陸・海・空各自衛隊には、オリンピックなどの国家的な儀式や式典での演奏、訓練時や実任務中に隊員の士気を高揚させるための演奏をしたり、一般国民向けのコンサートや、各種イベントでの演奏などで自衛隊を広報する活動、そして国際親善などを目的とした演奏を行う、さらには自衛官としての訓練も行い、災害が起きれば派遣活動もする。そんな「音楽隊」が、全国に合計32部隊あるのだ。
音楽隊の活動目的は、大きく分けると3つある。近年、その活動範囲が広がっており、はやりの“二刀流”どころか、マルチプレーヤーだ。しかも、その活動の場は世界へ広がっているのだ。この記事では陸・海・空各自衛隊音楽隊の活動や役割を紹介しよう。
自衛官であり、音楽家でもある音楽隊員
自衛隊には、陸・海・空それぞれに、合計32の音楽隊がある。陸自には中央音楽隊をはじめとする21部隊、海自には東京音楽隊はじめ6部隊、そして空自には航空中央音楽隊はじめ5部隊。これらに所属する音楽隊員は「音楽科」という職種の自衛官だ。音楽隊の主な任務は「儀式や式典での演奏」、「隊員の士気高揚のための演奏」、「広報のための演奏」の3つが挙げられる。
「儀式や式典での演奏」は、音楽隊にとって最も重要な任務とされ、国家的行事における音楽演奏や、外国要人が来日した際などの式典演奏を指す。次の「隊員の士気高揚のための演奏」は、音楽演奏を通じて全国の部隊に所属する隊員の心をケアし、励ます活動のこと。
そして「広報のための演奏」は、民間のイベントや、市中の会場で行われるコンサートなどを通じて、一般国民向けに、自衛隊の活動を理解してもらう一環として演奏することである。最近ではこれら3つの主任務に加え、国際親善を目的とした活動も重視されている。
海外で行われる軍楽隊が集まった演奏会への派遣や、アメリカ軍をはじめとする友邦の軍楽隊とのコラボレーションなど、音楽隊が活躍するステージも、世界に広がっている。
裏方の仕事も自分たちで担う
音楽隊の隊員たちは、演奏のほかにもさまざまな活動を行う。自衛官としての基礎的な訓練、例えば小銃射撃や格闘技術の訓練、体力錬成などだ。また、地震や台風などの災害時には、ほかの部隊と同様、災害派遣活動に従事する。
演奏の「裏方」も自分たちで担う。各種演奏会の企画・演出から会場の手配、チケットの発行、楽器の管理とメンテナンス、会場までの器材や人員の輸送など、あらゆる事柄を自前で行っているのだ。
自衛官としての顔、演奏家としての顔、そして運営者としての顔。いろんな顔をもっているのが、音楽隊なのである。
主な3つの任務
儀式・式典での演奏
今上天皇即位の礼、大喪の礼などの国家的儀式での演奏や東京オリンピックをはじめとする国際的イベント、世界各国からVIPが来日した際に歓迎で行われる演奏、自衛隊内部の式典演奏などがこれにあたる。
隊員の士気高揚
全国で活動する隊員の士気を高める、励ますために、基地・駐屯地、艦艇や演習場などで演奏を行う。航海訓練や戦技競技会などでも演奏し、奮起を促し、激励するほか、自衛隊員の家族向けの演奏会などもある。
広報演奏
国民に自衛隊の活動を広く周知するために行う演奏。自衛隊広報活動の一環として、定期演奏会をはじめとする各種演奏会、市販されるCD・DVDへの録音・録画協力、テレビ番組の収録協力などでも演奏を行う。
<文/臼井総理 写真提供/防衛省>
(MAMOR2023年8月号)
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