高性能の戦闘機も、前線に弾薬や燃料を運ぶ輸送機も、滑走路がなければ任務を果たすことができません。敵に滑走路が狙われる理由はそこにあります。よって攻撃されて破損した滑走路は、すぐさま復旧せねばならないのです。その任務を担う航空施設隊が、実際の爆薬を使って模擬滑走路を爆破して復旧を行うという、大がかりな訓練を行っています。
ミサイル攻撃による小弾痕からの復旧訓練という初めての取り組みを、これまで培ってきた技量と新鋭機器の導入で見事にクリアした中部航空施設隊。滑走路の被害復旧任務に対し、いったいどのような気概で取り組んでいるのだろうか。
方向性を示した、部隊初の被害復旧訓練
爆破の直後は一面が弾痕だらけでとても復旧できるようには見えなかった模擬滑走路が、隊員たちの見事なチームワークによってみるみるうちに復旧された。
今回は、ミサイル攻撃などを想定した、中部航空施設隊としては初となる多数の小弾痕がある滑走路の復旧という課題に対し、ドローンやホイルソウなど新鋭機器も投入して、限られた時間とスペースで任務を無事遂行し、部隊の力量を見せつけた。だが、器材小隊長として新鋭機器の指揮・各操縦手が行う作業の監督を担当した中部航空施設隊第1作業隊の岡原年優2等空尉によると、まだ試行錯誤の段階だという。
「今回のために、担当する重機の操縦訓練や復旧方法の訓練など、各部隊で2、3カ月前から訓練を行ってきました。本番では、これまで積み重ねてきたことを生かして実力を発揮し、しかも無事故で終わることが目標でした。
実際に現場で運用してみると、新しい重機はけっこう運転席からの視界が狭いうえに、演習場の狭くて入り組んでいる場所での作業となったので、事故防止となる安全対策、隊員同士の連携、作業員の交代時などにする申し送りなど、基本的なことを大切にする重要性を再認識しました」
復旧時間短縮には、練度を高めていくのが今後の課題
岡原2尉は、今回の訓練で得た経験をそれぞれの隊員が部隊に持ち帰り、より円滑に滑走路を復旧できるよう、能力、知識、練度を上げていくことを今後の課題として挙げている。
その一方で、現場指揮官として本訓練の指揮を執った、中部航空施設隊司令の松井俊暁1等空佐によると、滑走路復旧において課題となるのは、体力と集中力のさらなる向上だという。
「今回の訓練は、被害発生から完了まで1回だけの復旧作業でしたが、現実にミサイルによる攻撃があった場合、1発だけで終わりになるとは限りません。復旧後にまた攻撃されることもあり得るし、そうなると復旧も2回、3回と繰り返すような長丁場になる可能性もある。航空施設隊には、何度も復旧作業が続く状況でもそれを乗り切る体力が必要だし、集中力が途切れて安全がおろそかになれば、迅速な復旧ができなくなる恐れもあります」
1回目となった新方式による今回の復旧訓練は、航空施設隊の今後の訓練の方向性を指し示すものになったと成果をあげた上で、実際の復旧シーンに近い、こうした機器が入り乱れた現場での訓練が、部隊の実力を養成するためには欠かせないと強調した。
<文/古里学 写真/荒井健>
(MAMOR2021年12月号)