陸上自衛隊が艦艇を持つということで、2024年10月ニュースとなった。四方を海に囲まれた日本になくてはならない装備、「たたかう船=艦艇」について紹介。とくに、搭載される主な兵器について解説する。
艦艇に搭載される兵器を兵装という。現代の艦艇が搭載している代表的な5つの兵装について、しくみや役割を見ていこう。
チャフ

護衛艦の甲板上に搭載されたチャフ発射機。6連装で、チャフを積んだロケット弾を発射する 出典/U.S. Navy
敵のレーダーによる探知を妨害するための兵装。アルミ箔などの電波を反射する物体を搭載した弾を装置から遠方に発射し、搭載物を空中にバラまく。レーダー上ではあたかも艦艇がいるように映るため、敵を欺くことができる。艦艇のほか、航空機に搭載されることもある。
機関砲

護衛艦にも搭載されている、近接防空システム。接近してくるミサイルなどに対し、レーダーで照準を合わせて大量の砲弾を撃ち込む 写真提供/防衛省
機関銃よりも大口径(一般に20ミリ以上)の弾を使い、連続射撃が可能な砲のことを指す。護衛艦にも搭載される、飛来するミサイルや敵航空機からの防御を担当する近接防空システム(CIWS:Close-in weapon system)の1種「ファランクス」は、迎撃探知用のアンテナや多砲身の機関砲が搭載され、自律的に対象を迎撃することができる。
魚雷、アスロック

発射される魚雷とアスロックのイメージ。護衛艦から発射されたアスロックは、目標付近まで飛翔して魚雷を分離する。魚雷より目標を素早く攻撃でき、より遠くまで届く
魚雷とは元々、「魚形水雷」の略で、細長い形状をし、スクリュープロペラなどの推進力を使って水中を自力航行する武器。敵艦艇の喫水線下を破壊し浸水させることを狙ったもの。アスロック(ASROC:Anti Submarine ROCket)は、魚雷に飛ぶためのロケット・モーターを付けている。
艦艇から空中に発射され、一定距離を飛んだ後はパラシュートが開き、着水する。その後は魚雷として航走し、敵潜水艦を撃破する。魚雷をいち早く敵潜水艦が存在する海域に運べる手段だ。
大砲

護衛艦による、5インチ砲の射撃。1分間に20発近くの速度で連続発射でき、対空射撃から対地攻撃まで幅広く使える 写真提供/防衛省
艦艇に搭載する大砲。レーダーやミサイルが発達した現代では、艦艇同士が大砲を撃ち合う戦闘はほとんど起こらないとみられ、第2次世界大戦期のような40センチ以上の砲弾を使用する大砲は搭載せず、搭載しても1門のみの艦艇が多い。
対空射撃や対艦・対地射撃などに用いられる現代の大砲は、コンピューターやレーダーにより制御されているため命中率は過去の大砲とは比べものにならない。
対空ミサイル、対艦ミサイル
アメリカ海軍のイージス艦のVLS(垂直発射装置)から連続して発射される艦対空ミサイル 出典/U.S. Navy
ミサイル(誘導弾)は、その目標によって名称が異なる。敵航空機やミサイルを迎撃するのが「対空ミサイル」、敵艦艇を迎撃するのが「対艦ミサイル」。それぞれのミサイルを艦艇に搭載すると「艦対空ミサイル」、「艦対艦ミサイル」となる。
(MAMOR2025年3月号)
<文/臼井総理>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです