近年、自衛隊は広報ツールとしてネット動画を頻繁に利用し話題になっています。そこで、広報ツールの先輩であるマモルでも動画を作ってみようと、動画投稿サイト「YouTube」での累計再生回数が1700万回を超えたという人気ユーチューバー(注)でもある元自衛官タレントのかざりさんに、陸上自衛隊衛生学校で「第一線救護」訓練を体験していただき、その様子をオリジナル動画にまとめました。
(注)ユーチューバー:動画投稿サイトYouTube上で自主制作の動画作品を投稿したり、動画投稿により収入を得ている人などを指す
【かざり】
日本大学芸術学部デザイン学科卒業後、陸上自衛隊で勤務。現在は元自衛官タレントとして、ラジオ、映画、YouTubeなど幅広く活動中。YouTubeのチャンネル登録者数は、活動を始めて半年で20万人を突破
隊員の命を守る、自衛隊式救急法を体験
戦闘地域で負傷した隊員を救護する衛生科隊員は、国を守る上で重要な存在だ。衛生学校では、隊員救護の技術を「手技」と呼ぶ。今回かざりさんは、衛生学校で隊員が学ぶ、初歩的な手技をいくつか体験した。どのような手技を体験したのか、紹介しよう。
緊急搬送<最前線から隊員を避難させる>
負傷者を安全な場所まで後退させる。ヒモを負傷者の腕と肩に通し、銃を構えながら、一気に引っ張る。ヒモのかけ方がポイントだ。果たしてかざりさんはできたのか?
止血<腕を強く絞め失血を防ぐ>
CAT(Combat Application Tourniquet)というバンドを使う。出血部位の根元を締めて血を止めなければ失血死を招く恐れがある。
心肺蘇生<胸骨圧迫とAEDで蘇生>
「強く、速く、絶え間なく」胸骨圧迫を行う心肺蘇生法。「戦闘地域だけでなく、日常でも役立ちますね!」とかざりさん。
担架搬送<いち早く隊員を救急車まで搬送>
シミュレーション・ラボで銃撃や爆発の音、煙、閃光など、緊迫した状況をつくり出した中で、隊員の救護と搬送を行う。訓練では血のりを使ってさらにリアルにすることも。
隊員も演者として出演!和やかに行われた撮影
東京都世田谷区。陸上自衛隊三宿駐屯地内にある、陸上自衛隊衛生学校。負傷した隊員の治療や医療施設への搬送などを行う衛生科隊員に対して、必要な知識、技能を修得させるための教育訓練を行う教育機関。国家資格である救急救命士や臨床検査技師の養成を担いつつ、戦闘地域で負傷した隊員を救護する「第一線救護」の教育も実施している。
今回の動画は、かざりさんが自衛隊式の救急法を体験したりレクチャーを受けながら、衛生学校について紹介を行うのがメインとなる。撮影は、事前に学校の広報官・教官と動画スタッフがどのような場面を撮影したいか打ち合わせを行い、現場の下見の後スタートした。
2人のカメラマンが、主に2台のカメラと、小型カメラも使いつつ撮影を進行。かざりさんのほか、衛生学校教官・小津修太郎1等陸尉をはじめとする隊員たちも出演。ときには、かざりさんを前に緊張した隊員が説明のための大切なセリフをかんでしまい、撮り直しになることも。現場は、真剣ながらも和やかな雰囲気で撮影が行われた。
「シミュレーション・ラボ」で戦闘時の救護を体験
取材当日のクライマックスは、学校内にある「シミュレーション・ラボ」と呼ばれる施設での体験だ。そこは銃弾などが飛び交う戦闘地域といった高度なストレスがかかる状況をリアルに再現した環境下で、救護活動の訓練ができる施設。暗くした室内には大きな爆発音が鳴り響き、スモークやフラッシュの光で視界も奪われる状況。
ここで、負傷した傷口などがリアルに再現された人体模型を使った救護訓練を行う。キビキビとした隊員の動きを見学したあと、自らも訓練を体験した止血法を実践。終始緊張した面持ちを浮かべて臨んだ。
元自衛官タレントがYouTubeで伝えたいこと
隊員のテキパキとした動きや現場の緊迫感、かざりさんのリアクションなど、詳細はぜひ動画でご覧いただきたい。かざりさんに今回の撮影、そして編集のポイントを聞いた。
「動画は、視聴者が飽きないようにテンポ良く編集することを心掛けています。また、自分が『面白い!』と感じたシーンは必ず盛り込むようにしています。私の使命は、自衛隊の素晴らしさや強さを伝え、少しでも自衛隊に興味を持ってくれる人を増やすことだと思っています。微力ながら、自衛隊広報の手助けができたらと思います!」
完成した動画はこちら!
(MAMOR2021年5月号)
<文/臼井総理 写真/増元幸司 撮影協力隊員/小津修太郎1等陸尉、菅原和広2等陸尉、熊谷崇之2等陸曹、古川美紀2等陸曹、大塚健太陸士長、杉浦舞陸士長、松村夢希菜(ゆきな)陸士長、芳賀爽平1等陸士 動画制作/高島瑛彦、かざりぷろじぇくと>