いざ、に備えて日々、訓練に励む自衛官たち。その能力・技術は各国軍にけっして負けないが、私たち一般国民が、それを目にすることはめったにない。
そこで、マモルでは特別に、つるの剛士さんを委員長とする委員会を招集し、それぞれが“これぞ自衛隊の超絶ワザ”を認定していただくことに。さあ、発表だ!
超絶ワザ委員会とは
過去に仕事で自衛隊に関わったタレント、アスリート、軍事や自衛隊に造詣が深いカメラマン、軍事ジャーナリストなどで編成された、自衛隊の超絶ワザを認定する委員会。
写真/星 亘(扶桑社)
つるの剛士認定委員長
1975年、福岡県出身。97年特撮ドラマ『ウルトラマンダイナ』(TBS系)で俳優デビュー。2023年にタレントとして初めて航海中の自衛隊潜水艦を密着取材。自衛隊好きで知識も豊富。
写真提供/本人
フォトジャーナリスト 柿谷哲也認定委員
1966年、神奈川県出身。学生時代に航空機を被写体として写真撮影を始め、97年からフォトジャーナリストとして、世界各国の軍隊を取材。国内外のメディアに写真や記事を提供している。
写真提供/本人
元ドクターヘリパイロット 石橋清認定委員
1949年、大阪府出身。航空自衛隊に航空学生として入隊し、パイロット教育を受ける。71年に退職後、 72年より民間企業でドクターヘリなどに搭乗。現在、奈良地方協力本部で相談員を務める。
200人の太鼓捌きが胸を打つ「自衛太鼓」(つるの委員長)

一般の隊員が課外活動などにおいて修練。一斉に太鼓をたたく演奏が胸を打つ
つるの委員長は、「自衛隊音楽まつり」を視聴する機会があり、太鼓演奏に驚いたという。自衛隊には全国に200ほど太鼓クラブがあり、課業外の時間を用いて隊員が修練を積んでいる。
この太鼓クラブの晴れ舞台が、自衛隊最大の音楽イベント「自衛隊音楽まつり」だ。各部隊の演奏とは別に、全部隊の総勢約200人が合同で行う演奏は圧巻。
「隊員が一斉にたたくドン! という音もリズミカルな連打も1つの音に聞こえます。この日のために編成された臨時チームなので全体練習は数回しかできないのに、音がそろうのがすごい。日本のお家芸『チームワーク』が成せる勇気と感動を与える超絶ワザです」とつるの委員長。
あらゆる事態に対応する「自衛隊ヘリコプターの飛行技術」 (石橋委員)
自衛隊のヘリコプターの超絶ワザを、元ヘリコプターパイロット石橋委員は次のように認定した。
1:危険な状況でも飛ぶ自衛隊ヘリコプター

2011年3月の東日本大震災で救助活動を行う陸自ヘリ、電線や電柱を巧みにかわし、ギリギリまで地上に接近し隊員を降ろしていく
「災害派遣などで救難活動をする場合、超低高度で飛行するため電線などに引っ掛からないように細かい操縦が求められます。経験でカバーできる技術ですが、これを若手隊員でもできる。日ごろの訓練のたまものでしょう」
2:揺れる艦上に着艦できる操縦技術

わずかな光を目印に護衛艦に着艦する海自ヘリSH-60K。艦艇の揺れに合わせ着艦する技術はパイロットにとって習得が難しい技術だ
「また海上自衛隊のヘリコプターが、護衛艦などに着艦する技術は圧巻です。風で揺れる機体を、同様に揺れる艦艇の飛行甲板に着艦させるのは自分だったら怖くてできません。しかも夜間でも着艦できる技術は脱帽です」
3:ヘリコプターの限界に挑戦した災害派遣

標高3067メートルの御嶽山で、避難者の救出活動を行うUH-60JAヘリコプター
そして専門家にしかそのすごさが分からない超絶ワザとして石橋委員が語るのが2014年の御嶽山(長野県)噴火における救助活動だ。
「標高3067 メートルの山頂付近の山小屋に避難した登山客を自衛隊ヘリが救助しました。高度3000メートル付近では気圧が低くなりヘリの揚力が減るため、機体を静止させるのも至難の業です。適切なコントロールをする自衛隊ヘリパイロットの技術の高さを証明する災害派遣でした」
短距離で離着水できる「US-2」(柿谷委員)

陸上滑走路と違い洋上には波があり潮流がある。低速でも安定した飛行ができる機体の性能も高い
取材でUS-2に搭乗経験のある柿谷委員が、超絶ワザと認定するのが、荒波でも離着水できるUS-2の操縦技術だ。
「着水時に波の勢いを弱める消波装置や機体損傷を防ぐ機体性能もすごいのですが、パイロットの技術が超絶ワザです。陸上の滑走路は動きませんが、海面は常に流動しています。波を解析し、着水できる場所を瞬時に見極める技量がすごい。
この技術を支える、捜索プランを立てる頭脳・救難航空士、要救助者を助ける機上救助員、レーダーを駆使し要救助者を探す機上電子員など、過酷な環境条件に対応するクルーの個々の力やチームワークもすごいです」
(MAMOR2024年11月号)
<文/真嶋夏帆 写真提供/防衛省(特記を除く)>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです