•  藤岡弘、さんといえば、初代『仮面ライダー』を演じた国民的・世界的俳優であり、諸芸に通じた武道家として知られている。

     ここ数年は、4人の子どもたちである天翔愛さん、藤岡真威人さん、天翔天音さん、藤岡舞衣さんの活躍も大きな話題に!

     今回はそんな華麗なる芸能一家の“藤岡ファミリー”の皆さんをお招き(舞衣さんはリモート参加)して、家族全員が芸能界という同じフィールドで活躍することで得られる学びや喜び、皆さんが抱く夢について、お話を伺った。

    父:藤岡弘、(ふじおかひろし)
    1946年生まれ。65年に映画デビュー、今年60周年を迎える。初代『仮面ライダー』のほか、USA映画『SFソードキル』主演、その他映画、ドラマで主演多数。俳優や武道家として確固たる地位を確立している名優で、世界の紛争地域や難民キャンプを訪れるなど、救援活動も展開。ボランティアや俳優活動などで、世界100カ国近くを訪れた経験をもつ

    長女:天翔愛(てんしょうあい)
    2001年生まれ。音楽大学卒。19歳のときに舞台『ロミオ&ジュリエット』のジュリエット役で女優デビュー。21年NHK大河ドラマ『どうする家康』、24年ミュージカル『アニー』などで活躍。天性の透明感ある歌声と演技力で注目されている。23年よりCM「丸源ラーメン」に出演するほか、「KATE 3DアイブロウカラーZ」にはファミリーでの出演が話題となっている

    長男:藤岡真威人(ふじおかまいと)
    2003年生まれ。俳優。大学3年生。16歳のときにゲーム会社のCMで芸能界デビュー。話題作への出演が続く注目の俳優。武道にも精通し、時代劇やアクション映画へ出演。特技はギターの弾き語り。24年10月スタートのドラマ『ウイングマン』(テレビ東京系)で単独初主演。親子2代で特撮ヒーローに。今冬には本格時代劇ドラマ『三屋清左衛門残日録』の出演も予定

    次女:天翔天音(てんしょうあまね)
    2005年生まれ。女優・モデル。音大1年生。ダンス・歌が得意。「Snidel」、「ROYAL PART
    Y」、「HystericGlamour」などモデル出演多数。23年NHK大河ドラマ『どうする家康』では姉・愛との初共演が話題に。24年初舞台・海の音楽劇『プリンス・オブ・マーメイド』でヒロイン役、24年11月スタートの日韓合作ドラマ『彼女のいない時間』(メ~テレ&PH E&M)では連ドラ初出演でヒロイン役に抜擢

    三女:藤岡舞衣(ふじおかまい)
    2008年生まれ。現役高校生。19年「第8回ニコ☆プチモデルオーディション」グランプリを受賞し専属モデルデビュー。ファッションブランド「メゾピアノジュニア」のイメージモデル、振袖の「丸上」のカタログでは3年連続表紙を飾る。23年ミュージカル『浜村渚の計算ノート』で女優デビュー。バラエティ番組出演多数。絵を描くことが得意で、清らかな歌声は天使ボイスとも称される

    芸能界入りは勧めなかった

    藤岡弘、(以下、弘、):子どもたちは「芸能人の子」としてでなく、私が父と母に育ててもらったように、ごく普通の家庭の子として育ててきました。小学生のときはどの子もみんな活発で元気な子たちで、いつもにぎやかでしたね。

     現在では4人の子どもたち全員が俳優やモデルとして活動していて、「芸能一家」なんていわれていますが、僕自身、彼らの芸能界入りは全く期待してなかったし、子どもたちの意思を尊重したかったのでむしろ、あまり勧めたくはないとすら思っていました。

    天翔愛(以下、愛):そもそも父は子どもの存在自体、マスコミに公表せず、学校行事にも関わらないようにしていたので、私たちが「藤岡弘、の子ども」だと知っている人は、周囲にほとんどいなかったんです。

    藤岡舞衣(以下、舞衣):本当にごく普通の家庭の子として育ててもらいました。

    弘、:子どもたちに不要な負担をかけたくなかったんです。ところが2019年に子どもの存在がマスコミにバレてしまい(笑)、テレビ局から家族で番組に出てみないかという依頼をいただいたんです。

    藤岡真威人(以下、真威人):出演は家族会議で決めました。当時、僕たちはそれぞれに違う夢を持っていましたが、その中の1つに「表現者」という選択肢もあったんです。テレビ出演のオファーは、漠然としていた夢が突然、目の前に具体的な形として現れたような印象でしたね。

    天翔天音(以下、天音):テレビや雑誌を通して、父が活躍している姿を幼いころから見ていましたから、芸能界に対する憧れのような気持ちは前々からひそかに持っていました。

    舞衣:それに、私たちきょうだいは幼いころから、演劇や映画などに親しむ機会がとても多くて。

    弘、:本物に触れる機会をできるだけ多くもたせてあげたかったからね。海外の映画も、名作と言われるものはかなり見せていました。

    愛:そのせいか、私は小学校低学年のころから、学芸会などで歌ったりお芝居をするのが楽しくて。「自分の得意分野はこれなのかな」という自負も、うっすらと、ありましたね。

    弘、:愛が高校生のとき、自主制作映画の全国コンクールで最優秀女子演技賞をいただいたときは驚いたな。演じることに興味があること自体、私は全然、知らなかったので。

    天音:だから、いただいた仕事に挑戦してみたら、すごく楽しくて、やりがいも大きかったです。

    真威人:自分が目指したい目標が4人それぞれに見えてきて、それと真剣に向き合っているうちに今に至るという感じです。だから「芸能一家」というと、何か特別なもののように感じられるかもしれませんが、僕たちにとっては、自然な流れでした。

    父と同じ職業に就いて感じたこと

    愛:仕事を始めて何より驚いたのは、私たちが想像していた以上に、俳優として、人として、父の存在は大きいものだったという事実です。

    天音:子どものころから当たり前のように教えてもらっていたことが、いろいろな場面で「ああ、こういうことを教えてくれてたんだ!」と、まるで答え合わせをするような場面が増えてきましたね。

    弘、:わが藤岡家は、先祖代々古武術である「藤岡流」を伝え、守ってきた家なんです。だから僕が道場で稽古をしているのを子どもたちはみんな見て知っています。本物の日本刀を使ったり、手裏剣を投げたり武道というものがいかなるものなのか、その精神についてずっと話してきましたから、多分、彼らはその真髄を理解しているはずなんです。

    真威人:僕は極真空手、柔道、伝統空手、杖術は4人全員が習っています。

    天音:武術は型がとても美しいんです。それがモデルをする上でも生きていますね。

    愛:天音と2人でNHKの大河ドラマに出演させていただいたとき(2023年『どうする家康』)も、着物での立ち居振る舞いに困ることはほとんどありませんでした。これも日ごろの父の教えのおかげです。

    真威人:父は趣味の幅もとても広くて、大型免許、大型特殊免許、大型自動二輪はもちろんですが、調理師免許から二級船舶操縦士や自家用操縦士免許など、驚くほどたくさんの免許を持っているんです。

    愛:困ったこと、知らないことも、父に聞けば大抵のことは教えてもらえますし、子どものころから武道を通じて精神面を鍛えてもらっているせいか、撮影などの現場でも、緊張し過ぎて身動き取れなくなることはなかったですね。

    ふと思い出す「父の言葉」とは?

    弘、:私があらゆる武道や技術を身につけ実践を重ねてきたのは、どんな状況であっても生き抜くため。いままで世界中、100カ国近くの国を訪れ、またボランティアで支援を続けてきましたが、紛争地など、秩序が崩壊した地域では、命の危険を感じたことも多く、自分の身は自分で守るしかない。吉田松陰先生がおっしゃる通り、学ぶことと実践は表裏一体であり、生き抜くってことは、実践を伴った学びなのです。

    愛:女性であっても、自分の身は自分で守れ、自立しろ、と言われて育ちましたね。

    弘、:彼らはまだ若いですが、1本芯が通っていると思っています。ちょっとやそっとのことには振り回されたりしないと思います。真偽を見分ける能力は少しは付いているかな、と。親の責任として、そのように育ててきましたから。

    天音:私たちは、父自身が努力を重ねる姿を間近に見て育ちましたし、物事には全て、そうあるべき理由があることを、教えてもらいました。父は子ども相手であっても筋を通してきっちりと説明してくれたので、本当に素直に納得できたんです。反抗期とか、ほとんどなかったかもしれません。

    愛:子どものころから、運動会のリレーの前など、勝負事があるときには必ず、「逃げるな、負けるな、屈するな、諦めるな、やり抜け」と父から言われ続けていました。

     本当に耳にタコができるほど聞かされたおかげでこの言葉が心身に染み込んでいて(笑)、仕事のオーディションなど「ここで頑張らないと!」という場面になると、この言葉と父を、ふと思い出すんです。そうすると心が静かになるというか……強くなれる。本当に助けられています。

    弘、:私の父から教えられた言葉なんです。

    天音:この言葉を思い出せば、絶対に道は外れない気がします。

    弘、:これこそが精神とともに武士道の継承なんです。日本には伝統的にこうした素晴らしい教えがあるんですよ。

    家族がいるから強くなれた

    画像: ごく普通の家庭の子としてすくすくと育てられた4きょうだいの幼いころ。舞衣さんのバースデーでやさしいパパの顔をした藤岡弘、さん 写真提供/SANKIワールドワイド

