•  自衛隊は働く場としても魅力的と聞きますが、実際どうなのか、若い自衛官に、所属する部隊の自慢やら、任務のやりがいやら聞いてみたいのですが、編集部が質問しても、お堅い話しか返ってきません。そこで、若者に人気の漫才コンビNON STYLEの2人に出馬を要請。リモートな世の中だから、直接会わずに軟らか〜くチャットでインタビュー。

    画像1: 機甲科きっての射撃の名手は、お調子者の熱血漢【NON STYLEの“ノン感染型”インタビュー】

    【NON STYLE】
    石田明(写真左)と井上裕介の漫才コンビ。2000年5月14日結成。爆笑オンエアバトル第9代目チャンピオン。08年M-1グランプリ王者。自衛隊とコラボした「ジェイTube」で自衛隊PR大使も務めた

    NON STYLEがリモートで本音を探る

     今回のチャットでインタビューは、所属する部隊が参加した競技会で優秀賞を取ったことがある山田大介3等陸曹。M−1グランプリで王者となったNON STYLEにとっても、競技会は気になるよう。でもその前に、山田3曹の所属する「陸上自衛隊第8師団 第42即応機動連隊 機動戦闘車隊」について紹介します。

    【山田大介3等陸曹】
    2012年陸上自衛隊入隊。戦車部隊と情報収集を行う偵察隊からなる「機甲科」職種の陸曹として、戦車や機動戦闘車の射撃を担当する

    陸上自衛隊第8師団 第42即応機動連隊 機動戦闘車隊とは

    九州南部3県の防衛警備と災害派遣活動などを担当する部隊

    画像: 第42即応機動連隊が所在する北熊本駐屯地の正門。同部隊を指揮する第8師団の司令部も所在する

    第42即応機動連隊が所在する北熊本駐屯地の正門。同部隊を指揮する第8師団の司令部も所在する

     第8師団は、九州南部(熊本、宮崎、鹿児島県)の防衛警備や災害派遣などを担任している。第42即応機動連隊は、これまで別々の任務を担っていた地上で戦闘を行う職種である「普通科」、戦車や装甲車などを扱う「機甲科」、大砲などで広い地域を制圧する能力を持つ「特科」などが1つの部隊として編成された「即応機動連隊」として2018年3月27日に新編された。

    画像: 部隊が使用する16式機動戦闘車の射撃訓練。演習は駐屯地近郊の大矢野原演習場などで行われる

    部隊が使用する16式機動戦闘車の射撃訓練。演習は駐屯地近郊の大矢野原演習場などで行われる

     機動戦闘車隊には、16式機動戦闘車96式装輪装甲車軽装甲機動車が配備されており、熊本県熊本市の北熊本駐屯地に部隊の拠点を構え、防衛警備や災害派遣などの任務に就いている。

    画像: 演習中に、16式機動戦闘車に草を付けて偽装を施す山田3曹。車両を隠す草は展開する地域に生えているものを必要な量だけ刈って使用する

    演習中に、16式機動戦闘車に草を付けて偽装を施す山田3曹。車両を隠す草は展開する地域に生えているものを必要な量だけ刈って使用する

    機動戦闘車陸曹として射撃を担当

    井上:山田さんはなぜ、自衛隊に入ろうと思ったんですか?

    山田大介3等陸曹(以下、山田):自分はっ! 自衛隊の海外での活躍などを目の当たりにしっ、国を守りたいとっ!

    井上:山田さん、戦車の装甲並みに硬いです。

    山田:えーっと、就職先がなかったからです(笑)

    石田:いきなり軟らかくなったな。

    井上:そんなことないでしょ! 日本の役に立ちたかったんでしょ。

    山田:はい。災害派遣で活躍する隊員の姿を見て憧れを抱き、入隊しました。

    井上:今はどんなお仕事を?

    画像1: 機動戦闘車陸曹として射撃を担当

    山田:機動戦闘車陸曹として、主に16式機動戦闘車(MCV)の105ミリ施線砲や機関銃の射撃を行っています。

    井上:かっこええな。難しいところですが、こういった装備が活躍しない世の中が望ましいんですよね。

    山田:抑止力という意味もありますが、何かあったときのため、努力と訓練はし続けています。国民の皆さんを守る大切な任務です!

    井上:その努力も必要なことですね。

    山田:災害派遣の出動もありますので、そんなときにも活躍できるよう、隊員みんなで訓練をして精度を高めています。

    石田:ところで、ずっと隣にいる方はどなた?

    画像2: 機動戦闘車陸曹として射撃を担当

    山田:中隊長の柳田淳1等陸尉です。

    柳田淳1等陸佐(以下、柳田):こんにちは。柳田1尉です。

    井上:柳田さんから見た山田さんの印象は?

    柳田:まだ若手ですが、与えた任務を責任もってやってくれるので助かります。率先して部隊を引っ張ってくれます。

    井上:山田さん、柳田さんの指導は厳しい?

    山田:愛情がこもっていて、ばんばんハートに突き刺さります!

    井上:ほんまか、それ!

    石田:なんか無言の圧を感じますね。

    柳田:こいつ、すぐ調子に乗るんですよ。お調子者なんです。この写真、見てくださいよ。

    石田:初めて会ったばかりですけど、リモートでもお調子者感は伝わってますよ!

    訓練中に大遅刻。先輩からは……

    井上:何かやらかしてそうやな、山田さん。

    山田:入隊1年目のときに、派手に失敗したことがあります。

    石田:何やらかしたん?

    画像1: 訓練中に大遅刻。先輩からは……

    山田:「警戒」という陣地を交代で守る見張りの訓練があったのですが……。遅刻をして先輩を30分以上待たせてしまいました!

    石田:それは大変やな!

