•  侵略者から日本を守るために戦う自衛隊には、戦闘能力だけでなく、復旧力も必要となる。敵の攻撃により受けたダメージを、素早く直し、機能を回復させて、再び戦うためだ。

     では、実際にどのようなリカバリー力を持っているのか。「艦艇の浸水」や「戦車のかく座」など受けたダメージのシチュエーションごとに、代表的な技術のいくつかを紹介しよう。

    砲撃で浸水した艦をわずか30分で修復!艦艇乗員が総力で被弾箇所にふたをする

    画像: 艦艇内を模した訓練場で浸水を再現。1カ所でも穴が開くと勢いよく海水が流れ込み一瞬にして沈没する恐れがある。復旧作業は1秒を争う

    艦艇内を模した訓練場で浸水を再現。1カ所でも穴が開くと勢いよく海水が流れ込み一瞬にして沈没する恐れがある。復旧作業は1秒を争う

     敵から受けた攻撃で艦体に穴が開きそこから浸水した場合、1秒でも早くふさぎ、沈没を防がなくてはならない。

     被弾箇所の大きさや浸水の状況を確認した第一発見者は、付近にいる隊員に声を掛け作業員を集める。そして居室にある毛布などを急ぎ集め海水の浸入を防ぐ初期遮防をする。

    穴をふさぐためのちょう番パッチ

     人員がそろったら、まず「ちょう番パッチ」という専用器具を使って穴をふさぐ。次に適切な長さに切った木材をつっかえ棒にしてちょう番パッチを固定する。

    画像: 海水が流れ込む中、ちょう番パッチと木材などを組み込み穴をふさぐ。艦艇の隊員全員の命に関わる作業だけに、素早さとチームワークが求められる

    海水が流れ込む中、ちょう番パッチと木材などを組み込み穴をふさぐ。艦艇の隊員全員の命に関わる作業だけに、素早さとチームワークが求められる

     艦艇には修理用にさまざまな長さの木材が積んである。時には木材を加工して調整し、修理のための角材を作ることもある。

    艦艇が突如航行不能に!潜水士が船底に潜り絡み付いた網を除去

    画像: 艦艇が航行不能になった場合、総員総出で原因を特定。潜水士たちはボートに乗って艦艇の外周を点検し、場合により潜って船底も確認する

    艦艇が航行不能になった場合、総員総出で原因を特定。潜水士たちはボートに乗って艦艇の外周を点検し、場合により潜って船底も確認する

     艦艇が突然動かなくなり、その原因が魚網などがスクリューなどに絡み付いていた場合、海上自衛隊では艦艇に乗っている潜水士が復旧作業を担当する。

     海に飛び込んだ潜水士は、防水カメラや水中ライトを使い絡み付いた魚網の状態を確認。同時に艦艇内では整備担当者などが船底のスクリュー付近まで移動し、内側からも異常がないか点検する。

    画像: 視界不良の海中で復旧作業を行う潜水士。作業時は海域の潮流や天候などの気象状況なども頭に入れながら短時間での復旧を目指す

    視界不良の海中で復旧作業を行う潜水士。作業時は海域の潮流や天候などの気象状況なども頭に入れながら短時間での復旧を目指す

     潜水士はナイフで魚網を切って取り除くが、海中作業は体力の消耗も激しい。作業が難攻した場合は一旦海面へ浮上して作業要領を見直すこともある。

     また、艦内作業員との意思疎通は音を使って行われる。潜水士はハンマーで船底をたたき、その回数で作業の開始や終了などの状況を艦内作業員に伝えるのだ。

    敵の攻撃で戦車が走行不能に!後方支援部隊が回収車を使い、30分で復旧

    画像: 敵からの攻撃で履帯が外れ、走行不能になった想定の10式戦車。復旧させるため、戦車回収車が回収に向かう

    敵からの攻撃で履帯が外れ、走行不能になった想定の10式戦車。復旧させるため、戦車回収車が回収に向かう

     敵の攻撃を受け、かく座した戦車をどう回収するのか?

