日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。今回は京都府福知山駐屯地より、料理名も見た目もなんともユニークな「鬼に金棒ランチ」を紹介します。みんな大好き、ケチャップライスにエビフライとつくね!
約1000人の隊員が訓練に励む「陸上自衛隊福知山駐屯地」
陸上自衛隊福知山駐屯地は、1579年ごろに、明智光秀が築いた福知山城の城下町として栄えた、京都府福知山市中心街の西南に位置しています。
2023年には創立73周年を迎え、現在は第7普通科連隊を基幹に、第3後方支援連隊や中部方面会計隊の各隷下部隊、福知山駐屯地業務隊など、約1000人の隊員が日々訓練に励むとともに、地域社会の一員として共栄を図っています。
「鬼に金棒ランチ」誕生のきっかけは……
今回紹介する「鬼に金棒ランチ」は、給食向上施策として中部方面隊の各駐屯地が献立を競う大会「中方ダイニング甲子園」にエントリーしたメニュー。「鬼のまち」として注目を集めている福知山市ならではのインパクトのある料理を作ろうと、糧食班と栄養士、みんなで話し合いながら作り上げた料理だそうです。
鬼をモチーフとして、チキンケチャップライスで顔、若い隊員が大好きなエビフライで角、栄養バランスも考え、サニーレタスでモジャモジャの髪を表現。そして鬼といえば金棒ということで、つくね棒を添え、仕上げにケチャップで目と口を描きました。これにポテトサラダや豆サラダの小鉢とスープを添えればボリュームも満点! 当食堂では業務用のエビフライと鶏つくね棒を使って調理していますが、全て出来合いの総菜を使って盛り付けをしてみるのも楽しそう。
ちなみに「鬼に金棒」とは「強いものにさらに強さが加わり、無敵になること」。ランチにこれを食べたら、隊員たちもパワーアップすること間違いなしです。
見た目良し、味良し!みんなが笑顔になれるランチ
「いろいろな鬼の顔があって、選ぶのも楽しいです。ボリュームはありますが、かわいいので全部食べられちゃいます!」(士長/女性・20代)
「鬼の顔が見ているだけで楽しい!そして金棒のアイデアもグッド! 見た目良し、味良しで、また食べたくなります」(曹長/男性・40代)
「みんなが笑顔になれるランチ。チキンライスの味付けが比較的あっさりとしているので、最後までおいしくいただけました」(1尉/男性・50代)
目で楽しめる献立づくりを
【陸上自衛隊 福知山駐屯地業務隊補給科糧食班 栄養士 岡本加織】
京都府宮津市の出身です。“食べること、作ること”が好きで栄養士を目指しました。免許取得後、病院や福祉施設、栄養士養成校で勤務し、2016年に自衛隊に入隊して現在に至ります。
強い体づくりのために、必要カロリーを満たし、食材のバランスなどしっかりとした栄養管理をするのはもちろんのこと、今回紹介したメニューのように、まず目で楽しんでもらい、味わっても満足してもらえる献立作成を心掛けています。“こんなのを提供したら、みんなどんな反応をするかな”なんて、いつも想像しながらレシピを考えています。
「鬼に金棒ランチ」のレシピを紹介!
<材料(2人分)>
ご飯:丼2杯分
鶏モモ肉(1㎝角に切る):1/3枚(80g)
タマネギ(粗みじん切り):1/3個(80g)
<A>
ウスターソース、しょうゆ:各小さじ1
酒:小さじ2
トマトケチャップ:大さじ2
塩、コショウ:各少々
バター:少々
エビフライ(市販品):4本
鶏つくね棒(市販品):2本
サニーレタス(鬼の髪用)、トマトケチャップ(顔描き用):各適量
サラダ油:適量
<作り方>
1:フライパンにサラダ油を熱し、鶏肉とタマネギを入れて炒める。タマネギが透明になったらⒶの調味料を加えて味付けをする。
2:①にご飯を入れ、バターも加えてざっくりと混ぜて火を止める。
3:エビフライは冷凍なら表示どおりに揚げ、出来合いの総菜ならオーブントースターなどで温める。
4:鶏つくね棒は冷凍なら表示どおりに温めて焼き、出来合いの総菜ならオーブントースターで温める。
5:器に②を盛り、鬼に見立ててサニーレタス、エビフライ、鶏つくね棒を付け合わせ、仕上げにトマトケチャップで目と口を描く。
料理名の由来は大江山の鬼伝説!
福知山市の北に位置する大江山は、秋に8合目の鬼獄稲荷神社から見渡せる雲海や、いくつかの鬼伝説が残ることで知られる。
中でも有名なのは、大江山をすみかとする酒好きの鬼頭領「酒呑童子」の伝説。平安時代、京の都から姫君たちをさらって暴れまわるも、毒入りの酒で酔わされ、退治されたという。江戸時代には歌舞伎などで扱われるほどに親しまれてきた。「鬼に金棒ランチ」のかわいらしい鬼とは大違い。伝説では身の丈6メートル、角が5本、目が15個といわれる。
(MAMOR2023年6月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/山田耕司(扶桑社) 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです