•  日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。

     今回紹介するのは秋田県男鹿(おが)市加茂(かも)分屯基地の「男鹿(おが)ゴレン」。東南アジアの屋台めしとして人気の「ナシゴレン」を地元特産の調味料「しょっつる」を使ってアレンジしたオリジナル料理です。

    航空自衛隊加茂分屯基地の任務とは?

    画像: 男鹿国定公園の国有地の中にある分屯基地。その高台に、ドーム型の警戒管制レーダーがそびえ立つ
    男鹿国定公園の国有地の中にある分屯基地。その高台に、ドーム型の警戒管制レーダーがそびえ立つ

     航空自衛隊加茂分屯基地は、秋田県男鹿半島のほぼ中央に位置し、秋田杉に囲まれた自然豊かな環境にあり、部隊創設から今年で67周年を迎えます。

     空自三沢基地の分屯基地として、第33警戒隊が配置され、警戒管制レーダーにより、空からのあらゆる脅威に即時対応するため、24時間態勢で警戒監視に当たっています。

    「男鹿(おが)ゴレン」誕生の秘密

    画像: 「男鹿(おが)ゴレン」誕生の秘密

     今回紹介する「男鹿ゴレン」は、男鹿市の地元特産の調味料と、インドネシアやマレーシアでよく食べられるスパイシーなチャーハン「ナシゴレン」をかけ合わせたもの。

     そもそもは食育(注)の取り組みで、地元特産の調味料「しょっつる」(魚醤)を使用して何かできないか、しかも海外の料理のアレンジで、と考えたところから生まれたメニューなのだそう。

     エスニック料理に「ナンプラー」と呼ばれる魚醤が多用されることから、「ナシゴレン」なら「しょっつる」とも相性が良いはず! との結論に。タマネギも秋田県の特産品、もちろん米は「あきたこまち」です。ナシゴレンのナシはご飯、ゴレンは炒める、焼く、揚げるの意ですが、ここはあまり深く考えず「男鹿ゴレン」と命名。

     調理のポイントは干しエビを炒めて香りを出し、しょっつるを鍋肌で焦がすように加えて独特の風味をまろやかにすること。トッピングはキュウリ、トマトなど季節ごとに旬の食材に変えるのもあり。えびせんべいは中国伝統のスナックで「龍蝦片」の商品名で販売されています。目玉焼きとともに崩して、全体をよく混ぜて食べても味がなじんでおいしいです!

    (注)空自では、任務遂行に必要とされる健全な体と精神を養う基本は「食」にあることを踏まえ、年に4回「航空自衛隊食育の日」を設け、隊員の「食」に対する意識と関心を深めるため、「食育献立」を提供している

    隊員たちに食べた感想を聞いてみた

    画像: 「食育献立」を楽しみにしている隊員も多いのだとか。おいしく味わいながら、食材や味についての会話も弾むそう

    「食育献立」を楽しみにしている隊員も多いのだとか。おいしく味わいながら、食材や味についての会話も弾むそう

    「ナシゴレンより食べやすく、えびせんとの相性も抜群!月1回の定番メニューにしてほしいくらいです」(1曹/男性・40代)

    「見た目に食欲をそそられ、えびせんの食感もいいアクセントに。これにチーズのトッピングがあれば言うことありません!」(3曹/男性・20代)

    「男鹿特産の魚醤「しょっつる」の風味がしっかりと感じられておいしいチャーハンです。とろとろの目玉焼きも最高!」(士長/女性・20代)

    食事の時間が“おいしくて楽しい!”と思ってもらいたい

    【航空自衛隊 加茂分屯基地 第33警戒隊 基地業務小隊 3等空曹 栄養士 赤松 幸】

     出身は岐阜県ですが、父が航空自衛隊の自衛官で転勤が多く、日本各地で生活しました。秋田県は初めてだったので、男鹿は「おじか」と読むのかなって(笑)。

     2013年に入隊した際は別の職種でしたが、もともと高校が調理系だったこともあり、父のアドバイスで栄養士資格を取得できる空自の制度に応募しました。無事に資格を取得し、当分屯基地に配属されて5年目になります。

     新しい献立を考案した場合などは、調理現場で作り方や盛り付けを主導しています。食事の時間が“おいしくて楽しい!”と思ってもらえたらうれしいです。

    「男鹿ゴレン」のレシピを紹介!

    <材料(2人分)>
    ご飯:丼2杯分
    おろしニンニク:小さじ1
    干しエビ:大さじ1
    タカノツメ(好みで・小口切り):適量
    タマネギ(みじん切り):小1/2個(100g)
    合いびき肉:100g
    ピーマン(赤・黄、各みじん切り):各1/4個
    カシューナッツ(素焼き・食べやすく砕く):約20粒
    ゴマ油:小さじ2

    [合わせだれ]

    [A]
    酢:大さじ2弱
    砂糖:小さじ2
    豆板醤、おろしニンニク:各小さじ1/2
    塩:少々

    [B]
    しょっつる:小さじ4
    しょうゆ、砂糖:各小さじ2
    オイスターソース:小さじ1/2

    [トッピング]
    半熟目玉焼き2個、えびせんべい(市販品・揚げるタイプのものは表示どおりに揚げる)2〜4枚、クレソン、ベビーリーフなど適量

    <作り方>
    1:合わせだれを作っておく。小さめの耐熱容器にAを入れて混ぜ、電子レンジ(600W)で20秒ほど加熱する。取り出して冷めたらBの調味料を加えて混ぜ合わせる。
    2:フライパンにゴマ油を熱し、おろしニンニク、干しエビ、タカノツメを入れて中火で炒め、香りが出たら、タマネギを加えて炒める。
    3:タマネギが透き通ってきたら、合いびき肉を入れて炒め、肉の色が変わったら、ピーマン、カシューナッツを加えて炒める。さらにご飯も入れて炒め合わせ、①を鍋肌から回し入れ、強火で炒める。
    4:全体がパラパラとしてきたら、火から下ろし、器に盛り、目玉焼き、えびせんべい、クレソンやベビーリーフをトッピングする。

    注目食材:しょっつる

     秋田県の伝統的特産品として知られる魚醤(魚を塩漬けし、発酵させて作る調味料)のこと。しょっつるは県魚であるハタハタなどが原料魚で、独特の風味が特徴。少量でコクとうま味が加わり、奥深い味に仕上がる。

     石川県の「いしる」、香川県の「いかなご醤油」と並ぶ日本三大魚醤の1つ。魚醤は東南アジア一帯でも万能調味料として古くから親しまれ、タイの「ナンプラー」、ベトナムの「ヌクマム」などが有名。

    <調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/山田耕司(扶桑社) 写真提供/防衛省>

    (MAMOR2023年9月号)

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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