•  2022年10月に打ち上げられたロケットに乗り込む搭乗員の宇宙服を見て、まるでSF映画に出てきそうな、そのスマートさに驚いた方もいるのではないだろうか?アポロ計画のころに比べて隔世の感がありますが、果たして、その性能、機能はどうなのだろうか。

     MAMOR2023年4月号では、最新の宇宙服の性能・機能をクローズアップ。今回はその一部を特別開。NASAが進めている月面探索のプロジェクト『アルテミス計画』で開発中の宇宙服について、サイエンスライターの林公代(はやしきみよ)氏に話を伺った。

    月面着陸を想定した次世代の宇宙服が開発中

    林公代氏

     開発中の宇宙船外で活動をする(EVA)ための“船外活動服”は、見た目以上に進化が著しいと林氏。

    「『アルテミス計画』で探索をする月の重力は地球の6分の1。無重力空間である宇宙空間での活動にはない『歩く』、『しゃがむ』といった動作が求められます。新船外活動服はNASAの開発が遅れ、現在はNASAと契約をした2社の民間宇宙企業が『xEVAS』計画の下、次世代船外活動服の開発を進めています。

     EMUからの大きな変化は動きやすさです。膝や肘など関節周りの可動域が広がり、軽量化やフィット感を向上させることで、宇宙飛行士のパフォーマンスを最大限引き出せる設計になっています。高速データ通信のほか、防塵機能、生命維持装置の小型化、脱着のしやすさなど、数々の改良が検討されています。

     また、月での活動で重要になるのがメンテナンスです。月面探査中、宇宙服にトラブルが起こっても地上から代替品を送るには片道3日以上かかります。そのため、船外活動服も現地である程度の故障や補修に対応できるよう手入れのしやすさも改善されるでしょう」

    これがアルテミス計画の最新船外活動服「xEVAS」だ

    写真:ⓒCollins Aerospace

     月面探索用に「探査船外活動ユニット(xEMU)」開発を進めていたNASAは、開発遅延もあり方針を転換。

     次世代宇宙服の開発・製造を担う民間企業を募集し、「探査船外活動サービス:xEVAS(Exploration Extravehicular Activity Services)」に関する契約を2社と締結した。その最新船外活動服の特徴について、コリンズ・エアロスペース社が開発中のxEVASを例に紹介しよう。

    民間企業との契約で開発が加速する新船外活動服

     2022年6月、NASAは次世代宇宙服の開発・製造を担当する企業としてアクシオム・スペース社とコリンズ・エアロスペース社の2社を選定し、契約を結んだことを発表。コリンズ・エアロスペース社のリリースによると、xEVASは現在使用中のEMUと比べ軽量で機動性が向上しているため、ミッション時間を増やすことが期待できる。

     また、ほぼすべての宇宙飛行士の体型に対応するように設計されており、新しい技術も迅速に組み込むことができるとしている。外見はEMUと同じようだが、現在分かっているxEVASの特徴と機能の違いについて見てみよう。

    xEVASの特徴と機能の違い

    画像2: 写真:ⓒCollins Aerospace

    写真:ⓒCollins Aerospace

     地球の6分の1とはいえ、月には重力がある。酸素や飲料水用のタンク、無線機などを搭載した生命維持装置は軽量化が図られている。

    画像3: 写真:ⓒCollins Aerospace

    写真:ⓒCollins Aerospace

    写真:ⓒCollins Aerospace

     関節の動きが制限されていたEMUと比べ、xEVASは股関節周りや膝関節周りが稼働するように開発・研究されている。

    【林公代氏】
    宇宙・天文分野を中心に30年以上活動しているサイエンスライター。主な著書は『さばの缶づめ、宇宙へいく』(イーストプレス刊)など

    (MAMOR2023年4月号)

    <文/真嶋夏歩 写真:ⓒCollins Aerospace>

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