夜間射撃訓練、夜間哨戒訓練といった、自衛隊が行っているいくつかの夜間訓練を紹介しよう。
わが国を狙う者は時間を選ばず侵略してくるはずだ。夜の闇に紛れて進撃してくることも予想される。そこで、夜間でも戦って守れるように、日ごろから訓練を積んでおくことが重要なのだ。
海上を2機で飛ぶ夜間哨戒訓練

護衛艦には、哨戒ヘリコプターが離着艦できる飛行甲板がある。夜間や強風時などのさまざまな状況でも訓練する
正体不明の艦艇や潜水艦の領海への侵入を阻止することは、海に囲まれたわが国の国防の要だ。その最前線を担う海上自衛隊の哨戒ヘリコプターは警戒・監視から救難・救助から輸送など、多彩で濃密な訓練を日々行う。
その中でももっとも困難なのが夜間の対潜水艦戦の訓練だ。漆黒の闇の中を2機で飛び、海上約20メートルの高さでホバリング、ソナーを海中につり下げ潜水艦の位置を探るなど、瞬時の判断を求められる。
「刻々と情勢が変化する哨戒任務において、判断の迷いや遅れは危険な事態にもつながりかねないため、集中しています」と操縦士の隊員は話す。
暗闇で敵を撃つ、夜間射撃訓練

暗闇で射撃を行う自衛隊車両。夜間は射撃方向が分かるように光る弾薬を使用する
夜間は視認性が下がり距離感がつかみにくくなる。敵からも見つかりにくくなる一方、敵を見つけることも難しくなる。
そうした中で的確な攻撃をするために必要なのが夜間射撃訓練だ。訓練を指導する教官は、「射撃場で行う訓練だけではなく、あえて照明のない屋外で射撃訓練を行うこともあります」とその厳しさを語る。
敵の位置や射撃方向を見えるようにするため、照明弾を打ち上げることもある
隊員は暗視スコープをつけ、夜間でも弾丸が発光して弾道が確認できるえい光弾で射撃を行う。また上空に照明弾を打ち上げ、その明かりが照らす一瞬の間で攻撃目標を定めて戦車などで砲撃訓練をする。
短時間での目標の探知や設定、判断が求められるだけに、昼間以上に高度で困難な訓練である。
暗闇の中で続く、歩哨の夜間警戒任務

歩哨を行うために穴を掘って陣地構築を行う隊員。状況によっては、鉄条網などの障害構成を行うこともある
駐屯地や基地だけでなく、前線の陣地・宿営地など、部隊がとどまるところに必ずいるのが歩哨だ。敵の攻撃や襲撃を想定して、土のうや塹壕、鉄条網などが設置されることもある。
新隊員は教育の一環として、地面に穴を掘り、夜通し周囲を警戒する夜間歩哨訓練を行うが、極度の緊張を強いられる。
神経を張り詰めた状態が長時間続くが、歩哨訓練を終えた隊員は、「明け方になると疲労がピークに達しますが、敵を見過ごしてしまうと部隊に大きな被害が及ぶため集中力を欠くことができません」と話す。
不眠不休で行動するレンジャー課程の訓練

ロープを使い、ヘリコプターから目的地に降下するレンジャー隊員。暗視装置を付け淡々と降下していく
自衛隊屈指のハードな訓練といえば、陸上自衛隊のレンジャー課程の最終試験が有名だ。
約50キログラムの装備をかつぎ、道なき山中を地図とコンパスだけで3夜4日の間歩き続ける。その間は休憩中や日に1回の食事の時も片膝立ち、夜も照明は一切なしで仮眠は1日1時間。
冬季遊撃レンジャーの場合は雪を掘って雪洞を作り、その中でビバーク(宿営)する。
訓練を行った隊員は、「ただ歩くだけでなく、敵がいると思われるエリアを偵察したり、敵の拠点を襲撃する訓練も行います。夜間や未明などは、体力、精神力が限界ギリギリの状態になりますが、それでも隠密行動を徹底しなければなりません」とその苦労を語る。
夜中に障害を構築する夜間掘削訓練

暗闇の中、重機を操作して掘削作業を行う隊員ら。明かりは最小限にしているため、非常に視界が悪いなかでの作業だ
大型のパワーショベルやブルドーザーなどの重機を使い、陣地構築や障害の構成・処理を行う陸上自衛隊の施設科。夜間の戦闘に備えて暗闇の中で重機を操作する夜間訓練を実施する。
敵に見つからないように暗闇で作業しなければならないので、照明は豆電球ほどの必要最小限に留めている。
暗闇での作業について、「作業は基本的に無声で行います。重機の操作は普段から訓練を繰り返して暗闇でもできるようにしています」と隊員は語る。
月明りの下で航空機を修理・整備する野整備訓練

暗闇の中ヘリコプターの整備を行う隊員。夜間は工具などを紛失するリスクが高まる
戦場で故障や破損したヘリコプターはその現場で修理・整備したり回収しなければならない。そのための専門部隊が陸上自衛隊の航空野整備部隊だ。
航空機の即応性と可動率を上げるため、たとえ敵地でも任務の遂行が求められる。
その夜間訓練はヘルメットに取り付けたヘッドライトと懐中電灯だけで小さな部品から大型のエンジンまで、しかも音を極力出さず手信号で交換・整備を進める。
「暗闇では工具の置き場所をあらかじめ決めたり、部品に触って分かる目印を付けるなど工夫して、素早く的確に作業ができるようにしています」と整備担当の隊員は話す。
(MAMOR2026年2月号)
<文/古里学 写真/荒井健>
ー国防は眠らないー
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

