自衛隊にはさまざまなフォルムを持った特殊な装備品がたくさんある。その掃除方法はやはり特殊なのだろうか?戦車や航空機、護衛艦など、「これはどうやって洗うんだろう?」と疑問に思った装備品の掃除法を調べてみた。
野外入浴セット2型の掃除:浴槽に水を張り、掃除に活用
災害派遣時に被災地で開設される入浴施設としても活用される野外入浴セット2型。掃除は浴槽に水を入れ、おけなどの付属品を洗う。その後、浴槽の汚れをブラシなどで落とす。
野外炊具1号(改)の掃除:洗浄用に専用トレイを携行して掃除する
大型トラックでけん引して使用する移動式の調理器材、野外炊具1号(改)。かまどなどは濡らした布などで拭き、内釜などの調理器具や食器類は掃除用に用意した専用トレイで洗う。
天幕の掃除:ブラシで洗った後、しっかり乾燥させる
天幕全体に水をまき、デッキブラシなどで汚れを落とす。掃除後そのまま折り畳んで保管すると湿気がたまり、かびが生えることもあるので、折り畳む前にしっかり乾燥させる。
92式浮橋の掃除:動力ボート部内の水濾し器に入った汚れを除去
橋のない河川に、水に浮く橋節(橋げたにあたる部分)を浮かべて橋にする92式浮橋。掃除は橋節内部に溜まった水を排水し、泥などの汚れを高圧洗浄機で落とし、可動部分などに油をさす。
橋節同士をつなぐロープ類は洗って乾燥させる。特に動力ボート部は、エンジンの冷却水を川から取り入れる際のフィルターにあたる「水濾し器」を使用後に分解清掃。中に入った藻や汚れを除去している。
化学防護衣4形の掃除:ゴムの劣化を防ぎ、高機能を維持する
有毒な化学剤などが存在する中で使用する化学防護衣。防護衣に穴や亀裂があるとそこから有毒成分が入り込むため危険だ。そのため、清潔に保ちゴムの劣化を防止することはとても重要。
石けん水で洗ってから水ですすぐが、両腕部と後頭部に防護服内の蒸れを調節する「排気弁栓」があり、普通に乾かすだけでは水滴が残るので、栓を開けて乾かす。また袖は2重構造になっており、表面が乾いたら外袖をまくり、内袖も乾かしている。
小銃の掃除:各パーツを磨いて銃身部分も清掃する
89式5.56ミリ小銃などの掃除は、手あかなどが付くグリップ部などを布で拭き、汚れを落とす。銃身の掃除は、「手入れ棒」と呼ばれる短い棒を何本か組み合わせた道具を使う。
先端に穴が開いているので、ウエスを通して入れ、手入れ棒を回して汚れを拭き取る。すす汚れが激しい場合は、ウエスを交換し、作業を繰り返す。
84ミリ無反動砲の掃除:射撃の反動で発生するすす汚れを掃除
84ミリ無反動砲は射撃時の反動を打ち消すために、砲弾発射と同時に砲口と逆方向の後方へ大量のガスや樹脂破片を高速噴射する構造だ。そのため、砲身内にすすがたまりやすい。
掃除はウエスなどで外側を磨き、砲身は専用のブラシを使い、すすを落とす。約16キログラムと比較的軽量だが、安全のため、掃除は2人1組で行う。
弾薬の掃除:1発1発丁寧に磨き品質を確認する
自衛隊が使用する弾薬はけん銃、小銃から、戦車砲や大砲まで、種類も量も大量にある。これらの弾薬はメーカーから納入されると、隊員の手で1発ずつ掃除・点検が行われる。
不具合があると命に関わる問題のため、1発1発を布を使って手で磨き上げながら、傷やへこみがないかなどを確認している。
18式個人用防護装備(防護マスク)の掃除:入り組んだマスクは内部を丁寧に掃除
有毒ガスなどが発生している中で使用する防護マスクは、亀裂などが絶対あってはならない装備品だ。掃除は、穴がないかを確認しながら、傷つけないようウエスなどで丁寧に汚れを拭き取る。「伝声呼気室」と呼ばれる声を通しやすくする部位は、汗などの水分が残るとかびの原因になるので、とくによく拭き取る。
携帯用無線機の掃除:エアでほこりを落とし細部を磨く
携帯用無線機には、アンテナやケーブル類、隊員が携帯するケースなどを取り付けるベルトなど、接合部が多数ある。
掃除の際は、これら接合部にエアダスターを吹きかけてほこりや水気などの汚れを飛ばし、布などで磨き、スイッチ類がきちんと動くか、ケーブル類の接点の異物および腐食などがないかなどを点検しながら掃除をする。
靴の掃除は、汚れを持ち込まないためにも行う
自衛官は自分の半長靴(くるぶしと膝の中間あたりまでの長さのブーツ)を毎日磨いて手入れをするが、隊舎の入り口などにはシューズクリーナーがあり、エアコンプレッサーから噴出する風で靴の汚れを吹き飛ばしてから隊舎に入る。屋内に汚れを持ち込まないようにするのだ。
(MAMOR2020年12月号)
<文/臼井総理>