•  マモルのキャッチフレーズは「日本の防衛のこと、もっと知りたい!」だ。防衛省・自衛隊の政策や活動を広く国民にお知らせすることがマモルの使命である。

     そこで、読者から募った防衛に関するさまざまな疑問、質問について、われらが広報アドバイザー・志田音々さんがインタビュアーとなって、各界の識者に教えていただく。

    画像: 志田さんオリジナルの“宇宙のポーズ”

    志田さんオリジナルの“宇宙のポーズ”

    【志田音々】
    タレント、女優。1998年生まれ。埼玉県出身。2019年にデビューし、舞台、ラジオ番組など幅広く活躍中。23年から防衛省広報アドバイザー(注)に就任

    画像: 「自衛隊が宇宙に進出するのはなぜ?」志田音々が宇宙作戦群司令に聞いた!

    【杉山1等空佐】
    杉山1等空佐 宇宙作戦群司令として2023年3月より府中基地(東京都)に勤務。宇宙監視と関連装置・システムの維持管理などを行う5部隊の指揮・統括を行う

    ※(注1)防衛省・自衛隊の各種広報活動に協力することを目的として2023年に設けられた制度のこと 

    自衛隊はなぜ宇宙に進出するの?

    画像: 宇宙空間のスペースデブリや人工衛星などを監視する宇宙作戦群の隊員ら(写真内モニター画面はイメージ)。地上のレーダーが観測したデータなどを常にモニタリングしている(撮影/村上淳)

    宇宙空間のスペースデブリや人工衛星などを監視する宇宙作戦群の隊員ら(写真内モニター画面はイメージ)。地上のレーダーが観測したデータなどを常にモニタリングしている(撮影/村上淳)

    杉山宇宙作戦群司令(以下司令):宇宙作戦群は、2020年に創設された宇宙作戦隊を前身として22年に創設されたばかりの新しい部隊です。志田さんは宇宙作戦群と聞いて、最初はどう思われましたか?

    志田音々(以下志田):恥ずかしながらそういう部隊があることを知らなくて、『宇宙戦艦ヤマト』とか『機動戦士ガンダム』などの2次元的なところを想像してしまいました。宇宙と防衛がどうつながってくるのでしょう?

    司令:その前に志田さんは、人工衛星が私たちの暮らしに欠かせないものだということはご存じですよね。

    志田:はい。気象衛星やGPS衛星、通信衛星などはよく耳にしますし、スマホがちゃんと機能するために、なくてはならないものですよね。

    司令:その通りです。人工衛星はもはや社会において重要なインフラになっていますし、防衛上においても通信やナビゲーションシステムなどの利用が不可欠になっています。そうした人工衛星の安定利用を確保するのが宇宙作戦群の任務になります。

    自衛官が宇宙に行くことはあるの?

    志田:実際に自衛官が宇宙空間で任務に就くことはあるのですか?

    司令:われわれが直接宇宙に行くわけではなくて、地球上からレーダーや望遠鏡などを使って、宇宙にあるわが国の人工衛星が脅威にさらされていないか、監視するのが任務です。というのも、現在数えられるだけでも約2.9万個もの宇宙物体が地球の周りを回っているんですよ。

    志田:そんなに!

    司令:約2.9万個の宇宙物体にはスペースデブリと呼ばれるロケットの破片や役目を終えた人工衛星など、膨大な量のゴミが含まれます。これが人工衛星と衝突すると衛星が破損して機能に支障が生じるので、デブリなどと衝突の可能性がある場合、衛星運用事業者に情報提供をしています。空には領空という明確な境界がありますが、宇宙には国境がないし、それを規制するルールもありません。

     一応、1966年に国連総会で採択された『宇宙条約』(注2)という国際法はあるのですけれど、合意が得られた国連加盟国にしか効力がなく、その合意がなかなか得られないのが現状です。

     にもかかわらず人工衛星に搭載された各種機器の性能や通信・打ち上げに関する技術など、宇宙分野の技術は条約制定当初に比べ格段に進化しているので、ルール作りが追い付いていないという状況にあるのです。

    ※(注2)正式名称は『月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約』。全17条からなり、「宇宙空間の探査・利用は全人類に認められる」ことや「宇宙空間は国家による取得の対象とはならない」、「兵器を宇宙空間に配置しないこと」などが明記されている

    志田:ということは、どの国も衛星を使って他国を監視したり、最悪の場合、攻撃することもできる、ということにもなりますよね。でも、広大な宇宙空間を監視するのは、とても大変じゃないんですか?

    司令:もちろんコンピュータや最新のテクノロジーを駆使していますが、日本一国だけではとても対応不可能な任務なので、アメリカをはじめいろんな国と協力してやっています。

     昨年からは、宇宙にある人工衛星などの能力や運用意図などを把握する、という新たな任務が始まり、実際に宇宙にどんな物体がどこにあるのかを把握するためのシステムが稼働しました。2026年度には防衛省が人工衛星を打ち上げる予定なので、直接宇宙から宇宙を監視することができるようになります。

    志田:アニメの世界とは全然違うんですね。そういえば、宇宙作戦群の部隊マーク、独特ですよね。

    宇宙作戦群の部隊マーク。宇宙作戦群が宇宙領域における中心・道標となること、常に宇宙の状況把握を行うことなどをイメージしてデザインされた (写真提供/防衛省)

    司令:隊員が作成したエンブレムで、描かれた6つの丸は、宇宙監視レーダーを象徴しているんですよ。

    志田:まさに「宇宙」という感じでかっこいいですね(と“宇宙のポーズ”を取る志田さん)。

    <文/古里学 写真/山田耕司(扶桑社)>

    (MAMOR2024年10月号)

    志田音々のねぇねぇ防衛のこと、もっと教えて!

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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