自衛隊には数多くの部隊があり、中には自隊のテーマソング「隊歌」を持つ部隊もあります。
その歌詞を読むと、国を、地元を愛する気持ち、家族、仲間を想う気持ちが表されて、各隊員の心意気が伝わってきます。そんな隊歌にあなたも触れてみてください。
今回は、青森県八戸航空基地に所在する海上自衛隊の部隊「第2航空隊」の隊歌をご紹介します。
第2航空隊とは…
八戸航空基地(青森県)に所在。海上自衛隊の航空部隊として、P-3Cを運用して日本海北部、北海道周辺海域の警戒監視などの任務にあたる。
P-3Cによる哨戒部隊としては日本領土の最北端に所在しており、厳しい気象条件下での任務となるため、部隊の精強性、即応態勢維持のため、日々訓練などに励んでいる。
「第2航空隊の歌」の歌詞を紹介
一
あさひを浴びて舞い上がる(1)
行方見守る八甲田 崇き使命をその胸に
若きオーディン(2)いざ行かん
精強 我らは第2航空隊
二
蒼天翔る(3)銀翼に 映りきらめく奥入瀬の 勇気・団結試練を砕き
不屈のオーディン飛翔せん 栄えある 我らは第2航空隊
三
星空澄みて(4)薫る風 翼休める小田の丘(5) 磨きを掛ける我が愛機
備えよオーディンたゆまなく 誠実 我らは第2航空隊
四
行く手を阻む霧に雪
荒ぶる冬海(6)海峡も
北の防人平和を誓い
輝くオーディンゆるぎなし
即応 我らは第2航空隊
この歌詞を解説
(1)朝、昇る太陽に向かって離陸していくイメージ。1番は、未完ながら若さとエネルギーにあふれる様を表現
(2)北欧神話の主神であり、全知全能の神、戦いの神ともいわれる。第2航空隊は、そのオーディンをコールサイン(管制機関や僚機などとコンタクトを取る際に使用する呼び出し符号)としている
(3)昼の青空の中、困難な任務においても不屈の精神と団結をもって立ち向かう勇ましいイメージ。2番は1番と比較し、成熟した様を表現
(4)星空のもと、次のフライトに備え翼を休めているイメージ。3番は、任務が終了し日が暮れる中、黙々と整備作業を続ける裏方の整備員のことを歌った
(5)八甲田や奥入瀬に比べマイナーだが、小田八幡宮から八戸航空基地に向かってのびる小田の坂道を上がる情景は、当基地に勤務したことがある者なら誰もが思い浮かべることのできる、愛着ある場所
(6)北の日本海、オホーツク海、そして津軽海峡のこと。4番の歌詞はより大きな視点から、第2航空隊の環境、任務について歌った
<作詞/海上自衛隊 前田忠久 作曲/海上自衛隊 尾﨑和彦>
ライバル同士の心を1つにするために誕生
2008年、同じ八戸航空基地に所在していた旧第2航空隊と旧第4航空隊が組織改編により合併し誕生したのが、現在の第2航空隊(新2空)。
両部隊は切磋琢磨しあう良きライバル関係にあったため、合併後、旧2空の隊歌をそのまま新2空に引き継ぐことはためらわれ、しばらく隊歌がない状況が続いたそう。
「このままでは寂しい。それならば新しい隊歌を作ろう!」と立ち上がったのが、作曲を担当した旧2空の尾﨑和彦3等海佐(22年退職)だった。
その尾﨑3佐に誘われ、作詞に挑戦したのが旧2空の前田忠久2等海佐(22年退職)。応募作品の中から2人の詞と曲がそれぞれ選ばれると、何度か酒を酌み交わしながら微調整をし、完成に至ったという。
前田2佐はその後異動となったが、曲完成から10年後、2空の隊司令として戻り、「隊歌が歌い継がれていて感無量だった」とコメント。
コロナ禍前までは、毎昼の体操前や宴会の締めなどに、隊員みんなで歌っていた(コロナ禍の今は昼休みに隊内放送で流している)そうだ。前田司令(取材時)にとって感動の再会となった隊歌をぜひ聴いてみて!
YouTubeより曲が聴けます
(MAMOR2023年2月号)
<写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです