MAMOR 最新号

5月号

定価:780円(税込)

 防衛装備品の世界で大きなトランスフォーメーションが起きている今、激変する世界の安全保障環境の潮流に対応した新世代護衛艦『もがみ』がデビューした。なにが先進的なのか、細部にわたってリポートしよう。

 高ステルス性、多機能、コンパクトなど、さまざまなキーワードで語られる『もがみ』。従来の護衛艦と比べ、どのような進化を遂げたのか?

 その特徴をパーツごとに見てみよう。細かなディテールにまでこだわり抜いた『もがみ』から、未来の艦艇の姿が見えてくるはずだ。

艦橋

画像: 各種スイッチやレバー、舵輪などであふれかえっていた従来艦に比べると、モニターが並び近未来の艦を思わせる『もがみ』の艦橋。デジタル化によりスイッチ類も減っている 右写真提供/防衛省

各種スイッチやレバー、舵輪などであふれかえっていた従来艦に比べると、モニターが並び近未来の艦を思わせる『もがみ』の艦橋。デジタル化によりスイッチ類も減っている 右写真提供/防衛省

デジタル化されたモニター画面にさまざまな情報を表示

『もがみ』の大きな目的の1つである省人化は、主に艦の運航を行う艦橋において実現されている。

 従来艦は連絡や雑務も含め10人ほどのクルーが艦橋に詰めかけていたが、『もがみ』の艦橋に配置されるのはたったの4人(最小3人で運航可能)。

 まるで自動車のハンドルのような舵輪を握る操舵員の席の右側に、艦の運航をつかさどる航海指揮官の席、左側にレーダー員の席、そして艦橋で見張りなどの任務に就く信号員が常駐し、艦橋右舷側の端に艦長席がある。

画像: 従来艦(かが)

従来艦(かが)

 少人数で運航が可能になったのは、操舵装置やレーダーの表示モニターといった、従来は個々に配置していた機器類を統合して1つのシステムとしたからだ。機器のデジタル化を推し進め、1つのディスプレー上に情報を集約・表示することで、あらゆる艦内情報にアクセスできるようになった。

CIC

画像: (写真左)従来の護衛艦のCICは、レーダーなど各機器で独立した造り。隊員の役割ごとに座席が決められておりアクセスできる情報は限られる 写真提供/防衛省 (写真右)360度がディスプレーで囲まれた円形のCIC(戦闘の指揮・統制を行う区画)のCGイメージ。各モニターの表示は自由に設定・変更が可能 写真提供/防衛省

(写真左)従来の護衛艦のCICは、レーダーなど各機器で独立した造り。隊員の役割ごとに座席が決められておりアクセスできる情報は限られる 写真提供/防衛省
(写真右)360度がディスプレーで囲まれた円形のCIC(戦闘の指揮・統制を行う区画)のCGイメージ。各モニターの表示は自由に設定・変更が可能 写真提供/防衛省

艦内の機能を集約した新たなCICシステム

 護衛艦の心臓部ともいえる戦闘指揮所(CIC)では艦艇内外の情報を分析し、指揮・命令が発せられる。

『もがみ』では、各部署にカメラやセンサーを設置し、戦闘の管制だけでなく、これまでは運航、操舵や各種機器管理など別々の区画で行っていたものを、CICで一元化できる「トータルシップコントロールシステム(TSCS)」を採用。従来艦の200〜300人ほどの乗員に対し、『もがみ』は約90人で運用される。艦内のあらゆる情報にアクセスできるので、少人数で効果的に艦を運用することができる。

 また、『もがみ』の乗員は生体センサーを着用しており、脈拍をモニタリングしている。これまで緊急時に隊員が直接確認に回っていた乗員の安否もCICで知ることが可能になった。

USV格納庫

画像: 複数のタイヤが設置されたレールが後方にせり出し、USVが発進する。揚収時は、タイヤが回転することでUSVの搬出入が行える。この格納庫では機雷処理用の小型ボートも格納することができる

複数のタイヤが設置されたレールが後方にせり出し、USVが発進する。揚収時は、タイヤが回転することでUSVの搬出入が行える。この格納庫では機雷処理用の小型ボートも格納することができる

機雷処分用のUSVを搬出入するための区画

 これまでの護衛艦にはなかった機能として、対機雷戦能力の導入がある。というのも、鋼鉄製の護衛艦は磁気に反応する機雷が敷設されている可能性のある危険水域に進入することができない。

 そこで『もがみ』では対機雷ソナー・システムを装備し、さらに機雷処分用水上無人機(USV)と、別区画に新型機雷捜索用水中無人機(UUV)も搭載予定。機雷の捜索から処分までの一連の掃海任務をアウトレンジで行うことを可能にした。

