日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。
今回は青森県東北町分屯基地の「しじみラーメン」です。地元特産のシジミがたっぷり入った食べ応えのある1品。貝のだしがきいたスープは最後の1滴まで飲み干したくなります。
空自で唯一、不発弾処理の教育が行われている東北町分屯基地
青森県東部の上北郡東北町の山林地区にある航空自衛隊東北町分屯基地。敷地面積は約270万平方メートル(東京ドーム約58個分)で、高低差が約90メートルあり、そのうちの9割が森林に覆われています。
近くには青森県最大、全国で11番目に大きい面積を持つ湖「小川原湖」があり、冬はワカサギ釣り、春は小川原湖公園の桜まつりでにぎわいます。
分屯基地の開設は1994年3月で、6月には弾薬庫に弾薬が初搬入されました。所在するのは空自第4補給処(埼玉・入間基地)の支処である第4補給処東北支処で、主な任務は弾薬の補給、保管、整備などです。
また、空自として唯一、不発弾処理に関する教育が行われています。地元では信頼と親しみを込めた呼び名「弾薬庫」で通っており、タクシーに乗車した際は、「弾薬庫まで行ってください」、「はい、分かりました!」となるのだそうです。
"小川原湖産大和しじみ"のうま味が詰まった「しじみラーメン」
今回紹介するメニューは東北町の特産品「小川原湖産大和しじみ」のうま味が詰まった「しじみラーメン」。シジミを殻ごと水からじっくりと加熱してとった白濁の濃厚なだしに、調味料を加えて味を調えたスープは絶品です。おろしショウガの香りもポイント。豚骨や鶏ガラをメインに使ったラーメンとはひと味違う優しい味が楽しめます。
小川原湖産大和しじみが手に入らない場合でも丁寧にシジミのだしをとればおいしく作れるそうです。ラーメンがあっさり味なので、ニンニクの芽と豚肉のオイスターソース炒めなど、濃い味の副菜が合うそうです。
だしが効いていて心と体が安らぐ味わい!
隊員たちに食べた感想を聞いてみると……
「シジミから出た濃厚なだしと鶏ガラをベースにしたスープが、麺としっかり絡み合う味わい深いラーメンです!」【1尉/男性・40代】
「芳醇でまろやかなシジミのスープが喉を通った瞬間、おいしいため息が出て、心と体が安らぐ味わいです」【3曹/男性・20代】
「ラーメン全体の色合いが良く、食欲をそそられます。シジミだしのスープは上品で、女性でもさらっと食べやすいです」【士長/女性・20代】
「おいしい!」をたくさん聞けるのがうれしい
【航空自衛隊 東北町分屯基地 第4補給処 東北支処 防衛技官 山田智仁】
1999年に入隊、出身も当分屯基地がある場所と同じ、東北町です。現在は調理係長として約100人分の調理をしながら、経験を生かして若手の栄養士に指導やアドバイスもしています。
青森県は塩分を多くとる傾向があり、短命県といわれているんです。塩分が少なめでもおいしく味わってもらえるよう、昆布、カツオ節、煮干し、シイタケを粉末にしたオリジナルのだし粉を作って、みそ汁などに利用するなど、「だし」にこだわっています。手間をかけた分、「おいしい!」という言葉をたくさん聞けるのがうれしいですね。
「しじみラーメン」のレシピを紹介
【材料(2人分)】
中華麺:2玉(240g)
カイワレ(長さを半分に切る):適量
[スープ]
シジミ(殻付き・砂抜きする):400〜500g
水:4カップ
[A]
酒:大さじ2
鶏ガラスープの素(顆粒):大さじ1
中華スープの素(顆粒):小さじ1
塩:小さじ1/2
めんつゆ(2倍濃縮):大さじ1〜2
おろしショウガ:小さじ1
【作り方】
1:スープを作る。鍋に砂抜きしたシジミと水を入れ、中火でじっくり加熱する。シジミの殻が開いたら、[A]の調味料を入れ、さらにおろしショウガを加えてひと煮立ちさせる。
2:中華麺はたっぷりの湯で表示どおりにゆで、湯をきる。
3:器に(2)と、(1)のスープを入れてシジミを盛り、カイワレをのせる。
注目食材:シジミ
日本に生息する代表的なシジミは淡水で育つマシジミ、汽水域(多少の塩分を含む湖沼)で育つヤマトシジミ、琵琶湖で育つセタシジミの3種類。青森県東北町の汽水湖・小川原湖で漁獲される「小川原湖産大和しじみ」は約4年の歳月をかけて成長させるため、大粒で濃厚なだしが出るうえ、身もしっかり味わえるのが特徴。
「地理的表示保護制度」(注)に登録されている。栄養豊富で疲労回復、肝機能改善などに効く。
(注)地域の特色ある農林水産物や食品の産地をブランドとして保護する制度
(MAMOR2022年12月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/山川修一(扶桑社) 写真提供/防衛省>