日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。
今回は青森県大湊基地の護衛艦『おおよど』よりボリュームたっぷり「彩りカツレツ丼」を紹介します。食べればパワーアップすること間違いなしの丼です。
本州以北の海洋をまもる『おおよど』
青森県むつ市にある海上自衛隊大湊基地は本州最北端となる下北半島にあり、近郊には本州最果ての駅といわれるJR「大湊駅」と、日本三大霊場の1つ「恐山」があります。1902年に開庁した旧海軍基地を継承し、青森県以北の海域(太平洋、日本海、オホーツク海)と、2つの重要な国際海峡(宗谷、津軽)を警備する北の要です。
大湊基地には大湊地方総監部、大湊警備隊などと共に護衛艦が配置されており、第7護衛隊、第15護衛隊、大湊海上訓練指導隊が所在しています。その第15護衛隊に属しているのが護衛艦『おおよど』です。『おおよど』は91年に就役し、長崎県佐世保地方隊第34護衛隊に編入。その後、変遷を経て2011年3月、第15護衛隊に編入され、定係港(当該艦艇の籍が置かれている地方総監部の港)が青森県の大湊となり、同地に転籍しました。
全長109メートル、最大幅13・4メートル、乗員約120人で海洋安全保障の確保、関係国との共同訓練、災害派遣活動などで活躍しています。
多彩な食材と味付け「彩りカツレツ丼」
今回紹介する「彩りカツレツ丼」は『おおよど』の隊員食堂で人気のメニュー。カツはカレー風味のみそ味、ワンタンはガーリック風味のマヨネーズ味、ウインナーは黒コショウのあっさり味、ミートボールはゴマ油の風味を加えたケチャップ味と、異なる味がいっぺんに味わえる欲張りな丼です。市販の総菜や冷凍食品もこんなふうにちょい足しをすれば、おいしさが格段にアップ。家庭でも応用できそうです。
栄養バランスばっちり、長い航海に最適
隊員たちに食べた感想を聞いてみると……
「長い航海で疲れたときでも丼ならサクッと食べられます。彩りがよいので見ても楽しめ、味でも楽しめ、お得感満載の1品」【3曹 男性 30代】
「カレーの風味と香ばしさがおいしさを引き立てています。味が濃くなりがちな丼ですが、トマトの酸味で後味すっきり」【3曹 男性 20代】
「普段の食事は栄養バランスを考えないので、艦で出されるこの丼は肉も野菜もしっかり取れている実感があって良いです」【士長 男性 20代】
調理担当にお話を伺いました
【護衛艦『おおよど』 2等海曹 新谷尚之】
出身は青森県黒石市です。陸上部隊での勤務が1度ありますが、ほぼ艦艇勤務です。『おおよど』の給養員長としては着任して2年目になります。出航すると家に帰れないし、自由が利かない生活になるので、隊員にとって毎回の食事は非常に大きな意味を持ちます。
作る側としては予算があるため、決まった食材や調味料を使って味付け、盛り付けに工夫を凝らし、どんなことでもいいので「あれ、今回は違うな」と感じてもらえればうれしいです。紹介した丼も、いろいろな食材、いろいろな味を1度に楽しめると好評です。
彩りカツレツ丼のレシピを紹介
<材料(2人分)>
[トンカツ]
トンカツ用ロース肉(衣のついた市販品):2枚(200g)
揚げ油:適量
<A>
トンカツソース:大さじ2
みそ:大さじ1
砂糖:大さじ11/2
カレー粉:小さじ1
ブランデー(なければ酒、ワイン):少々
[ワンタン]
ワンタン(肉入り・市販品):4個
揚げ油:適量
<B>
砂糖:大さじ1
マヨネーズ:小さじ2
オイスターソース:小さじ1
黒コショウ:少々
ガーリックパウダー(あれば):少々
[ウインナー&パプリカ]
ウインナーソーセージ:4本
パプリカ(黄・細切り):1/8個
<C>
サラダ油、黒コショウ:各少々
[ミートボール]
ミートボール(市販品):4〜6個
<D>
トマトケチャップ:大さじ1
砂糖:小さじ1
ゴマ油:少々
ご飯:2杯分
[付け合わせ]
目玉焼き(チリパウダー、ドライパセリをふったもの)、ブロッコリー(さっとゆでてバターで炒め、塩をふったもの)、レタス、紫タマネギ(それぞれ千切りにして水にさらし、水気をきったもの)、キュウリ
(斜め薄切り)、ミニトマト
<作り方>
1:衣のついたロース肉は揚げ油で揚げ、油をきる。混ぜ合わせたⒶを表面に塗りつけ、フライパンで軽く焼き目をつける。
※揚げてあるトンカツの場合は耐熱容器にのせ、ラップをせずに電子レンジ(500W)で1分弱温めたあと、オーブントースターで1分弱温めるとよい。
2:ワンタンは揚げ油で揚げ、油をきって冷ます。冷めたら、混ぜ合わせたⒷをからめる。
3:フライパンにⒸのサラダ油を熱し、ウインナーとパプリカを入れ、焼き目をつけて黒コショウをふる。
4:③のフライパンをペーパータオルでさっと拭き、Ⓓのケチャップと砂糖を入れて火にかけ、温める。ミートボールを加えてからめ、仕上げにゴマ油をたらす。
5:器にご飯を盛り、①のトンカツを切って盛り、②、③、④と付け合わせを彩りよくのせる。
※隊員食堂で作られているレシピをもとに編集部で家庭向けにアレンジしました。
『おおよど』流トンカツの切り方
一般家庭では食べやすく切って盛るが、艦では包丁で切り離してしまわず、キッチンバサミで下半分の5、6カ所に切り込みを入れる。こうしておくと、大量調理でも盛り付けが楽な上、すぐに切り離すことができて食べやすい。紹介したみそ味のほか、乗員が飽きないようにトマトソース味、焼き肉のタレ味などトンカツのバリエーションは豊富。
(MAMOR2021年4月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/林紘輝(扶桑社) 写真提供/防衛省>