『もがみ』の無人機雷排除システムは、10年以上の月日を費やして研究開発された新たな装備品だ。だから、それを適切に運用していくためには、訓練を積み重ねる必要がある。
2025年6月15 、16日に硫黄島の周辺で行われた運用試験の成功は、このシステムを使いこなすために実施されてきた訓練のたまものだ。
運用の練度を向上させるために、日々、行われている訓練の密着した。その全容を紹介しよう。
後部ハッチを開き処分挺を海へ投入

①後部ゲートが開き、処分艇(通称ベイビー)が海上へ出ていく
訓練ではまず、機雷などの爆発性の危険物があると想定した海域へ『もがみ』が進出。
『もがみ』のソナー・システムやUUV(Unmanned Underwater Vehicle:自律型水中航走式機雷探知機)による機雷の位置などの探索結果を受け、USV(Unmanned Surface Vehicle:機雷処分用水上無人機)の発進準備に入る。『もがみ』の後部ゲートを開き、最初にゴムボートの「処分艇」が海上へ投入された。
USVが土台とともに移動し海上へ発進

②USVに掃海員が2人搭乗し、後ろ向きで『もがみ』から出航した
続いて「クレードル」と呼ばれる、複数のタイヤを設置した土台の上に固定されたUSVが、開かれた後部ゲートの近くまでゆっくりと移動していく。
それから、掃海士(注1)の「USV投入!」の号令とともにタイヤのブレーキが解除され、その回転によってUSVがスライドし、海上へと発進していった。
(注1)掃海機能のある艦艇で機雷探知機、掃海具などの操作や、機雷の処分および機雷の調整、器材の整備などを指揮する隊員
目標の海域近くまで隊員が操縦して航行

③機雷があるとされる海域の近くまでUSVを航行させる
訓練が行われた日は快晴で、視界は良好。波も穏やかで、USVは安定した航行ができそうだ。だが、USVは危険物である弾薬を搭載している。
まだ試験段階のため、今回の訓練では掃海員(注2)2人がUSVに搭乗し周囲に障害物がないかなどを確認しながら、慎重な操縦による安全な航行で、目標とされる海域を目指した。
(注2)機雷探知機、掃海具などを操作し、機雷の処分を行う隊員
システムの機器を準備し隊員が処分艇に移動
④目標の海域まで来たら掃海員はUSVから離脱する
USVが目標の海域の近くまで到着すると掃海員たちは、USVに搭載されたカメラや、『もがみ』と通信を行う無線などをセッティングし、それらに不具合がないかなどを最終チェックする。
⑤迎えにきた処分艇に掃海員は乗り移る
そうして準備が整ったら、処分艇に乗り移る。ここからが、無人化されたUSVによる、機雷排除システムの運用訓練の本番だ。
無人のUSVで機雷探索を開始

⑥USVは完全に無人になり機雷のある場所まで自走を始める
先行したソナー・システムやUUVの機雷探索の情報を基に、無人航行のUSVによる、さらに詳細な機雷の位置を特定するための探索を開始。
『もがみ』の情報が集中し、指揮・命令を行う戦闘指揮所にいる掃海員が、USVに搭載されたカメラから送られる映像を確認しながら、遠隔操縦で探索を行う。
戦闘指揮所からの操作の指示と、USVから送られてくる映像にはわずかなタイムラグがあるため、遠隔操縦には習熟が必要だという。
機雷の位置を特定しEMDを海中へ投下

⑦水中を自走するEMD(写真上)が機雷(写真下)に近づいた(写真は今回の訓練のものではありません)
『もがみ』の戦闘指揮所からの遠隔操作により、USVが海上の情報を収集した結果、機雷を発見し、その位置の特定に成功。事前に『もがみ』の対機雷戦ソナー・システムやUUVによって識別された機雷を処理する方法、「掃討」の準備に入る。
⑧『もがみ』の指揮所からモニターを見ながらEMDを操作する隊員(写真は今回の訓練のものではありません)
USVからEMD(Expendable Mine Disposal:自走式機雷処分用弾薬)を海中へ投下し、装備されたカメラやソナーによって、目標に接近していく。
EMDが機雷に接近し爆破
⑨見事に機雷を処分し、大きな水柱があがった(写真は今回の訓練のものではありません)
目標の機雷まで接近したEMDは、『もがみ』からの遠隔指令により発火、機雷を爆破する。爆破による水柱を掃海員が視認して終了となる。
2025年6月に実施された硫黄島での運用試験では、機雷のある海域へのUSVの航行から、EMDの投下と目標への接近という、一連のオペレーションが指揮所からの遠隔操縦で行われ、機雷の爆破に成功した。
USVを揚収して終了

⑩無事帰還し『もがみ』に揚収されるUSV
機雷処理のオペレーションを終えたUSVに再度、掃海員が乗り込み、『もがみ』へと帰還。開かれた後部ハッチから、掃海員の操縦でUSVをクレードルに乗り上げさせる。
次に、クレードルに設置された複数のタイヤを回転させてUSVを引き上げて揚収し、艦船の内部へ移動。それから、処分艇も『もがみ』に揚収し、訓練の終了となった。
(MAMOR2025年12月号)
<文/魚本拓 写真/山川修一(扶桑社)>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです




