•  400人余りの日本代表選手が出場し、世界中を熱く盛り上げた2024年パリオリンピック。自衛隊体育学校に所属する7人の自衛官アスリートもそれぞれの活躍を見せてくれました。

     今回は、見事銀メダルを獲得したレスリング・フリースタイル74㎏級・高谷大地1等陸尉に凱旋報告をしてもらった。

    【高谷大地1等陸尉】
    1994年、京都府出身。小学生時代にレスリングを始める。網野高校から拓殖大学に進み、2017年に自衛隊入隊

    監督とコーチの言葉を信じた

    画像: 準決勝にてアメリカ選手を制し、銀メダル以上を確定させた高谷1尉。試合終了直後、勝利の雄たけびをあげた 代表撮影/日本雑誌協会・渡部薫

    準決勝にてアメリカ選手を制し、銀メダル以上を確定させた高谷1尉。試合終了直後、勝利の雄たけびをあげた 代表撮影/日本雑誌協会・渡部薫

     レスリング男子フリースタイル74キログラム級で銀メダルを獲得した高谷1尉。オリンピックという夢の舞台における活躍の裏側には、綿密なトレーニングの日々と、己を成長させてくれた人の存在があった。

     パリオリンピック本番に向けた練習では、過去に敗戦した相手選手を中心に映像で研究し、対策を練った。食事管理も工夫し、疲労を軽減するメニューを取り入れたり、体重の増減に合わせて量を調整したという。

     こうしたフィジカルの強化に加え、メンタルも鍛えた。あるとき、緊張との向き合い方をコーチの米満3佐に相談すると、米満3佐は愛読書の一節を用いて、「緊張は大きなことを成す前の心と体の準備だ」と声をかけた。この言葉を受けて、緊張に対する感情が前向きなものへと変化。

     2004年のアテネ五輪の銅メダリストである監督の井上謙二2等陸佐からは、「私は高谷のことを誰よりも見てきているから分かる、やれることをやったから1番強い」と心強い言葉をもらった。メダリストに直接指導を受ける環境から得られる恩恵は計り知れない。

    「レスリングに専念できる時間が豊富にあるのは自衛隊体育学校ならでは。指導者がオリンピック経験者である環境で練習できたのはすごく大きいです」

    緊張を受け入れ、つかんだ勝利

     それでもパリでは、「ウオーミングアップのときに尋常じゃないくらい足が動かなかった」と、今までにない緊張感に襲われた。そのとき思い出したのは、兄・高谷惣亮(ALSOK)のオリンピック出場に競技サポーターとして帯同したときの光景だ。

    「兄は『緊張する』と声に出していたんです。緊張していることを自分で理解すると、行動が伴って動けるようになる。兄をまねして、我慢せず口に出していました」

     緊張を受け入れ、今までの練習で得た成果を信じる。自身を奮い立たせて会場に入った瞬間のことは鮮明に記憶している。「観客が見えた瞬間に、今までの緊張がうそのように取れて、妙に落ち着きました。大歓声があったのもありがたかったです」。

     応援も味方にして臨んだ本番。順調に勝ち進み、ウズベキスタン代表選手との決勝戦へとたどり着き、見事銀メダルに輝いた。今後について、体が動く限りはレスリングを続けていきたいと語る。

    「競技に注目が集まっている今、どうやったらレスリングが、そしてスポーツ全体が盛り上がっていくのかを考えながら、自分の競技力を伸ばしていきたいです」

     夢の舞台を経験し、また1つステージをあげた高谷1尉。先人たちの言葉を胸にこれからも挑戦は続いていく。

    (MAMOR2025年1月号)

    <文/ナノ・クリエイト 写真/増元幸司>

    自衛隊体育学校アスリートの強さとは?

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

    This article is a sponsored article by
    ''.