敏、着実であり、静粛を保つシーマンシップをより向上させる、未来の新しい海上自衛隊に期待しよう!
海自100周年を占う「装備大改革」が始まる
1952年4月、海上自衛隊の前身である「海上警備隊」が創設された。つまり今年2022年は、海自にとって70周年のメモリアルイヤー。しかも今年は、今までになかった新しいタイプの護衛艦「FFM」の就役をはじめ、新たな装備が次々とお目見えするのだ。
こうした新装備は、一朝一夕には生まれない。5年前、10年前、場合によってはもっと以前から計画が練られてきたものもある。防衛省、海上自衛隊がどのような「未来予想図」をもとに装備を作ってきたのか、最新の動向も交えてお伝えする。
FFMってどんな護衛艦?
2022年3月に就役した護衛艦『くまの』(艦名は「熊野川」に由来)は、FFMと略称される新型護衛艦で、比較的小型の軍艦を意味する「フリゲート」(Frigate)の艦種記号であるFFに、機雷戦(Mine)および多用途(Multi-Purpose)の意味からMを付け加えたという。
船体をコンパクトにした上で、敵のレーダー波を反射しにくい形状を採用しステルス性を向上。さらに省人化を追求し、分散していたエンジン制御装置などを集約したことなどで、約200人乗組員が必要だった従来型の半分以下の人員で運用ができるようになった。
<SPEC>基準排水量:3900t 全幅:約16m 全長:約133m 速力:約55㎞/h
新型護衛艦『くまの』のNewポイントはここ!
搭載艇の発進・収納が少人数でできるように
艦内に格納された搭載艇(沖合に停泊した艦艇と陸との交通や物資輸送を行う小型船)の艦尾からの発進・収納は、専用の装置で省人化を図る。
操艦・監視に必要な人員が3人に省人化
最新の商船にも採用される「統合艦橋システム」を護衛艦用にカスタマイズすることで、3人での操艦・監視が可能に。乗員の負荷低減も考慮し、護衛艦では初の着座式となった。
作業エリアをCICに統合したことで、船体のコンパクト化も実現した
従来艦では操縦室、ソナー室、艦橋など複数エリアに分かれていた作業をCIC(戦闘指揮所)に統合。統合管制システムにより各種作業が集約され、360度の全周スクリーンによって情報共有もできるように進化。これぞまさに未来の指揮所。
建造費が安く、多機能で省人化。未来の海自を支えるFFM
FFM『もがみ』型護衛艦は、2022年から続々と就役する予定。現在工事が進んでいるのは、『くまの』を含め6隻。22年度内にも2隻の起工が予定され、最終的には22隻のFFMを整備する計画だ。
FFMは、日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す状況に対応するため、また少子高齢化による省人化ニーズを踏まえて建造された。『くまの』で紹介した特徴のほか、無人機の採用も大きなポイント。水中無人機「UUV」で機雷を捜索し、水上無人機「USV」から爆薬を投下して処分するという、無人機雷排除システムが運用できる。
また、クルー制と呼ばれる複数の乗組員チームによる交替勤務制の導入を護衛艦として初めて実施し、艦の稼働日数を増やすほか、乗組員のうち10%以上を女性自衛官が占める計画があるなど、人材の有効活用にも気を配っている。ちなみに建造費も、最新の護衛艦『あさひ』型と比べて約3分の2と安価だ。
就役後は、沿岸・近海域の守りのほか、東シナ海や日本海などでの平素の警戒監視任務を中心に活動する。有事には従来型護衛艦の任務を補完し、対機雷戦にも対応。島しょ部防衛にも力を発揮することだろう。
続々と就役するFFMたち
【FFM『のしろ』】
<SPEC>基準排水量:3900t 全幅:約16m 全長:約133m 速力:約55㎞/h
【FFM『みくま』】
<SPEC>基準排水量:3900t 全幅:約16m 全長:約133m 速力:約55㎞/h
【FFM『もがみ』】
<SPEC>基準排水量:3900t 全幅:約16m 全長:約133m 速力:約55㎞/h
護衛艦『いずも』は甲板の改修を急ぐ
『いずも』型は、広大な甲板を持ち、ヘリコプターの運用に特化した護衛艦だ。その1番艦である『いずも』は、2019年度末から行われた定期検査に合わせ、短距離離陸・垂直着陸が可能な新型のF-35B戦闘機が発着艦できるよう部分的な改修を実施した。広大な太平洋を含むわが国の海と空の守りについて、自衛隊員の安全を確保しながら、しっかりした備えを調えるため、今後、F-35B戦闘機を42機導入する予定があるからだ。
改修は21年6月末に終了し、ジェットエンジンの排気に対応できるよう甲板の耐熱性を強化したほか、航空機の発着艦で目印となる黄色いラインが甲板に引かれるなどの変更が加わった。10月初旬には、山口県・岩国基地に所在するアメリカ海兵隊のF-35Bによって『いずも』艦上で発着艦検証作業を行い、無事成功を収めた。
(MAMOR2022年4月号)
<文/臼井総理 写真提供/防衛省、三菱重工業(『くまの』)>