    ごく普通の家庭の子としてすくすくと育てられた4きょうだいの幼いころ。舞衣さんのバースデーでやさしいパパの顔をした藤岡弘、さん 写真提供/SANKIワールドワイド

    真威人:周囲からは父親の存在がプレッシャーになるのでは? と聞かれることもあるのですが、父が演じたヒーローを僕も演らせていただいたり(2021年12月公開の映画『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』に本郷猛役で特別出演)、父が歩んできた道を僕がたどっていくことは宿命というか使命というか、そういう巡り合わせだったのかなと感じています。

     それは「乗り越えなければいけない壁」というよりも、むしろ感謝の気持ちが強いですね。もちろん、父は憧れの存在ではあるのですが、僕は僕の道を行くしかないので。

    愛:家族一緒に仕事をしたときなど、家に帰ってから反省会をしたり、「ここが良かった」なんて話し合ったり。家族全員が芸能という同じ世界で生きているからこそ、お互いに刺激を与え合って高めあい、相談できる。とてもありがたい環境です。

    天音:全員で分かり合えるのが心強いです。

    真威人:同志みたいな関係。

    弘、:切磋琢磨してね。マモルは自衛隊の雑誌ですが、ご家族みんなで自衛官をされている隊員さんもいらっしゃると聞きました。自衛官のファミリーには、「国を守る」という全員に共通する大きな目的があって、同じ価値観を共有しているでしょう? 

     わが家の場合は子どもたち全員が「表現者」としての夢に向かって歩いていて、父がその先駆者。共通の目的と価値観をもっているからこそ、より親密なコミュニケーションが取れます。皆で同じ夢を追う、いわば「ドリームファミリー」とも言われておりますが(笑)

    真威人:全員が表現者としての道を選び、家族の絆がより深まったと実感しています。

    弘、:日本社会は伝統的に家族主義を大切に守ってきました。家族や仲間が結束することで社会や国を守り、平和を守ってきた。それが実は国としての強さの根幹なんです。

    父の夢、藤岡家の夢とは?

    弘、:私の夢は、家族全員が日本の伝統文化を身に付け世界に進出し、日本人の素晴らしさを世界中に知らしめること。

     日本の本物の芸能、精神性の素晴らしさを世界に広げたいですね。これこそが世界に誇れる日本の伝統・文化なんだと。

     今まで世界中のVIPや多くの国家的要人の方々の前で真剣を使った武道演武を行ってきましたが、日本人の魂、武士道精神は確実に彼らの心にも伝わったのではないかと思います。

    愛:武士道というと男性のものと考えられがちなのですが、何か選択を迫られたとき、迷ったときに、自分を正しい道に導いてくれる心の拠り所として、女性にとっても大切な指針になりえるものと捉えています。

     私自身は女優という仕事を通し、自分なりのやり方で、こうした素晴らしい教えを多くの方に知っていただけるよう、武士道精神を発信できる女武士道を体現する存在になれたら、と。

    弘、:俳優という仕事は、多くの人に夢を与え感動を与え、希望や愛や思いやり、幸せや喜びや勇気など、人生におけるあらゆる素晴らしいもの、活力を皆さんに届けることができる仕事です。

     人間にとって大切なものを、代弁者として世に問うメッセージを発信することは、重要な使命だと言っていい。子どもたちもそれに気付きはじめたからこそ、ますます演じることの魅力や喜びを実感しているのだと思います。

    日本を思う気持ちが自衛隊に重なる

    天音:父はよく「天命に生き、運命に挑戦し、使命に燃え、宿命に感謝し、試練に立ち向かえ」とも話してくれました。だから私は子どものころから、誰もが何かの使命を持って生まれてきていると感じています。自分が女優という仕事を選んだのも、私にしか人に伝えられない何かがあると思いながら毎日の仕事に取り組んでいます。

    真威人:おこがましいかもしれませんが、日本のため未来のために自分に何ができるのか、常に模索する父の姿は、日本を守ろうと頑張ってくださる自衛隊の皆さんの姿勢に重なります。

    愛:今日は表紙の撮影で正しい敬礼の仕方を教えていただけて、とてもうれしかったです! 自衛隊の皆さんは、任務を通して命がけで日本を守ってくださっていますよね。

     私たちは芸能という分野でさまざまなメッセージを発信していますが、ジャンルが違っても、日本を思う真剣な気持ちは隊員の皆さんと同じだと思っています。

    全員:日本を守ってくださっている自衛隊の皆さんを心から誇りに思い、感謝しています。一緒に頑張りましょう!

    (MAMOR2025年1月号)

    <文/真嶋夏歩 写真/鈴木教雄、星 亘(藤岡舞衣・扶桑社) スタイリング/柴山陽平 ヘアメイク(藤岡弘、、藤岡真威人)/藤井まどか(untitled.) ヘアメイク(藤岡舞衣)/米尾太一(untitled.) ヘアメイク(天翔愛、天翔天音)/万田敬子(ヘア担当、BALAN)、藤井絢子(メイク担当、ICON)>

    藤岡家、夢追う芸能ファミリーの肖像

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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