    山田:しかも2回やっちゃいまして。

    井上:2回!

    山田:1回目は「1年目だから仕方ない」と許してもらえました。でも2回目は「殴るぞ」とめちゃくちゃ怒られまして……。

    石田:それはしゃあない。ダメなのは山田さんだもの。

    井上:自衛隊関係なく遅刻はダメやもんね。

    柳田:任務で遅刻しようものなら、普段は温厚な私でも激怒しそうです。

    石田:それ以降、遅刻はしてない?

    山田:一切してないです!

    井上:ホンマか? 逆にいい思い出はないの?

    山田:先輩や同僚に恵まれていると思います。MCVは私のような砲手と操縦手、弾薬を火砲・火器に装てんする装てん手と、指揮官である車長の4人が乗ります。厳しい訓練は多いですが、同じ空間を過ごす仲間の結束力は強いです。

    石田:MCVの狭い空間は男子校のノリになりそうやね。

    井上:山田さんのキャラは現場を明るくしますよね。ところで、何か賞をもらったんでしょ?

    山田:はい! 西日本に所在するMCVの部隊が集まった競技会が2019年8月にあったのですが、合同の射撃訓練で9個の部隊の中から優秀単車に選ばれました!

    井上:優秀というのはどんな点で?

    山田:射撃で1番当てました!

    井上:すごいね〜。うれしかったでしょ。

    山田:それはもう。感激しました。

    石田:仲間からも祝福されたんちゃう?

    画像2: 訓練中に大遅刻。先輩からは……

    山田:部隊も優秀中隊に選ばれまして、とても誇らしい気持ちになりました。

    石田:山田さんも成長を感じたんちゃう?

    山田:そうですね。射撃の精度もですが、日々の過酷な訓練を通して忍耐力も身に付いたと思います。

    「もし何かあったら自分は現場に行かなくちゃいけない」

    井上:ええなぁ。山田さん、プライベートは充実していますか?

    山田:はい。結婚していまして、今は新型コロナウイルスの影響もあって、一緒に過ごす時間が長くなりましたね。

    井上:プロポーズの言葉は何ですか?

    山田:「俺に付いて来いや!」と。

    石田:ホンマかいな。そんなにどしっと言える?

    山田:本当は「結婚してください」です。

    井上:調子ええな〜。訓練が続くと、一緒に過ごす時間がなくなっちゃう?

    山田:そうですね。演習だと2週間続くこともあります。

    井上:何か災害が起こったら駆け付けないといけないしね。

    山田:奥さんには、常日ごろから「もし何かあったら自分は現場に行かなくちゃいけない」と話をしています。

    井上:(2020年)7月の熊本豪雨でも災害派遣を実施したんでしょ。

    山田:はい、そうですね。7月3日から大雨が降っていて特別警報も発令されていたので「何かあるかもしれない」と気に掛けていました。7月4日の早朝に災害派遣の要請があり救助活動などを実施しました。

    石田:頼もしいな〜。

    井上:災害派遣で活躍したいという思いが入隊前からありましたものね。

    画像: 「もし何かあったら自分は現場に行かなくちゃいけない」

    山田:災害派遣で皆さんのお役に立てているときは誇りを感じます。2016年に起こった熊本地震で支援に当たった際も、被災者の方に「ありがとう」と言われ、大変だったのですがやりがいも感じました。

    井上:災害派遣でも、日ごろの訓練成果が生きるわけやね。

    山田:はい。何が起こっても冷静に対処できる力は、毎日の訓練がないとできないことだと思います!

    息子が「自衛隊に入りたい」と言ってきたら?

    井上:大変なときに大変な人を支えてくれるのが、皆さんの大切な仕事ですものね。

    画像: 息子が「自衛隊に入りたい」と言ってきたら?

    山田:私たちの判断で救える命、救えない命もあります。現場に駆け付けてからの判断力を養うことも訓練で意識しています。MCVは最新の車両ですが、射撃訓練などはやはり危険です。1つひとつの動作を確認して安全に確実に取り組んでいます。

    石田:山田さんの今後の目標は何ですか?

    山田:今年も射撃競技会が予定されているので、2連覇を目指したいです! あと、プライベートですが父親になるので子育てに熱心な育男になります。石田さんのような立派な父親になりたいです!

    石田:パパは最高ですよ。毎日が楽しいです。

    井上:お子さんが自衛隊に入りたいと言ってきたらどうします?

    山田:そこは「どんと来い」と背中を押してあげたいですね。

    井上:子育ても自衛隊の任務も両立させて、九州を、日本をよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

    山田:はい! ありがとうございました。

    石田:待って! 最後にどうしても聞きたいことがあります。山田さん、プライベートで着る服に迷彩柄はありますか?

    井上:なんで聞きたいねん。

    山田:えぇっと、ないですね。

    石田:ないんですね。仕事で着てるからか。ありがとうございました!

    最後に山田3曹の「ちょっと自慢!」

    井上:即応機動連隊はとにかく体力ないとダメですよね。

    石田:陸上自衛隊の訓練はめちゃくちゃ厳しそうやもんな。お風呂入れなかったり、山の中にずっとこもったりして。ゼッタイ体力もたんわ。

    山田:もちろん体力は大切ですが、熱い気持ちが1番。志があれば手厚くフォローするのが仲間思いの射撃大会で優秀賞を取った第42即応機動連隊の自慢です!

    石田:その優秀な射撃能力で、自衛官志望者のハートも撃ち抜くんかなぁ。俺の心も撃ち抜いたなら入隊します!

    井上:ホンマか?お前も調子えぇな。

    <撮影/増元幸司(NON STYLE)、防衛省(部隊提供、山田3曹本人)>

    (MAMOR2020年10月号)

    NON STYLEの“ノン感染型”インタビュー

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