防衛省がある東京・市ヶ谷駐屯地内には、東部方面警務隊隷下の第302保安警務中隊が所在する。
その任務は、警護や道路交通統制、犯罪の予防など。それに加えて、国家元首や皇族、政府高官などの重要人物を政府として迎える際に行う特別儀じょうという任務が与えられている。
彼らは「特別儀じょう」に向けてどんな訓練を行っているのだろうか?
「百人一致」を目指し「練磨無限」の訓練を実施
「第302保安警務中隊は、ほぼ毎週、実施される特別儀じょうの任務を遂行するたびに達成感が味わえる、やりがいのある部隊だと思います」と話す清和3佐
「来賓に対して最大限の敬意を表す特別儀じょうは、毎回が真剣勝負です」
第302保安警務中隊長・清和3等陸佐は語る。
特別儀じょうの実施を許されているのは陸上自衛隊の中でも同隊だけであり、隊員として採用されるのも選ばれし者だ。
「本隊の隊員は志願制です。採用の条件は厳しく、身長や体重、視力、健康状態、それまでの所属部隊での勤務成績などの規定があります。それらをクリアした上で、面接を行った後、選考されるのです」
選考後も約2カ月間の訓練期間と審査があり、合格すれば晴れて隊員になれるという、まさに狭き門だ。入隊後も試練は続く。

2025年4月に防衛省でトンガ王国皇太子を迎えた際の特別儀じょう。皇太子(右)の隣に清和3佐、中谷防衛大臣が並ぶ
「儀じょうの動作の練度を向上させ、ベテランの隊員の中に違和感なく溶け込むには、約10年はかかり、その後も『練磨無限』というほどの厳しい部隊です。
また同部隊は全隊員の100人が一糸乱れぬ動作を行う『百人一致』という言葉を掲げており、直近の特別儀じょうに満足することなく、常に100パーセントの完成度を目指し励んでいます」
技量や練度に応じ細かな技術指導を実施
我妻2曹は、「儀じょう任務は、集中力を妨げる、気候などの外的要因を排除するような精神状態に持っていくことが必要」と言う
儀じょう担当陸曹という役職で、任務ごとの儀じょう隊の編成などの計画立案や訓練指導、関係部署との調整などを行っているという我妻2等陸曹。同隊の隊員になって19年目になるという儀じょうのエキスパートだ。
「これまで、儀じょう隊員として合計で739回の儀じょう実務に参加しました。その経験に基づき、隊員たちへの細かい技術指導を行っています」
我妻2曹によれば、自衛隊の儀じょうの特徴は、全体の構成はシンプルでありながら、個々の複雑な動作を全隊員がピタリとそろえる斉一性にあるという。
「どんな環境においても、そうした儀じょうの動作を同じ精度で行うことが求められます。そこで、猛暑や極寒、強風といった過酷な条件下でも訓練を実施しています」
指導で心がけているのは、頻繁にコミュニケーションをとり、各隊員の技量や練度に応じて具体的な指摘をし、その是正について提言することだという。
「そうした指導が実り、儀じょうを無事に終えたときには安堵感とやりがいを感じます。ですが、個人的には、指導者の立場でいるよりも現場の儀じょう隊員に復帰し、儀じょうへの参加回数1000回を達成できればと思っています」
(MAMOR2025年8月号)
<文/魚本拓 写真/星 亘(扶桑社)>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです



