• via text - ここをクリックして引用元(テキスト)を入力(省略可) / site.to.link.com - ここをクリックして引用元を入力(省略可)

     日本の平和は、世界各国間の外交や軍事による勢力争いなど、刻々と変化する国際情勢に大きく影響される。そのため、それを守るには、関係諸国の動きを正しく読み解き、適切に対処する必要がある。私たちも日ごろから理解に努めようと思っているが、複雑化する現代の国際状況を理解するのは、なかなか難しいものだ。

     そこでマモルは、「地図なら、スマートフォンの操作のように世界を直観的に理解できる」と考え、日本の防衛を読み解くためのマップをまとめた地図帳を作ってみた。

    自衛隊の布陣を地図で理解する!

     海を隔てた中国、ロシア、北朝鮮といった国々は軍事活動を活発化させる傾向にあり、純然たる平時でも有事でもない、いわゆる「グレーゾーン」の事態が長期にわたり継続している。24時間、365日、日本を守り続けるために自衛隊はどのような態勢をとっているのだろうか。

    常時警戒・監視を行うことで相手国をけん制し、抑止力に

    画像: 常時警戒・監視を行うことで相手国をけん制し、抑止力に

     領海と排他的経済水域(注)を合わせた面積は世界第6位、6800もの島々による長大な海岸線を有する日本を守ることは容易ではない。自衛隊はこの広大なエリアにおいて、常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察活動を行い、領海や領空の侵犯に対しては即時に対応し適切な措置がとれるような態勢を保持している。

    イギリスの大学院に留学中、現在航空研究センターの研究員を兼務する副官に誘われ公募幹部として入隊した中谷3佐

    「こうした活動は、相手の行動への対処だけでなく、常に監視されていると相手に分からせることにより、相手をけん制し、日本に対する軍事行動を抑止するという大きな意義があります」と、部隊運用や教育訓練などの基盤となる考え方を研究する、航空自衛隊幹部学校航空研究センター防衛戦略研究室の中谷寛士3等空佐は警戒監視活動による抑止効果について語る。

    「人材やコストなど、限られたリソースを効率的かつ有効に活用した警戒監視態勢について、模索が続いています」と土持3佐

    「具体的な態勢としては、まず空を守る目である空自の地上レーダーサイトがあります」と、同センター運用理論研究室の土持太郎3等空佐。北は北海道の稚内から南は沖縄の宮古島まで、全国28カ所に設置。サイトの総数は変わらないが、1993年からミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮は2019年には13回も発射実験を行うなどその脅威が高まっており、弾道ミサイル防衛に対応したレーダーサイトが増えてきた。地上のレーダーサイトに加え、E−767E−2CE−2Dなどの早期警戒機などのレーダーを使って、広い空域をカバーしている。

     海上自衛隊は護衛艦による海上の警戒監視のほか、北海道周辺や日本海、東シナ海などを航行する船舶などの情報を収集したり、哨戒機や哨戒ヘリコプターなどで、空からの監視活動を展開している。

     陸上自衛隊は北海道と、沖縄県の与那国島において沿岸監視隊を配備し、沿岸を航行する船舶の情報収集を行っている。

    注)排他的経済水域:漁業や、石油などの天然資源の採掘、科学的な調査などの活動を、他国の関与を受けず自由に行うことができる水域。海に面している国は、領海の外側に決められた範囲で設定することができる

    日本周辺海空域での警戒監視を支える装備たち

    レーダーサイト

    警戒管制レーダーなどにより、わが国とその周辺の上空を24時間態勢で警戒監視を行う

     全国に28カ所設置されているレーダーサイトのうちBMD対応のレーダーサイトは現在16カ所。その中でもより弾道ミサイルの探知に優れたFPS-5が大湊、佐渡、下甑島、与座岳の各分屯基地に配備されている。領空侵犯の恐れがある航空機などを探知した場合、すぐに戦闘機による緊急発進が行われる態勢になっている。

    護衛艦

    最大級の排水量を誇るヘリコプター搭載型護衛艦『いずも』。同時に5機のヘリの発着艦が可能

     弾道ミサイルを探知・追尾し、ミサイルで迎撃・破壊する弾道ミサイル防衛、敵航空機などを迎撃する対空戦、敵潜水艦を捜索・追尾し、状況に応じて攻撃を行う対潜戦、敵の水上艦艇を撃破する対水上戦、主に艦砲を使い対地射撃を行う対地火力支援といった任務により、日本周辺海域の防衛を行う。

    <SPEC>
    基準排水量:19950t 全幅:38.0m 全長:248m 速力:約56km/h 深さ:23.5m 喫水:7.2m

    哨戒機P-1/P-3C

     哨戒機は潜水艦の探知と攻撃を目的とした航空機で、レーダー、音響探査装置、磁気探査装置など各種電子機器を搭載。また自ら探知した潜水艦を攻撃するための対潜爆弾や魚雷、空対艦、空対地ミサイルも装備するなど、多彩な攻撃力も併せ持っている。現在最新鋭のP-1は厚木、鹿屋に、P-3Cは八戸、那覇に配備されている。

    P-1

     純国産のP-1は、ターボファンエンジンを搭載し、飛行性能および静粛性に優れる。

    <SPEC>
    全幅:35.4m 全長:38.0m 全高:12.1m 全備重量:約80t

    P-3C

     潜水艦の捜索・追尾には、水中の音を探知するソノブイを海に投下する。

    <SPEC>
    全幅:30.4m 全長:35.6m 全高:10.3m 全備重量:約56t 巡航速度:約645km/h 最大速度:約730km/h

    哨戒ヘリコプター SH-60J/SH-60K

     護衛艦に搭載され、水上艦や潜水艦の探知・攻撃能力を持つヘリコプター。SH-60Jを運用後、この機体をもとに改造開発を行ったSH-60Kは、従来の魚雷や対潜爆弾に加えて、空対艦ミサイルが搭載可能になったほか、対潜水艦戦、対水上戦能力が向上した。

    SH-60J

     一部の機体は、赤外線監視装置や敵のミサイルを感知する自機防御装置などを追加装備している。

    <SPEC>
    全幅:16.35m 全長:19.76m(寸法はローター回転時) 全高:5.18m 最大速度:約275km/h 乗員:4人

    SH-60K

     夜間や悪天候下でも艦艇に着艦できる着艦誘導支援装置を装備。着艦時の操縦士の負担を大幅に軽減できる。

    <SPEC>
    全幅:16.4m 全長:19.8m(寸法はローター回転時) 全高:5.4m 全備重量:約10.9t 最大速度:約255km/h

    E-767早期警戒管制機

     早期警戒管制機は、機体背面に搭載する円盤型のレーダーによりほかの航空機の探知を行い、自軍航空機の管制・指揮を行う航空機。E-767は警戒管制システム、全方向監視レーダーを装備し、約7200キロメートルの航続距離と高高度での航行、警戒活動が可能な優れた監視能力を持つ。浜松基地に配備されている。

    <SPEC>
    全幅:約48m/全長:約49m /全高:約16m/航続距離:約7200km/最大速度:約840km/h

    E-2C/E-2D早期警戒機

     1987年から実戦配備されたE-2C早期警戒機は航続距離が2550キロメートルで、低空侵入機の早期発見、陸・海部隊との作戦連携、陸上レーダーサイト機能の代替、通信の中継など、その役割は多岐にわたる。現在E-2Cは、外見はほとんど変わらないものの、レーダーの能力をさらに高めたE-2Dに置き換わりつつある。

    E-2C

     胴体の上部に大きな警戒レーダーを搭載。2基搭載された5100馬力のエンジンでプロペラを駆動する。

    <SPEC>
    全幅:24.6m/全長:17.6m/全高:5.6m/全備重量:約23t/最大速度:約600km/h

    E-2D

     2019年に初号機を三沢基地に配備。小さい目標まで探知可能であり、E-2Cと比べ高い警戒監視能力を持つ。

    <SPEC>
    全幅:24.6m/全長:17.6m/全高:5.6m/最大速度:約650km/h

    ※本特集内の地図は全て、概念を示すためのイメージ図です。地図上の範囲や航路、配置などは実際の正確なものではありません。

    (MAMOR2021年11月号)

    <文/古里学 写真提供/防衛省 地図製作/東海図版株式会社>

    マモル・アトラス

    This article is a sponsored article by
    ''.