•  防衛省は自衛官としての任期を終えて民間会社などに就職する人材を「自衛隊新卒」と呼んでいます。自衛隊新卒は、在隊時に身に付けたスキルで即戦力として活躍できるといわれています。では自衛官はいったいどのようなスキルを身に付けているのか? お笑い芸人として活躍する元自衛官に話を聞いてみました。

    体に染み込んだ“礼儀”は一生の宝です(やす子)

    【お笑い芸人 やす子】
    1998年山口県生まれ。2017年入隊。施設科隊員として京都府の大久保駐屯地の第3施設大隊に所属。ドーザ手(ブルドーザーのオペレーター)として勤務。19年に陸士長で退職後上京し、清掃員の仕事を経てお笑い芸人の道へ。劇場でのライブのほか、テレビやドラマでも活躍中。現在は即応予備自衛官としても活動中。

     開口一番、「社会人としての良識の全てを、自衛隊で教えていただきました」と話すやす子さん。

    「当時の上官や先輩方はストイックな努力家ばかりで、私は心から尊敬していました。ですから、言われたことに『はい!』と返事をし、背筋を伸ばして話を聞き、ドアを先に開けて見送るなど、尊敬の気持ちを態度で表すことを義務と感じたことはありません」と続けて話す。

    「礼儀正しい振る舞いが身に付いたおかげで、今でも無意識に体が動きます。先輩芸人からほめていただくことも多く、この習慣は一生の宝ですね」

    大きな声でのあいさつは芸の基本につながります

    自衛官時代の写真(本人提供)

     自衛官時代はたくさん叱られたと振り返るやす子さん。「部下の成長のため、あえて厳しい言葉で、本気で指導してくださいました。その気持ちが伝わるから、訓練のとき『どうしたら相手の気持ちに応えられるか』を真剣に考えました」。その結果として得られたのが「観察力」や「先を察知する力」だと話す。

    画像: 事務所が運営する劇場や動画サイトなどで公演を行うやす子さん。自衛隊ネタだけでない、新規ネタも考案し日々お客さんを前に披露している

    事務所が運営する劇場や動画サイトなどで公演を行うやす子さん。自衛隊ネタだけでない、新規ネタも考案し日々お客さんを前に披露している

    「今は毎日お笑いの現場に立っていますが、その場の空気を読んで、『自分は今、何を求められているのか』を判断できるのは、自衛隊で培った特技です。大きな声を出せるようになったのも、自衛隊の訓練のおかげ。

     上官に『大きな声で簡潔に報告しろ』と教わり、劇場でもよく声が通りますし、今のネタ作りに役立っています。私の芸人としてのスキルは、全て自衛隊で身に付けたものと言っていいかもしれません」

    仲間との連携を意識するのは部隊でも舞台でも同じです(トッカグン小野寺)

    【お笑い芸人 トッカグン小野寺】
    1983年宮城県生まれ。2001年入隊。第2特科群第110特科大隊に所属し宮城県の仙台駐屯地で勤務。203ミリ自走りゅう弾砲の射撃操作などを行う砲手として活動。03年に陸士長で退職し、08年に元自衛官の同級生とお笑いコンビ「トッカグン」を結成。20年にコンビを解散し、現在はソロユニットとして活動中。予備自衛官としても活動している。

     元自衛官の相方とのコンビを解散し、今はピン芸人となった小野寺さん。だが基本的なスタンスはコンビ時代と変わらないそうだ。

    「芸名の由来でもある火砲などを取り扱う部隊にいました。私が取り扱っていた203ミリ自走りゅう弾砲は1人では動かせないため仲間との連携が大事です。効率よく動かせるよう、みんなでやり方を工夫して訓練をしました。お笑いの現場も、共演者のキャラを把握し、動きを読み、盛り上げるために工夫するなど自衛隊の訓練で得たスキルが生かせていると思います」と教えてくれた。

    画像2: 自衛官時代の写真(本人提供)

    自衛官時代の写真(本人提供)

    「自衛隊では集団生活をして、同僚は命を預け合う仲間なのでコミュニケーションが重要です。それはどの世界でも大切なことですし、自衛隊時代に覚えた経験が活用できるのは自信にもつながります」

    人間関係の形成にも自衛隊の経験が生かせます(フルーツポンチ 亘健太郎)

    画像: 人間関係の形成にも自衛隊の経験が生かせます(フルーツポンチ 亘健太郎)

    【お笑い芸人 亘健太郎(フルーツポンチ)】
    1980年神奈川県生まれ。99年に航空自衛隊に入隊。第3航空団整備補給群装備隊・武器小隊員として青森県の三沢基地で勤務。2004年に空士長で退職。同年、コンビ「フルーツポンチ」を結成。ツッコミ担当として舞台やテレビなどで活動中。現在は予備自衛官としても活動している。

    「お笑いという自衛隊と全く違う世界に入りましたが、周りの方への礼儀や気配りなど、人間関係を築く上で経験が生きているなと感じます。社会人の基本かもしれませんが、自然と身に付いていたんだと自衛隊を辞めてから気が付きました」

    画像3: 自衛官時代の写真(本人提供)

    自衛官時代の写真(本人提供)

     先述のトッカグン小野寺さんをはじめ、元自衛官同士の共演も多い。「元自衛官芸人は楽屋をきれいに使うんです。整理整頓もスキルといえますよね」と亘さん。自分では当たり前にしているが、思い返せば自衛官時代の経験が生きていると感じていることもある。

    「訓練では同じことを繰り返すので異変に気が付きやすい。お笑いの現場でも一瞬の変化を見逃さずにツッコむといった“気付き”が大きな笑いになることもあります。気付く力も付いていたんだと思います」

    (MAMOR2021年10月号)

    <取材・文/MAMOR編集部>

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