教材の電子化で学習効率がUP!学生が自学自習しやすく、座学も大幅に変化
高度なシミュレーターの充実も教育の効率化に寄与するが、学生にとって身近な「教科書」の変化もまた大きい。
自衛隊の各教育部隊でも、近年、教材の電子化が急ピッチで進められている。
ノートパソコンやタブレットなどで利用できるこれらのデジタル教材は、AEC(Advanced Education Contents)と呼ぶ。AECには、自動音声によるスライドの読み上げ機能や、航空機の内外を3Dモデルやパノラマ映像、アニメーションで見ることができる機能など、紙の教材ではできなかった豊富なリッチコンテンツが特徴。
コックピットの機器類やスイッチのレイアウトを立体的に確認できたり、キャビンから見えない箇所の配線や機器類の位置関係を視覚的に理解できたりするため、従来のように都度、実機を見ながら確認しなくても理解が進むというメリットがある。

AECを活用し、実機訓練につながる基礎を学ぶ座学。従来の教材よりも高い学習効果が見込まれる
さらには、全学生の学習過程や履修状況なども一元的にシステムで管理している。
教官側はもちろん、学生本人も教育の進捗や自分の弱点把握などができるようになったことで、自主学習もしやすくなり、限られた期間での学習レベル底上げにつながっている。
取材スタッフが現代風だと感じたのは、自動音声の読み上げや動画再生を「倍速」でできること。
昨今、若年層の間では、テレビや映画、ネット動画など、映像の元々の速度を変えて再生・視聴し、効率的に情報を得る傾向が強まっている。
AEC導入当初は等倍再生しかなかったというが、学生の要望で倍速再生を導入。多くの学生が利用する機能となり、好評だという。
シミュレーターの高度化で実機でのフライトは減少
教育「飛行」隊なのだから、実際に航空機に乗ってバンバン飛ぶのだろう……、と想像する読者も多いだろう。
ところが、最近の教育は、以前と比べて実機で飛ぶ回数は減り、教育期間自体も短縮されている。
しかし、安心してほしい。卒業する学生たちの技量は、以前と変わらず高いレベルにあるのだ。
第203教育航空隊で行うクルーの育成は、まずP−1という機体そのものはもちろん、搭載されている各種装備や、実際に行うミッションに関する知識を会得するところから始まる。いきなり実機に乗って飛ぶことはできないのだ。
こうして、機体や任務の概要を理解し、機器の操作法を学習して基礎を固めるまでは座学がメインとなる。座学では、AECの活用に加え、教官たちが体験した「現場での経験」をインプットさせることで、効率化だけではない教育効果を実現している。
その後、シミュレーターでの訓練を実施し、実際の操作手順を身に付けていく。知識が定着し、操作への習熟度が高まったところで実機へ。
地上で「できること」を増やせるようになったため、逆にいえば実機での訓練は「空中でしか学べないこと」に集中できるようになった、ともいえる。

教官と共に飛行訓練に臨む操縦士の学生。飛行訓練は、座学やシミュレーター訓練で培った知識と技量を実機で確認する場だ
シミュレーターの高度化によって、誤って航空機や搭載装備を損傷させたり、事故を起こしたりするリスクをなくし、何度でも訓練を繰り返せる。時間や天候不良に左右されず訓練が進められることも大きい。
また整備などのタイミングで「乗れる機体がない」という事態も避けられる。
こうした変更によって、P−3C時代よりも課程によって1~5週間ほど教育期間は短縮。一方で卒業時点の「練度」は従来と変わらない、もしくはそれ以上だという。
最終的に現場部隊で実機に乗りつつ錬成を行える段階にまで、効率よく教育できる。少子化に伴う人材不足のなか、極めて有効な方法だろう。
重要な役割を担うP−1のクルーをいかに効率よく、かつ質を落とさずに育成するか。その答えの一つが、ここ第203教育航空隊の教育として表れている。
(MAMOR2026年4月号)
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<文/臼井総理 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです
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