OFT:天候も故障も再現!操縦は「地上」で鍛える
P-1課程教育用機材の一つ目は、「操縦訓練装置」(OFT=Operational Flight Trainer)、いわゆる「フライトシミュレーター」だ。

操縦訓練装置(OFT)
OFTの操縦席などは、油圧で制御されるアームの上に付いている。操作の状況に合わせて実機同様に傾いたり揺れたりする。慣れるまでは酔う隊員もいるという
実物のP-1そっくりに造られたコックピットには、操縦員の2人(主操縦士、副操縦士)と機上整備員の席が設けられているほか、その背後には飛行する空域や時間、天候など、訓練するシチュエーション(状況)を設定する教官の席もある。

OFTの操縦席後方には、状況を付与する役の教官用のモニターがある。操作の状況をモニタリングしたり、リアルタイムにシミュレートする環境を設定したりできる
コックピット内の操作パネルやスイッチ、モニター、操縦かんなどはどれも本物と同じ。操縦かんを操作するときに手に感じる感触や抵抗もほぼ同じになるように再現されているという。
実機の操縦経験が豊富な隊員に聞いてみたところ、「本物とまるで変わらないので、シミュレーターから実機に移行しても戸惑いません」と太鼓判を押すほど。
最新のシミュレーターらしく、コックピットから見える風景を映す画面は「超」きれい。下総航空基地やその周囲はもちろんのこと、訓練で使うさまざまな空域の「地形」もかなりリアルに再現されている。
飛ぶときの目印となるように、一部の建物をあえて目立つ色に変えていたり、大きめに表示させているそうだ。

実物同様のコックピットで操縦訓練を行う学生と、後ろで見守る教官。ところどころ短い言葉で的確なアドバイスが入る
OFTの真骨頂は、「実機では危険な緊急事態の対応訓練」や「めったに起こらない危機的状況への対応」だ。安全な訓練で、実機同等の経験が積めるのは大きい。
時間帯や天候はもちろん、機体の故障など何かしらトラブルがある状況もリアルに再現でき、安全に訓練が進められるOFTは、操縦員たちの教育になくてはならない機材だ。
PTT:レーダー、ソナーなどの操作を訓練する装置
2つ目のシミュレーターは、「個別訓練装置」(PTT=Part Task Trainer)だ。
簡単にいえばP-1に搭載されている音響センサー(ソナー)やレーダー、赤外線センサー、磁気探知機などのさまざまな機器操作に習熟するための装置だ。
主に、戦術航空士や音響員、非音響員がそれぞれの役割に応じた機材操作を訓練する。

個別訓練装置(PTT)
PTTで教官から指導を受ける学生。実機と同じ装置でシミュレーションすることで、実任務同様の訓練成果を見込むことができる(写真提供/防衛省)
PTTは、「戦術個別訓練装置」、「音響個別訓練装置」、「非音響個別訓練装置」に分かれており、2席のコンソールが備わる。手元のタッチパネルなどの操作環境は実機と同等で、これを使ってプログラム入力などが行える。
例えば、学生が疑似的にソノブイを操作して水中の音を探知し、潜水艦の存在を探るなどといった一連の演練を通じ、操作の「勘」を養っていく。
操作手順に慣れたら、教官の監視のもとで訓練を繰り返す。
実機ではめったにできない失敗も、シミュレーターなら安全に積み重ねられる。こうして、できるだけ多くのケースに当たり、技量を磨いていくのだという。
なお、PTTはP−3C時代からあるが、P-1導入に当たってよりリアルで現実感のあるシステムに変更された。
WTT:クルー一丸となって仮想任務に挑戦
最後に紹介するシミュレーターは「戦術訓練装置」(WTT=Weapons & Tactics Trainer)という。
これは、操縦士、戦術航空士、音響員、非音響員といったP-1クルーを目指す大部分の学生が集合し、実際の任務の流れを総合的に訓練できる装置だ。個々の技術を磨いた後、一つのチームとして任務に挑むための「総仕上げ」の訓練が行える。
実任務さながらの状況下で、クルー間の連携や判断力を高めることが目的だ。

戦術訓練装置(WTT)
より実践的な訓練を行えるWTTでは、担当任務だけではなく、他のクルーとの連携も重要だ。訓練終了後には、教官から細かな指摘が入る(写真提供/防衛省)
P-1の配置を模した訓練キャビンには、トータル8人の学生が同時に仮想ミッションに挑める複数のシミュレーターが連接され、一元的に生成される自機や目標、環境などのデータを利用することで、一貫性のあるシミュレーションが可能な、非常に高度な訓練機材だ。
(MAMOR2026年4月号)
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<文/臼井総理 写真/星亘(扶桑社)>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです
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