陸上自衛隊による国内最大の実弾射撃演習といわれている「富士総合火力演習」(総火演)。
2025年6月8日に実施された総火演を、自衛隊ファンというタレント・小杉怜子さんをアシスタントに、軍事フォトジャーナリストの菊池雅之氏が、登場した「装備品」に着目し、解説する。
新型装備品も演習で大活躍!
射撃を行う19式装輪自走155ミリりゅう弾砲。従来のFH70りゅう弾砲と比べて素早く射撃準備、撤収ができることを紹介していた
小杉怜子(以下、小杉):今回、戦車をはじめとしてたくさんの装備が登場しましたが、菊池さんは何に注目されましたか?
菊池雅之(以下、菊池):新装備が多数出てきたのは意外でした。今までにない充実ぶりでしたね。制式化されたばかりの装備が続々と出てきたのには目を見張りました。
小杉:過去の例ではどうだったんですか?
菊池:例えば10式戦車ですが、2010年の総火演で登場したものの、発砲はせず姿を見せただけ。今回のように、新しい装備がいくつも出てきて、しっかり説明もされるなんてことはなかったですね。
本格導入前の新装備をあれだけ見せてきたという点に陸自の本気度も伺えます。
小杉:充実した展示になった理由はどう推察されますか?
菊池:最近、防衛省・自衛隊は、レールガンや高出力レーザーに代表されるような、まだ開発中の試作をどんどん見せるようになってきています。かつてはああいう開発中のものはほとんど公表されませんでした。
やはり、多額の防衛予算を使っている以上、現在取り組んでいることを積極的にアピールして進捗を見せることも重要だと考えるようになったのではないでしょうか。
目新しい装備品がいっぱい!

【19式装輪自走155mmりゅう弾砲(ひときゅうしきそうりんじそうひゃくごじゅうごみりりゅうだんほう)】
トラックに大砲を搭載したことで機動性に優れ、全国に迅速な展開が可能になったりゅう弾砲。2020年から全国の特科部隊に配備が進められている <SPEC>全幅:約2.5m 全長:約11.2m 全高:約3.4m(砲身を含む) 最高速度:90km/h 乗員:5人

【25式偵察警戒車(にごしきていさつけいかいしゃ)】
16式機動戦闘車の派生型として開発中の車両。車両後部にアンテナを収納したドーム、さらには偵察用のカメラが搭載されている。今年度から調達開始 <SPEC>全幅:約3m 全長:約8.7m 全高:約2.9m 乗員:5人

【24式機動120mm迫撃砲(によんしききどうひゃくにじゅうみりはくげきほう)】
「24式装輪装甲戦闘車」のバリエーションとして開発された自走迫撃砲。120ミリの迫撃砲を車両後部に搭載。けん引タイプの迫撃砲より短時間に展開・撤収が可能 <SPEC>全幅:約3m 全長:約8.1m 全高:約2.7m 乗員:5人

【12式地対艦誘導弾能力向上型(ひとにしきちたいかんゆうどうだんのうりょくこうじょうがた)】
12式地対艦誘導弾の改良版。国産のミサイルで、トラックに搭載したキャニスターに収められている。「スタンドオフ防衛能力」を担う。2025年度配備予定 <SPEC>全長:約5m 胴体直径:約0.35m 重量:約700kg(数値はミサイル本体)

【島しょ防衛用高速滑空弾(とうしょぼうえいようこうそくかっくうだん)】
地上から敵地や敵艦に向けて発射するミサイルで、トラックに搭載したキャニスターに収められている。侵攻してくる敵の圏外から攻撃できる。2026年ごろから配備予定 <SPEC>全長:7m以下(ミサイル本体) 重量:4000㎏以下(ミサイル本体とキャニスターの合計値)
現役隊員の生の声を聴く時間も確保

若い自衛官候補生などが現場の隊員に部隊での様子を聞くなど、より理解を深める時間が確保されている
菊池:演習後段が終わり、観覧席前の広場に演習に参加した一部の装備品が並べられていますね。
『装備品展示』の時間が始まります。装備品を間近に見ることができ、さらに現場で実際にその装備を使っている隊員に質問もできる、貴重な機会です。
小杉:これは以前からありましたか?
菊池:はい。一般公開されていたころは、写真を撮ったり隊員さんに質問したりと一般の参加者が大勢ごった返していました。
小杉:熱心に質問している隊員さんもいますね。
菊池:隊員向けには、装備品展示のほかに「付随教育」として、先ほど取り上げた塹壕や対戦車壕などを間近に見学する時間があります。
普通科、機甲科、特科、施設科など異職種が一堂に会する総火演は、まだ配属部隊が決まっていない新隊員にとっては、どんな職種を志望するかの参考になるはずです。
【解説/菊池雅之氏】
1975年、東京都出身。雑誌の専属カメラマンを経て、現在はフリーの軍事フォトジャーナリストとして世界各国の軍や自衛隊を取材。総火演は少年時代から見続けており、30年超のキャリアで得た視点から、その変化を語る
【アシスタント/小杉怜子さん】
2004年、神奈川県出身。ミスコンテスト「FRESH CAMPUS CONTEST 2002」(エイジ・エンタテインメント主催)にてグランプリ受賞。中学時代に家族で総火演を見て以来、自衛隊の装備品や訓練に興味を持つように
(MAMOR2025年10月号)
<文/臼井総理 写真/荒井健、増元幸司(菊池雅之)、星亘(扶桑社、小杉怜子)>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです



