陸、海、空自衛隊の42基地にある163航空保安施設の飛行点検を実施している飛行点検隊。この飛行点検隊がこれまで運用してきた機体を振り返ってみよう。部隊の歴史を築いてきた歴代の機体を比較して点検隊の任務を、より理解してほしい。
飛行点検隊の誕生
飛行点検隊の前身となる航空保安管制気象群飛行点検隊が誕生したのは1958年。航空自衛隊の府中基地で編成されたのが飛行点検隊の歴史のはじまりだ。その翌年、鳥取県から飛び立ったアメリカ・カーチス・ライト社製のC−46Dによって飛行点検業務が開始された。また、同年には部隊運営の拠点を府中基地から木更津基地へと移駐している。
YS-11FCが引退。飛行点検機は新時代へ
64年にはアメリカ・ロッキード社製のT−33Aによる飛行点検を開始。68年に現在の母基地である入間基地に移駐した後の71年、同隊が運用する初の国産機としてYS−11FCがデビュー。75年には三菱重工業製のMU−2Jの運用が開始された。
飛行点検隊がそれまで使用していた航空機はアメリカ製のC−46DとT−33Aだったが、94年にイギリス製のビジネスジェット機が導入された。これを点検機として改造したU−125による任務が始まった。そして、2020年にU−680Aが就役したのと入れ替わるようにYS−11FCが引退を迎えた。U−125とU−680Aのツートップによる時代が幕を開けたのである。
歴代の飛行点検機を振り返る
C-46D(1958~1977年)
アメリカのカーチス・ライト社が製造した輸送機。飛行点検隊が創設された1958年に導入。電波妨害装置を搭載した訓練機として使用された機体もある。
<SPEC>
全幅:32.9m/全長:23.3m/全高:6.6m/重量:13.6t/全備重量:20.4t/最大速度:約395km/h/航続距離:約2200km
T-33A(1964~1996年)
アメリカのロッキード社が製造した練習機。空自の創立時(1954年)に導入されたが、飛行点検機として運用されたのは64年から。96年に退役した。
<SPEC>
全幅:11.9m/全長:11.5m/全高:3.6m/重量:4.3t/全備重量:6.9t/最大速度:約850km/h/航続距離:約2000km
YS-11FC(1971~2021年)
日本航空機製造が開発した、戦後初にして唯一の国産旅客機。1965年当時は輸送機として空自に導入されたが、その後飛行点検機として改造され、71年に運用を開始した。
<SPEC>
全幅:32.0m/全長:26.3m/全高:8.98m/航続距離:約2300km/最大速度:約490km/m/乗員:5人
MU-2J(1975~1994年)
三菱重工業が製造した、日本初のビジネス用の双発プロペラ機。高速性と機動性が評価され、空自で飛行点検機として採用された。
<SPEC>
全幅:11.94m/全長:12.03m/全高:4.17m/運用重量:約2.9t/最大離陸重量:約4.7t/巡航速度:約525km/h 航続距離:約2500km
●スペック欄にある「全備重量」は、燃料・乗員・乗客など規定された搭載物を全部搭載したときの航空機の総重量を指す
(MAMOR2021年7月号)
<写真/荒井健 文/魚本拓>