自衛隊には数多くの部隊があり、中には自隊のテーマソング「隊歌」を持つ部隊もあります。
その歌詞を読むと、国を、地元を愛する気持ち、家族、仲間を想う気持ちが表されて、各隊員の心意気が伝わってきます。そんな隊歌にあなたも触れてみてください。
今回は、長崎県佐世保市・相浦駐屯地に所在する「水陸機動団」の隊歌をご紹介します。
水陸機動団とは…
2018年に陸上自衛隊に新編された、長崎県佐世保市・相浦駐屯地に所在する部隊。
万が一、島しょを占拠された場合に、地上だけでなく水上を浮上航行する能力を持つ装軌式の水陸両用車などを用いて、速やかに上陸、奪回、確保をするための水陸両用作戦を行うことが主な任務。
国防の最前線で領土を死守する特殊任務のため、選ばれし精鋭たちが集う。
「水陸機動団歌」の歌詞を紹介
一
彩雲たなびく西海に 九十九島(1)を仰ぎ見て 己を磨く相浦
陸海空風雪波嵐(2) 鍛う心とこの腕 日々練武の精神に 守りは堅し四方の海
嗚呼 尚武の構え 水陸機動団
二
祖国に嵐すさぶとも 艱難辛苦を打ち払い 先見確実迅速(3)に
柔軟不屈(4)と団結と ひとたび葉港(5)出たならば
尽くす誠は唯ひとつ 勇猛果敢 兵の道
嗚呼 凛たる戦士 水陸機動団
三
夕陽に映える日の丸台(6) 先人の恩に報いたる 武夫の伝統受け継ぎて
国の守りの礎と 御国に思う我が使命
正義と秩序のためにとて 晃りし海侍(7)ここにあり
嗚呼 輝く陽光 水陸機動団
「水陸機動団歌」の歌詞を解説
(1) 長崎の佐世保と平戸にかけて連なる群島で、水陸機動団のある佐世保・相浦を象徴する風光明媚な場所。
(2)「水陸両用作戦」は、海上自衛隊、航空自衛隊と一体となっった統合作戦であること、また過酷な環境の中でも任務をやってのけるという気概が込められている。
(3) 水陸両用戦闘員の心得。先を見通して周到に準備する「先見性」、常に点検を欠かさない「確実性」、即断・即決で速やかに行動する「迅速性」が求められる。
(4) 水陸両用戦闘員の心得。変化に臨機応変に対応する「柔軟性」と、いかなる困難に直面しても決して諦めない「不屈」の精神も必要とされる。
(5) 佐世保港の美称で、湾口が狭く、奥に広がる形状がヤツデの葉に似ていることから、そう呼ばれる。
(6) もともとは、国防意識高揚のために、旧海軍の給水塔に描かせたもの。戦後、陸自の駐屯地となり、改めて建造物として残した。
(7) 松浦水軍(平安から戦国時代に肥前松浦地方の海を舞台に活躍した武士団)、旧海軍、そして自衛隊と、長崎において活躍してきた武人らを総称した造語。
<作詞/陸上自衛隊 水陸両用戦闘員有志一同 作曲/海上自衛隊 東京音楽隊 藤吉正規3等海曹>
精強部隊に秘められた、愛をヒシと感じる歌
水陸機動団(以下、水機団)の隊歌は、2017年に新編のための準備隊が企画し、完成させたもの。
この歌詞の作り方はユニークで、水機団に加わることが決まった各部隊の隊員などから、入れてほしい単語やフレーズを公募、その中から言葉を選んでまとめあげたのだそう。
そのときにこだわって盛り込んだのが、佐世保鎮守府を象徴するフレーズ、統合作戦を連想するフレーズ、水陸両用戦闘員としての心得。中でも思い入れが強いのが、3番にある「正義と秩序のために」というフレーズなのだとか。
これは、水機団の礎となった今はなき西部方面普通科連隊の当時の連隊長が、自衛官の本分として掲げた言葉で、水機団の隊員らは、この歌詞によって自身の存在意義を感じ、使命感を強くするのだそう。
続く歌詞の「晃りし海侍」は、その使命を受け継ぐ強き者を表している。一方、作曲のほうは海自の隊員が担当。
水陸両用作戦は、海自の艦艇との相互信頼が重要で、海自との合作が望ましいという声から。
佐世保愛、元連隊長への感謝、そして3自衛隊統合愛、そんな愛にあふれた隊歌をぜひ聴いてみて!
URLより曲が聴けます
(MAMOR2022年12月号)
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです
<撮影/江西伸之>