• 「右向け~、右!」。子どものころ学校で、号令になじんだ人も多いだろう。

     号令とは、集団に特定の動作を行わせるための指示のこと。自衛隊にも、さまざまな号令があり、訓練の中で受け方や発し方を身に着けていく。

     こうした訓練の一部を紹介しよう。

    自衛隊の“号令”は予令と動令に分かれる

    隊員に号令する自衛官。「前へ」の予令でこれからする行動を示し「進め」の動令で隊員を動かす

    「回れ、右」、「前へ、進め」など学校の体育や行事などで集団行動をするための号令に触れたことはあるだろう。列を整え、クラス単位で行進などをする際にかけられたあの号令、自衛隊でも基本的な部分は同じなのだ。

     詳しく説明すると自衛隊の号令は、一部を除いて「予令」と「動令」に分かれている。
     
     予令とは、実際に動く前に発される予告で、これを聞いて受け手は次にどんな動作を行うべきかを理解する。

     そして次の「動令」を受けて実際の動作を行う。これによって、集団が一斉に行動するための準備ができ、行動を円滑に実施できるのだ。

     また自衛隊の号令は、発声にも特徴がある。予令は「明瞭に、長く」、動令は「短く、強く」発声する。

     例えば「前へ進め」なら、予令は大きな声で「まえへーー」のように長く発声し、動令は適当な間隔を空けた後「すすめっ!」と短くはっきり発音する。これは、大勢の隊員に対して、どう行動するかを明確に指示を伝えるためだ。

    号令の教育訓練は、まず受けることから

    画像: 【号令:休め】大声で号令する指揮官役の隊員。大声を出しすぎて声を枯らす隊員もいる

    【号令:休め】大声で号令する指揮官役の隊員。大声を出しすぎて声を枯らす隊員もいる

     入隊式を終え、自衛官としての第一歩を踏み出した自衛官候補生に最初に行われる教育が「基本教練」。その名の通り、自衛官として勤務するための「基本」を身につける訓練だ。

    「気をつけ」の号令で取る「不動の姿勢」に始まり、「敬礼」、「行進」、「駆け足」など、指揮官の号令の下、基本的な動作を寸分の違いもなくできるよう訓練する。

    画像: 【号令:足踏み 進め】自分の出した号令どおりに隊員は動いているか号令後は受け手の動きも確認する

    【号令:足踏み 進め】自分の出した号令どおりに隊員は動いているか号令後は受け手の動きも確認する

     こうして学んだ各動作は、後に応用として学ぶ行動、例えば小銃を使った射撃や戦車の砲撃などをはじめとする戦闘などの基礎にもなっているため、手を抜くことはできない。

     退職するその日まで「使わない日はない」といわれる各種動作を、号令と共に体に染み込ませていくのだ。

    階級が上がるにつれ、号令を発する訓練も

    画像: 【号令:右へ ならえ】指示は適切か、声が全員に届いているかなど、号令を何度も繰り返し身に付ける

    【号令:右へ ならえ】指示は適切か、声が全員に届いているかなど、号令を何度も繰り返し身に付ける

     号令は受けるばかりではない。自衛官として経験を積み、部下を指揮する立場に変わると、号令を発することを覚えなくてはならない。

     入隊間もない自衛官候補生の立場であっても、時として仲間をリードする立場を経験することもあり、号令をかける側の訓練を行う。

    画像: 【号令:になえ 銃】昇任試験で指揮官役の隊員は、これから出す号令の所作などの手本を見せ伝える

    【号令:になえ 銃】昇任試験で指揮官役の隊員は、これから出す号令の所作などの手本を見せ伝える

     陸上自衛隊には指揮官として号令をかける試験がある。士長から3曹に昇任するための「曹昇任試験」だ。試験課目に「分隊教練」があり、号令で分隊を指揮できるかを試される。

     これは、駐屯地の運動場など所定のエリア内で10人程度の隊員を号令で動かすというもの。このとき受け手役の隊員は当たり前だが「命令通りにしか動かない」。

    画像: 【号令:速駆け 前へ】戦闘訓練でも号令が使用され、適切な動作を身に付ける

    【号令:速駆け 前へ】戦闘訓練でも号令が使用され、適切な動作を身に付ける

     指揮官と受け手の隊員の距離も4・5メートルと決まっており、全員に号令を届かせなければならない。号令を間違うとあらぬ動作で隊員の動きがバラバラになって隊列が乱れてしまう。

     曹昇任試験が近づくと、全国の駐屯地では先輩隊員が号令の指導をする姿も見られる。

    (MAMOR2026年1月号)

    <文/臼井総理 写真提供/防衛省>

    自衛隊の号令~聴け!

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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