敵の攻撃によるダメージを素早く直す自衛隊の「復旧力」は、国際社会からも高く評価されている。近年では、海外に直接部隊を派遣するだけでなく、他国の人材育成や教育支援を通じた間接的な国際貢献にも注力している。
世界から求められ活躍の領域が広がり続ける自衛隊の復旧力に関する国際活動を紹介しよう。
国連主導の教育支援「TPP」で輝く自衛隊

2025年のカンボジアにおけるTPP事業で工兵隊員(左)に対し重機の操作訓練を実施する自衛官 写真提供/National Centre for Peacekeeping Forces, Mines and ERW Clearance(NPMEC)
1992年、自衛隊は初のPKO任務としてカンボジアへ陸上自衛隊施設部隊を派遣。道路や橋の建設、修理などを担い、自衛隊が作った道路は崩れないと高い評価を受けた。
近年は自衛隊のPKO活動に関わる高度な技術や経験を諸外国に伝えてほしいという国連の要望により「教育・訓練」を通じた支援に重点を置いている。

2025年にケニアで行われた工兵隊員に対するTPPで、自衛官は座学も担当。工程管理などの重要点を惜しみなく伝える
こうした取り組みで代表的なものが「国連三角パートナーシップ・プログラム(TPP)」だ。これは国連、支援国(日本など)、要員派遣国の3者が互いに協力し、PKOに派遣される要員の訓練などを行う枠組みのことで、2015年からアフリカで、18年からはアジアおよび周辺地域で実施されている。

2024年にウガンダで行われたTPP。野外における負傷者の救護について処置法などを教える自衛官 写真提供/TPP
国連の要請を受け、日本は開始当初から支援国としてTPPに参加。自衛隊から教官などを派遣し、PKOに参加する要員の能力向上を図っている。
1990年代に世界各国からPKOの支援を受け復興したカンボジアは、現在は世界各地にPKO要員を派遣してさまざまな支援をする側となり、国際社会で活躍している。
同国のPKO要員の育成はTPPの成果としても注目されており、教官を派遣した自衛隊の技術力や教育法は多方面から高く評価されている。今後も教育、訓練分野での国際貢献活動に期待が集まっている。
自衛隊の持つ高い技術を教える能力構築支援

モンゴル軍に対する測量の技術指導。現地のやり方も取り入れながら、自衛隊の測量技術を教える
TPPとは別に、防衛省が2012年から取り組んでいるのが「能力構築支援」だ。
これは平時から他国に対し安全保障や防衛関連分野における人材育成、技術支援を実施するもので、25年8月時点で19カ国、1機関に対して実施されている。

ラオス人民軍に対して実施した道路整備の能力構築支援。作業の仕上げとして実際に車両を通し、安全かつ安定した道路が構築できたかを点検する
支援分野は人道支援や災害救援、衛生、医学、艦船整備、航空救難、軍楽隊育成、サイバーセキュリティーなど多岐にわたる。
支援方法も、専門的知見を有する自衛官を現地に派遣して教育などを行うほか、対象国の担当者を日本に招いて研修を行うケースもある。
能力構築支援で多くの国から請われるのが施設科による土木関連の技術支援だ。
施設学校企画室能力構築支援班長入耒2佐。「日本人の丁寧さ、計画性の高さも教えたい」
施設科の能力構築支援を担当する陸自施設学校の入耒2等陸佐は、「支援対象国には段階に応じた教育を行い、関係性の強化や地域の安定に寄与します」と話す。
諸外国からは過去のPKOや災害派遣で発揮された陸自施設部隊の技術力、高い規律や計画性、作業に携わる隊員の礼儀正しさなどが評価され、予定通りに終了させる計画性は特に支援国に驚かれるという。
相手国の文化もくみ、心の交流も重要視する能力構築支援

パプアニューギニア国防軍の災害対処能力向上のため、重機類が故障した際の点検法などを教える自衛官
能力構築支援は相手国の文化や慣習を理解した上でのコミュニケーションが重要で、「スキルを教えることはもちろん、自衛隊のやり方を一方的に押しつけるのではなく、相手国の考え方、これまでのやり方を尊重しつつ最適な形で技術が根付くよう配慮します」と入耒2佐。
施設科による支援は、13年のカンボジアを皮切りに途切れることなく続き、対象国もモンゴル、東ティモール、パプアニューギニア、ジブチ、そしてTPPと拡大。各国から高い評価を受けているからこそ継続して求められている。
入耒2佐は今後の展望について次のように語った。
「日本一国だけでは、地域の安定を実現することはできません。今後も相手国の能力向上を通じて相互理解を深め、国際平和に貢献できるよう努めていきたいです」
元JICA(注)南スーダン事務所長が語る「なぜ自衛隊の復旧力はすごいのか?」

南スーダンの子どもたちと椅子を作る自衛官。製作した椅子は学校に寄贈された。このような心の交流も国際的な評価が高い
自衛隊は「国連南スーダン共和国ミッション 」(UNMISS)の一環として2012年1月から17年5月までアフリカ・南スーダンへ部隊を派遣。
14〜16年に元JICA南スーダン事務所長であった古川光明氏は、自衛隊の施設部隊と共にジュバ河川港の防護柵整備などの任務に携わった。
「自衛隊がすごいのは、どんな環境でも手を抜かないこと。50度にも達する猛暑でも誠実に取り組んでいたのは自衛隊のみ。現地の人々も感心していました」と当時を振り返る。
UNMISSにおける自衛隊の道路整備。酷暑のなか、スケジュール通りの計画的な作業が高い評価を受けた
ほかにもJICAと共同で支援した現地のスポーツ大会開催のためのグラウンド整備では、石ころだらけのトラックが自衛隊の精度の高い工事できれいに仕上がり、驚きの声が挙がったという。
「現地の方々に技術を教える『さくらプロジェクト』という取り組みでも自衛隊員に車両整備の教官として活躍していただきました。とても丁寧に教えてくれると評判でした」
【古川光明氏】1962年、大阪府生まれ。JICA南スーダン事務所長、静岡県立大学国際関係学部教授などを務め、現在、獨協大学経済学部教授 写真提供/本人
また、古川氏は他国のPKO要員と自衛隊の違いを、「全員が情熱を持って取り組んでいるのが違います。愚直に手を抜かず、精度の高い作業を続けたのは自衛隊だけと感じました」と話す。
さらに組織の柔軟性やチーム力の高さが印象的だったと続ける。
「準備の徹底、上下間の活発な意見交換など高い組織力が復旧力の秘訣と感じました」
最後に古川氏は今後の自衛隊の海外協力活動について次のように期待を込めた。
「日本には自衛隊だけが持つ能力、経験があります。『復旧力』を今後も海外で発揮してほしいと思います」
(注)正式名称はJapan International Cooperation Agency(独立行政法人国際協力機構)。開発途上国への国際協力を行い、経済や社会の発展、復興に貢献することを目的に技術協力や人材派遣などを実施している
(MAMOR2025年11月号)
<文/臼井総理 写真/村上淳(入耒2佐) 写真提供/防衛省(特記を除く)>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです



