自衛隊に入隊すると必ず教わるという「ほふく前進」。ドローンやミサイルのような最新兵器が使われる現代戦においても必要なのでしょうか?
マモルの広報アドバイザー・志田音々さんが、自衛隊の広報担当にインタビュー。実際に「ほふく」を体験してみました。
【志田音々さん】
1998年、埼玉県出身。2023年から防衛省広報アドバイザー(注)を務める。2025年11月上演予定の舞台『かげきしょうじょ‼第3章 The Final』に出演予定
【萩原3等陸佐】
東部方面混成団 団本部 第1科長として、部隊の広報や総務、部内行事などの総括を担当する
(注)防衛省・自衛隊の各種広報活動に協力することを目的として2023年に設けられた制度のこと
ドローンの時代に、ほふくって、必要ですか?

模擬銃を使用
志田音々(以下、「志田」):自衛隊といえば、「ほふく前進」を頭の中に描く方が多いと思いますが、ドローンやミサイルが飛び交う現代戦で今も必要なのでしょうか?
萩原3等陸佐(以下、「萩原」):そもそも「ほふく」とは、敵に見つからずに接近・離脱するための基本的な移動手段の1つで、体を地面につけたまま手足を使って前進します。
自衛隊では第1から第5まで、5段階のほふくに分類しており、番号が大きくなるほど姿勢が低くなります。
状況に応じて使い分けることで被弾などの確率を下げ、任務を遂行できるようにするわけです。

膝を立てて進む第1ほふく
志田:ニュースなどで見る戦場では、最新兵器が使われている印象が強いですが、ほふくは今でも行われているんでしょうか?
萩原:ロシアによるウクライナ侵略では、近代的な戦いが行われる一方で、昔ながらの歩兵戦も行われていて、ほふく前進の重要性も見直されています。

腰を落とした第2ほふく
志田:自衛隊に入隊すると教わるのですか?
萩原:はい。自衛隊の新隊員教育では必修です。むやみにやると、銃口に泥が入って撃てなくなったりしますから、早さとともに正確さも求められます。寮の床で自主練する新隊員もいるくらいです。

肘を地面につけて進む第3ほふく
「ほふく前進」をいざ体験!筋力だけでなく柔軟性も必要
志田:陸上自衛隊の新隊員教育では、ほかにどんな訓練があるんですか?
萩原:障害物を越える訓練や、綱登り、射撃、格闘、えん体構築など多岐にわたります。前進の途中には必ず困難があるので、それをどう乗り越えるかを学びます。
志田:全部が大事な、「国を守るための訓練」なんですね。じつは私、昔からほふく前進をやってみたかったんですよ。

鉄条網に見立てたロープの下を第4ほふくでくぐり抜ける志田さん。隊員やスタッフの声援を受けつつ、泥だらけになりながらも見事にクリアした
萩原:そうですか! それはぜひ体験してみてください。では、戦闘服と鉄帽(ヘルメット)と模擬銃を準備しますので、それらを装備して、「第4ほふく」を体験していただきましょう。外は雨ですが、大丈夫ですか?
志田:はい、がんばります!
……訓練場に来ましたが、結構、雨、強く降ってますね(涙)。ヘルメットも模擬銃も思ったより重いです。これって全部でどれくらいの重さですか?
萩原:模擬銃が約4キログラムで、装備を含めると7、8キログラムくらいですね。実際の隊員はここに30キロ近い背のう(リュック)を背負って訓練しますよ。
志田:そんなに!? それだけで体力を消耗しそうです……。第4ほふくは、どんな動きなんですか?
萩原:小銃は左手で被筒部(ハンドガード)、右手で銃床(ストック)を持ち、おなかを地面につけて低い姿勢を保ちます。左右の肘を交互に出し、反対の足の裏で体を押し出して進みます。
ポイントは肘ではなく、足の力で前進することです。では、まず、地面に腕をついてください。
志田:ひゃあ、冷た~い。難しい……。全然前に進まないです! 普段使わない筋肉だったり股関節だったりが痛くて、こんなにも過酷なものだったんですね。
萩原:筋力だけでなく柔軟性も必要ですからね。今度は、鉄条網に見立てたロープの下を、第4ほふくでくぐり抜けてみましょう。
志田:ぬかるみがあっても進むんですね……。よし、なんとか、くぐり抜けられました!
はぁ~大変だった(笑)。隊員の方は、訓練でどのくらいの距離をほふく前進で移動するんですか?

腹ばいになり頭を地面につける第5ほふく
萩原:状況によりますが、1キロくらいですね。志田さん、あと990メートルです(笑)。
志田:ひぇ~!
(MAMOR2025年9月号)
<文/古里学 写真/星亘(扶桑社)>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです


