日本ではその存在感を際立たせる女性自衛官だが、外国軍において、女性兵士はどれほど活躍しているのだろうか。軍事ライターの稲葉義泰氏に話を伺った。
海外の軍隊ではダイバーシティが加速
「軍隊での女性の割合を高めていくことは、多様な人材を積極的に登用するという“ダイバーシティ”の考え方に照らし、海外においても特に近年、重要視されています。例えば、さまざまな人種の人々が暮らすカナダは、軍隊におけるダイバーシティの実現に力を注いでおり、2026年までに軍全体に占める女性の割合を、現在の16%から25.1%まで引き上げることを目標とする計画があります」と稲葉氏。
カナダ以外の軍における女性の割合は、現状でハンガリーが19.9%、オーストラリアは18.1%、ニュージーランドは17.4%、ブルガリアが16.1%と、日本の7.4%と比べてかなり高い。また採用比率は、最も高いラトビアで37.4%、次いでギリシャが29.2%、ブルガリアの27.9%と続く。
「配置制限に関しても、カナダは01年には全ての職種を女性に開放しています。世界的には、潜水艦を例に挙げれば、1985年にノルウェー海軍が女性の乗艦を許可して以来、88年にはデンマーク海軍が、89年にはスウェーデン海軍が、その後、オーストラリア海軍、カナダ海軍、アメリカ海軍、イギリス海軍、フランス海軍と、続々と女性潜水艦乗員が誕生しています。
女性の活躍が、自衛隊の能力の底上げにつながる
オーストラリア軍は2011年に直接戦闘に関わるような職種も女性に開放し、アフガニスタンでの治安維持作戦においても女性兵士が活躍しています。女性の起用で現地の女性とのコミュニケーションが円滑になり、多国籍軍にとって重要な情報収集が容易になったという評価もあります。
このように、女性の軍隊への進出は、単なる男女平等という側面だけではなく、実際の軍事活動における部隊の能力向上という側面からも、評価される時代が来ているのです。
自衛隊においても、女性の活躍の場は間違いなく広がっていくでしょう。女性ならではのきめ細やかさを生かした職務や、PKOを含む海外での活動は、自衛隊の能力を底上げすることにつながるのではないでしょうか」と稲葉氏は期待を込めて結んだ。
【稲葉義泰】
軍事ライター、国際法・防衛法政研究者。専修大学在学中から軍事ライターとして活動。現在は同大学院にて、主に国際法や自衛隊法などの研究を進める一方で、軍事専門誌に多数寄稿
(MAMOR2021年3月号)
<文/真嶋夏歩 撮影/山田耕司(扶桑社・杉山氏)、アークコミュニケーションズ(稲葉氏)>