     回収作業は整備や輸送などを行う陸上自衛隊の後方支援部隊が担い、回収車がトーバ(けん引棒)を使い戦車をけん引し、安全な場所まで移動させる。

     戦車が横転などをしていた場合は、回収車のクレーンでつり上げて車体を起こしてからけん引する。

    画像: 10式戦車(右)をけん引する11式装軌車回収車。トーバを走行不能になった戦車に付け敵のいない地域まで運ぶ

    10式戦車(右)をけん引する11式装軌車回収車。トーバを走行不能になった戦車に付け敵のいない地域まで運ぶ

     移動後は故障箇所を素早く確認し、部品交換など整備を行い復旧させる。

     回収車は戦車と同じ装甲を備えた装軌車両で、不整地でも安定した走行が可能だ。

     また、戦車が動けない状況は戦闘が激しい地域であることが想定されるため、安全を考慮して時には味方部隊に援護射撃を要請し、戦車回収時に敵からの攻撃を受けるリスクに対処する。

     回収車も自衛のため12・7ミリ重機関銃や発煙弾発射機などを装備している。

    滑走路をふさぐ航空機を2時間で回収!基地の施設隊が大型クレーン車で移動

    画像: 自走ができない航空機を大型クレーンで吊り上げて回収。あらかじめクレーンの位置を調整し、作業効率も上げていく

    自走ができない航空機を大型クレーンで吊り上げて回収。あらかじめクレーンの位置を調整し、作業効率も上げていく

     航空機が滑走路上でかく座すると、ほかの航空機が離着陸できなくなるため、速やかに機体を回収し、滑走路を使用可能な状態にする必要がある。

     この場合、航空自衛隊では施設隊が復旧を担当。まず、可能であれば機体をけん引し整備場まで運ぶ。

     けん引不可の場合は大型クレーンを使い機体をつり上げ、平らで広い荷台の付いた「かく座機収容トレーラ」に乗せて移動させる。

     作業は機体重量の調整や引火を防ぐため航空機の燃料を抜き取って行う。

    5分で適切な応急処置!負傷した隊員の命をつなぐ

    画像: 銃弾飛び交う最前線で負傷した隊員を搬送する訓練。生命維持のため出血部位に応じて1秒でも早く適切に止血する

    銃弾飛び交う最前線で負傷した隊員を搬送する訓練。生命維持のため出血部位に応じて1秒でも早く適切に止血する

     戦場で隊員が負傷した場合、最前線で味方の応急処置(緊急救命行為)を行うのが第一線救護衛生員。

     自衛隊において医療活動などを行う衛生科の隊員で、救急救命士と准看護師の資格を持つエキスパートだ。

     負傷時に早急かつ適切に応急処置できるかが前線における救命にとって最重要点。

     第一線救護衛生員は、止血の確認、鎮痛剤や抗生剤の投与、呼吸ができるように気道を確保するための切開など、命をつなぐ高度な延命処置を施す。

     その後、治療や手術などが可能な場所まで負傷者を搬送し、再び任務に復帰できるよう負傷者を支える。

    心も“復旧”させる自衛隊

    画像: 災害派遣に出動した隊員も、1日の終わりに解除ミーティングを実施。情報を共有することにより、自分たちでストレスの蓄積を予防する

    災害派遣に出動した隊員も、1日の終わりに解除ミーティングを実施。情報を共有することにより、自分たちでストレスの蓄積を予防する

     自衛隊では有事の際の戦闘行為で精神的にダメージを負った隊員に対し、心の回復を図るメンタルケアも想定している。

     例えば悲惨な現場に立ち会った際、互いの体験や自分が思ったことなどを共有する「解除ミーティング」を実施することによりストレスの緩和をさせる。

     また、精神状態が不調な隊員には心理や精神医療の専門要員が精神面のケアを行う。これら惨事ストレス発生後の対処を担う隊員を自衛隊内で育成している。

    ●リカバリー完了までの所要時間は状況により異なるため、おおよその時間で表記しています

    (MAMOR2025年11月号)

    <文/臼井総理 写真提供/防衛省(特記を除く)>

    すごすぎ自衛隊の復旧力!

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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