•  国を守ることが仕事の自衛隊。しかし、入隊を検討するにあたっては、その給与や、在職中に取れる資格なども重要な要素になる。そこでマモルでは、はたして入隊すると、いくつ資格が取れるのか調べてみた。

    理論上、任務に直結する資格が複数取得できる

     自衛官は任務を行う上で必要となる各種資格を、自衛隊で取得することになる。任期制自衛官は理論上、その資格をいくつ任期中に取れるのか。部隊配属後、資格取得のための教育に専念するシミュレーションで、今回は国家資格に限定して調査してみた。もちろんこれは雑誌のお遊び企画であるため、実際は資格を取得した隊員はいない。

     まず陸自の場合。施設科の隊員なら「大型自動車免許」とクレーン車などの操作に必要な「大型特殊自動車免許」、重機を動かす「ドーザ免許」が取れる。さらに、土木工事の主任に必要な「2級土木施工管理技士」も入れると4つの資格が取得できそうだ。

     海自の場合は、まず船舶の操縦などに必要な「1級小型船舶操縦士」が取得できる。さらに艦艇のエンジン整備に携わる機関科員ならば、燃料などを取り扱える「乙種第4類危険物取扱者」や「2級ボイラー技士」も取れる。ボイラー技士は上級資格もあるため、理論上は4つの資格取得が狙える。

     空自は航空機の整備に携わる航空機整備員が複数の資格を取得できる。航空機の燃料を取り扱うため「乙種第4類危険物取扱者」が取得可能で、整備士の資格「1等航空整備士」と合わせれば2つ取れる。

    任務に直結するため、資格取得の教育はとても厳しい

    山本孝之3等陸佐。第6戦車大隊などを経て、現在は東京地方協力本部募集課に所属。入隊希望者への説明などを担当

     自衛隊の資格には国家資格と自衛隊内限定の資格があり、どちらも資格取得のための教育を受ける場合、部隊の訓練などから外れて教育に集中することになる。自衛官の募集業務を担当する東京地方協力本部の山本孝之3等陸佐に話を聞いた。

    「教育期間も隊員の待遇は変わらず、給料をもらいながら資格取得を目指せます。取得にかかる費用も自分で負担する必要がありません。しかし任務に必要なものなので民間の教育機関よりも指導は厳しいです」

     今回の企画で紹介した陸・海・空各自衛隊で取得した国家資格は、退職後も全て民間で使用できる。また、精強さを保つため自衛官は一般の公務員より若い年齢で退職する若年定年制を採用している。そのため自衛隊を退職し民間企業などに就職する際の支援として、例えば社会保険労務士や簿記の通信教育など、各種資格取得のサポートもある。

    陸上自衛隊:1任期(約2年)で4資格GET

    画像: 自動車教習所を持つ基地・駐屯地もある。街中にある公安委員会指定自動車教習所と同じ扱いのため実技は自衛隊内で、学科試験は各都道府県の運転免許試験場で受験する

    自動車教習所を持つ基地・駐屯地もある。街中にある公安委員会指定自動車教習所と同じ扱いのため実技は自衛隊内で、学科試験は各都道府県の運転免許試験場で受験する

    ・大型自動車免許
    ・大型特殊自動車免許
    ・ドーザ免許
    ・2級土木施工管理技士

     大型自動車免許は普通自動車の免許取得から3年経たないと取得できないと「道路交通法施行令」で定められているが、職務上必要となる自衛隊では特例として最初から大型自動車免許を取得することが認められている。

    航空自衛隊:1任期(約3年)で2資格GET

    画像: 駐機場で細部の点検を行う整備員。事故を防ぐため、短時間で正確な点検・整備も求められる

    駐機場で細部の点検を行う整備員。事故を防ぐため、短時間で正確な点検・整備も求められる

    ・1等航空整備士
    ・乙種第4類危険物取扱者

     航空整備士は、飛行機やヘリコプターを安全に運航するための、整備・点検などが行える資格。整備士として1年以上の実務経験を積むと、1等航空整備士の受験資格が得られる。

