自衛隊には数多くの部隊があり、中には自隊のテーマソング「隊歌」を持つ部隊もあります。
その歌詞を読むと、国を、地元を愛する気持ち、家族、仲間を想う気持ちが表されて、各隊員の心意気が伝わってきます。そんな隊歌にあなたも触れてみてください。
今回は、東京都立川駐屯地に所在する陸上自衛隊の部隊「東部方面航空野整備隊」の隊歌をご紹介します。
東部方面航空野整備隊とは…
立川駐屯地(東京都)に所在。陸上自衛隊東部方面隊が所有するヘリコプターの野整備と補給を行う部隊で、作戦行動中のヘリコプターが攻撃を受けたり故障をして戦地に緊急着陸した場合に、現地に駆け付けて整備や修理、補給をする。そのために日々訓練を積み重ねている。
「東部方面航空野整備隊の歌」の歌詞を紹介
一
春は曙 武蔵野に エンジンの音轟きて
今日も整備に 青春かける
我等は 我等は 航空野整備隊
二
夏は神輿だ 立川祭り 花火もヘリも舞上がる
補給は先行 何時でも任
我等は 我等は 航空野整備隊
三
秋は名月 相馬ヶ原(1)に 夜間作業は粛々と
本部勤務は徹夜だ今日も
我等は 我等は 航空野整備隊
四
冬は戦技(2)だ持久走 赤鬼青鬼(3)皆で走る
何時も元気だ誓いは必成
我等は 我等は 航空野整備隊
この歌詞を解説
(1)陸上自衛隊の演習場の1つで、群馬県北群馬郡にある
(2)体力・気力の充実を図ることを目的として自衛隊の中で行われる競技会のこと。駅伝競技会もその1つ
(3)持久走の競技会に向け、自らの情熱と努力でほかの選手たちの模範となって練習を引
っ張り、部隊を初優勝に導いた2人の隊員のこと。その厳しさからK2曹は「赤鬼」、Y2曹は「青鬼」と呼ばれた
<作詞/陸上自衛隊 川添傑 作曲/陸上自衛隊 中央音楽隊 櫻井寿一>
赤鬼・青鬼の意志は今も歌い継がれている
1989年に、部隊と隊員の士気高揚を図るとともに、部隊の伝統を継承していくことを目的に作られたという隊歌。作詞は、当時の野整備隊長の川添傑3等陸佐(退官)で、作曲は中央音楽隊の同期に依頼したそう。
1番は整備隊、2番は補給隊、3番は隊本部のことを歌っているのだが、「4番には特に思い入れがある」と語ってくれたのは、歌詞にも登場する「青鬼」こと、元・野整備隊員の山本和博さん(退官)だ。
山本さんが着隊した80年ごろ、野整備隊は、東部方面航空隊の駅伝競技会で最下位。部隊にあきらめの気風が漂う中、一念発起したのが赤鬼K2曹と青鬼(山本さん)だった。
2人は練習計画を立てるだけでなく、先頭に立って練習に取り組み、それを見たほかの隊員たちの意識をも変えることで、部隊を「最弱」から「優勝」へと導く偉業を成し遂げたのだ。
以降、野整備隊は、「誠心誠意信念を持ち、積極的に職務を行うことで、他人の心は動かされ士気は高揚し、健全な隊員を育成する」ことを部隊の伝統として継承している。当時の赤鬼、青鬼の、心を動かす走りを想像しながら、ぜひ聴いてみて!
(MAMOR2023年5月号)
<写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです