•  「知能」と「情報」の2つの意味をもつ「インテリジェンス」。防衛とはどのような関係をもっているのでしょうか?

     マモルの広報アドバイザー・志田音々さんが日本大学危機管理学部教授の小谷賢さんに聞いてみました。

    【志田音々さん】
    タレント、女優。1998年、埼玉県出身。2023年から防衛省広報アドバイザー(注)を務める。

    【小谷賢さん】
    日本大学危機管理学部教授。専門はイギリス政治外交史やインテリジェンス研究。著書に『日本インテリジェンス史――旧日本軍から公安、内調、NSCまで』(中央公論新社)など。

    (注)防衛省・自衛隊の各種広報活動に協力することを目的として2023年に設けられた制度のこと

    インテリジェンスってなに?

    ロンドンにあるMI6が入居するビル。スパイ映画『007シリーズ』では、主人公のスパイがMI6所属という設定のため、映画内にも登場する 写真/Laurie Nevay

    志田音々(以下「志田」):最近、防衛関連の報道で「インテリジェンス」という言葉をよく耳にします。直訳すると「知能」ですが、防衛と関係あるのですか?

    小谷賢(以下「小谷」):インテリジェンスには「情報」という意味もありますが、報道されているのは、国を守るために収集した生情報を、分析、加工した情報を指す軍事・安全保障上の概念、または、その活動を行う機関を指しています。

    志田:なるほど。昔からあるのですか?

    小谷:インテリジェンスの基本的な考え方は、敵の秘密を知り、有利に戦うという発想ですから、古代エジプトやメソポタミア文明にもその記録が残っていますし、旧約聖書にもスパイ活動についてのエピソードが載っているくらいで、スパイは、人類で2番目に古い職業とまでいわれています。

    志田:スパイと聞くと、天井からロープでつり下がって機密を盗んだりするシーンが思い浮かびます。

    小谷:インテリジェンスの基本は公開されているニュースを丹念に集めて、分析することです。イギリスのMI6(秘密情報部)の日本担当部員が、日本の政治情勢に限らず芸能人のゴシップにも詳しいので、理由を聞くと、彼はロンドンにいながら毎週、日本の週刊誌を読んでいると言っていました。

    世界のインテリジェンス機関について教えて!

    レセプションなどを通じて各国の武官と交流を図りながら、情報収集に努める防衛駐在官(右)。高いコミュニケーション能力が求められる 写真提供/防衛省

    志田:インテリジェンス機関で働くには、資格はいるのでしょうか?

    小谷:特に資格はありませんが、人から情報を引き出すためのコミュニケーション能力や語学力は必要とされます。海外のインテリジェンス機関では、格闘技よりも会話力の訓練に力を入れているそうです。

    志田:世界にはどのようなインテリジェンス機関があるのですか?

    小谷:アメリカには国家情報長官が統括するCIA(中央情報局)、司法省のFBI(連邦捜査局)、国防総省のNSA(国家安全保障局)など18もの情報機関があり、その予算は10兆円を超えています。

     イギリスにはMI6のほかにMI5(保安局)、DI(国防情報部)などがあり、アメリカがテクノロジーに秀でているのに対し、伝統的に人による情報収集力が強いですね。

     イスラエルではモサド(諜報特務庁)やアマン(軍参謀本部諜報局)などで2万人近くがインテリジェンスに携わっています。

     ロシアは秘密工作に優れ、中国はサイバー攻撃機関だけで数万人も職員がいるそうです。

    志田:日本はどうなっていますか?

    小谷:日本は内閣情報調査室をはじめ警察庁警備局、公安調査庁、そして防衛省にも情報本部があります。また、防衛駐在官が海外の軍事関連の情報収集にあたっています。インテリジェンス・コミュニティー全体の予算はその国の軍事費の5~10パーセントの規模が普通ですが、日本の場合は2パーセント程度です。

    志田:ちょっと心もとない気がします。

    小谷:現在、日本のインテリジェンス能力を強化する法案について、国会などで議論されているので、志田さんたちが、よく耳にするようになったのではないでしょうか。

    志田:ありがとうございました。最後に私事で恐縮ですが、今回で、この連載は最終回なんです。最後にとても分かりやすいお話を聞けてうれしかったです。イギリスの諜報部員が、“あのスキャンダル週刊誌”を毎号読んでいるなんて、驚きでした。私も載ることがないように気を付けます(笑)。

    小谷:ハハハ。連載終了は残念ですね。お疲れさまでした。

    (MAMOR2026年5月号)

    <文/古里学 写真/星亘 (扶桑社・人物)>

    志田音々のねぇねぇ防衛のこと、もっと教えて!

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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