    海上自衛隊:1任期(約3年)で4資格GET

    画像: エンジンの点検を行う機関科員。 整備に関する知識や技術は教育訓練で学ぶが、資格がないとできない整備もある

    エンジンの点検を行う機関科員。 整備に関する知識や技術は教育訓練で学ぶが、資格がないとできない整備もある

    ・1級小型船舶操縦士
    ・乙種第4類危険物取扱者
    ・2級ボイラー技士
    ・1級ボイラー技士

     1級小型船舶操縦士は20トン未満の船舶を操縦できる。乙種第4類危険物取扱者はガソリンや灯油などの取り扱いと管理ができ、ボイラー技士はボイラーの点検や管理ができる資格だ。

    自衛隊で取れる国家資格一覧(50音順)

    上記で紹介した資格以外にも、こんな国家資格が自衛隊で取れる。

    ・アーク溶接
    気体中の放電現象を利用して、金属同士をつなぎ合わせる溶接ができる資格

    ・医師免許
    病気の診察や治療、投薬に関する行為を行うために必要な資格

    ・ガス溶接技能者
    高温の炎で金属を溶かして、溶接や溶断を行うために必要な資格

    ・看護師
    病院や診療所などで医師の治療を助け、診療補助を行える資格

    ・気象予報士
    気象庁から提供された情報を分析して天気図などを作成し、総合的に天気を予測することができる資格

    ・クレーン免許
    移動式クレーン車を運転するのに必要な資格

    ・けん引免許
    総重量が750キログラムを超える、自走できない車両をけん引できる資格

    ・建築士
    建築物の設計および工事監理や鑑定評価などを行うために必要な資格

    ・小型船舶免許
    20トン未満の小型船舶を操縦するために必要な免許

    ・公害防止管理者(1〜4級)
    公害が発生する可能性のある工場や施設などで、大気や水質、振動、騒音などの検査監督ができる資格

    ・航空管制官
    レーダーや無線などを使い地上から操縦士に情報や指示を送り、航空機を安全に誘導するために必要な資格

    ・航空従事者技能証明
    いわゆるパイロット免許のこと。飛行機やヘリコプターの操縦をするために必要な資格

    ・航空無線通信士
    航空関連の業務に関わる無線全般や、無線設備の操作に必要な資格

    ・歯科技工士
    歯科医師の指示に基づき、歯科治療における詰め物や入れ歯などの作成や修理をするために必要な資格

    ・自動車整備士(1〜3級)
    自動車のメンテナンス(診断・点検・修理・調整など)に関する作業と作業時の安全管理ができる資格

    ・診療放射線技師
    医療現場において医師の指示のもと、放射線を使ったX線装置やCT装置などを操作し、検査をするために必要な資格

    ・測量士、測量士補
    建設・土木工事を行う土地について、位置・距離・面積の測量と監督ができる資格

    ・玉掛け作業者
    クレーンのフックに荷物をかけたり、移動後に荷物を取り外す作業と監督ができる資格

    ・調理師免許
    調理に関する技術や衛生など食に関する専門知識があり、飲食店などで調理業務を行うために必要な資格

    ・電気工事士
    電気設備の工事・取り扱いの際に必要な資格

    ・特殊無線技士
    無線設備の技術操作などを行うために必要な資格

    ・フォークリフト免許
    フォークリフトを運転するために必要な資格

    ・陸上無線技術士
    陸上にある業務用無線設備において、技術的な操作や管理ができる資格

    ・臨床検査技師
    医師の指示のもと、診療に必要な検査を行うことができる資格

    ・冷凍機械責任者
    空調設備や冷凍機械の保守点検などを行うための資格

    (MAMOR2021年10月号)

    <文/真嶋夏歩 撮影/増元幸司>

    入隊して得たスキルが役立つ!

    This article is a sponsored article by
    ''.