『もがみ』に搭載される予定の機雷処分用水上無人機。レーダーを内蔵した小型ボートで、自動で航行しながら水上の情報を収集し、機雷処分を行う 写真提供/防衛省

画像: 『もがみ』に搭載される予定の新型機雷捜索用水中無人機。ソナーを内蔵した小型の潜水機で、自動で航行しながら海中や海底の情報を収集し、機雷処分を行う 写真提供/防衛省

『もがみ』に搭載される予定の新型機雷捜索用水中無人機。ソナーを内蔵した小型の潜水機で、自動で航行しながら海中や海底の情報を収集し、機雷処分を行う 写真提供/防衛省

 UUVはこれまで掃海艦艇で使用していたが、護衛艦に搭載するのは今回が初めて。USVは艦尾に格納区画があり、艦尾の扉を開きタイヤ付きのレールを操作することで、洋上でUSVを発進、揚収することができるのだ。

居住区画

女性用の区画が完全に仕切られ居住性がアップ

『もがみ』のベッドルーム。コンパクトな船体だが、省人化により個々人のスペースが確保されている(写真上)。従来艦では女性隊員専用の居室や風呂、トイレはあったが、男性隊員用の区画とは分けられていなかった

『もがみ』の居住区画は、女性隊員のためのエリアが完全に区切られている。

 ベッドだけでなく、トイレ、シャワーといった区画も、完全に女性専用になっており、男性の立ち入りは禁止されている。いまや女性隊員抜きでの艦艇の運用は考えられないため、双方ができるだけストレスを感じることなく任務に就けるよう、さまざまな配慮がされている。

 ちなみに、従来艦の風呂はくんだ海水を沸かしていたが、『もがみ』の風呂は艦内で精製した真水を沸かしている。

飛行甲版

飛行甲板は、艦載ヘリコプターが離着艦するための区画。周囲が鉄板で囲まれ、ステルス性向上に寄与(写真上)。従来艦はネットのある柵で囲まれている 下写真提供/防衛省

外柵のネットを廃止してステルス性重視の囲いに変更

 艦後部には、ヘリコプターが離着艦するための飛行甲板と格納庫がある。ここにはSH−60K哨戒ヘリコプターが1機格納できる。従来艦は後部甲板をネットの外柵で囲っていた。

 しかし『もがみ』では、ステルス性向上の観点から鉄板で艦艇周囲を囲んでいる。この鉄板は起倒式になっており、必要に応じて動かすことができる。また、艦全体の高さを低く抑えるため、飛行甲板は艦首に向かって緩やかに下がり傾斜している。

食堂

画像: 40人が着席できる『もがみ』最大のスペースである食堂。食事だけでなく会議などにも利用される

40人が着席できる『もがみ』最大のスペースである食堂。食事だけでなく会議などにも利用される 

幹部用の食堂は廃止。食事は全員同じ場所

 海自では伝統的に艦艇内では、幹部曹士は別々の部屋で食事をし、同じメニューでも盛り付けなどが異なっていた。

画像: 従来の護衛艦では、艦長などは士官室で食事をとり、盛り付けも特別なものになることも 写真/近藤誠司

従来の護衛艦では、艦長などは士官室で食事をとり、盛り付けも特別なものになることも 写真/近藤誠司

 しかし省人、省力、省スペースをモットーとする『もがみ』では、全員が1つの食堂で食事をとり、メニューや盛り付けなども同じだ。そのため艦内は和気あいあいとした雰囲気になっているという。

 なお従来の艦艇ではボイラーから発生する蒸気熱を利用して調理を行っているが、『もがみ』には補助ボイラーが設置されていないため、厨房はオール電化だ。

錨甲版

画像: 前甲板の下に位置し、低い天井の下に、巨大ないかりの巻き上げ機(揚錨機)が設置されている錨甲板(写真上)。従来艦『あさひ』(2018年配備)のいかりは、艦首に2つ(赤丸部分)

前甲板の下に位置し、低い天井の下に、巨大ないかりの巻き上げ機(揚錨機)が設置されている錨甲板(写真上)。従来艦『あさひ』(2018年配備)のいかりは、艦首に2つ(赤丸部分)

揚錨機は艦内の専用区画に格納。ハッチを開閉して投錨する

 前甲板の真下に、錨甲板が設けられており、そこに揚錨機など各種機器が装備されている。

 従来の護衛艦ではむき出しだったいかりは、『もがみ』では運航時は艦内に格納し、いかりを使用するときには甲板前部のハッチが開き、そこから投錨する。

画像: 従来艦『あさひ』(2018年配備)のいかりは、艦首に2つ(赤丸部分)

従来艦『あさひ』(2018年配備)のいかりは、艦首に2つ(赤丸部分)

 さらに、これまでの護衛艦は艦首の左右にいかりがあったが、『もがみ』は必要最小限の装備のみでコンパクト化を図った結果、左舷側に1基しか装備されていない。

(MAMOR2023年5月号)

<文/古里学 写真/村上淳>

超・新世代護衛艦『もがみ』発進!

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