•  毎日のようにテレビ画面に映し出される戦争の最前線シーンを見ていると、兵士の任務は迫撃砲やミサイルを撃ったり、戦車や装甲車で進撃することと理解されている方も多いのではないだろうか? 

     しかし、その数百倍の兵士が後方で戦っている。自衛隊も同様だ。領空侵犯を阻止するため緊急発進する戦闘機や、領海への侵入を防ぐために監視する護衛艦、潜水艦、哨戒機などの任務は、報道などで国民の目に触れる機会もあるが、その任務を支えるために、国民の目に触れない多くの隊員が日本を守るために戦っているのだ。そんな“あなたが知らない自衛隊の仕事”を、マンガで紹介しよう。

    冷凍庫の在庫調査

    極寒の倉庫内で食材の在庫調査

    【海上自衛隊給養係】

     隊員食堂で調理などを担当する給養員。月に1度ほど、マイナス25℃という極寒の冷凍庫で在庫調査を実施する。食材は消費期限が早いものから使用するので、古い食材を出しやすい位置に移す入れ替え作業を行う。耳や鼻が凍傷にならぬよう、10分ほどで1度は外に出るという、ハードな力仕事だ。

    楽譜の管理

    演奏会で使用した楽譜を収納棚に整理

    【自衛隊の各音楽隊】

     自衛隊の音楽隊は広報のためや、隊員の士気高揚のためにイベントなどで演奏している。使用した楽譜の整理・収納を行うのも、隊員のおしごとだ。全ての楽器のパートが書かれた譜面「総譜」に記された順番どおりに並べる。それを袋に入れて、楽譜室のジャンルごとに分かれた棚に収納するのだ。

    かいのきせ巻き

    短艇で使う「かい」を補強するおしごと

    【海上自衛隊教育隊など】

     教育隊幹部候補生学校などで行われる、海自伝統の短艇訓練。気力と体力、団結力を養うため、12人のこぎ手が木製の「かい(オール)」をこいで短艇を進航させる訓練だ。そこで使用するかいの整備は教育隊の教材係などが担当。タールを染み込ませた麻のロープをかいに巻きつけ補強するのだ。

    砂盤作り

    学生指導用のリアルなジオラマを作製

    【陸上自衛隊の各学校など】

     陸自の学校などで使用される「砂盤」は、地図の等高線を立体的にしたジオラマのようなもの。これを作製するのも隊員だ。砂盤を使って行われるのは、戦闘指導や戦闘予行など。リアルに作られた砂盤の上で車両や敵兵の模型を動かすことで、実際の現場での行動をイメージしながら学べる。

    航空機の機付長名の塗装

    機付長の名を書くことで業務への士気を高める

    【航空自衛隊各飛行部隊】

     航空機の整備を担当する主任は「機付長」と呼ばれる。戦闘機などには、この機付長の名前が整備担当の機体に書かれることがある。それは、その機体に対する「責任の所在の明確化」のため。名前を書くことで、機体の安全のための整備を意識させ、「俺の機」を管理するという“愛機精神”を醸成させるのだ。

    自衛隊の「縁の下の力持ち」たち。取材して痛感したことは…

     このマンガは、雑誌『MAMOR』に2017年から2年間連載された「岡田の手も借りたい!」という体験ルポを基に描いた。普段、光の当たらない部隊に脚光を浴びせたい、と取材にあたった、元予備自衛官でライターの岡田真理さんに、今回のマンガに登場する各部隊での経験やその印象について語ってもらった。

    地味な任務の人がいて今の平和があると実感

     全国各地にある陸・海・空の各自衛隊の部隊を取材して『MAMOR』で記事を書いている岡田さん。自衛隊のさまざまな仕事に触れるうちに、気づいたことがあったという。

    「自衛隊には戦車や戦闘機、護衛艦といった華やかな部隊がある一方で、『え!? 自衛隊でこんなお仕事を!?』とか『華やかに見える自衛隊の任務はこういう部隊に支えられていたのか!!』と知ることができました。どの部隊にも、与えられた仕事を地道に黙々とこなしている隊員さんがいることを実感しましたね」。中でも印象に残っているのが、自衛官が使う物品の整備をしている隊員の言葉だったと、岡田さん。

    「その隊員さんが縫製したシーツや枕カバーのクオリティーがあまりにも高かったので、ここまでする必要ある? 給料に見合わないのでは? と思ったんです。するとその隊員さんは、“自分たちは自衛官の活動を支えるサービス業で、無償のサービス、心のこもった支援を心がけている。その結果、自分が整備した物品を使った隊員に喜んでもらって、『ありがとう』の一言がもらえれば、それで満足だ”って言うんですよ」

     岡田さんは、災害時に被災した方たちが派遣された自衛官に感謝するのは、自衛隊がこの「無償のサービス」を追求しているからだと思い至ったという。「でも、災害派遣に参加した隊員の皆さんは『当たり前のことをしただけ』と必ず言います。そんな無償のサービス精神に溢れた自衛隊って、やっぱりすごいなあって」。普段は人目につかない縁の下の力持ちたちの作業によって支えられ、日本の平和を守っている自衛隊。取材を通してそのことを痛感したと岡田さんは、今回の漫画化に寄せてコメントをしてくれた。

    【岡田真理】
    1977年、福岡県生まれ。同志社大学工学部中退。フリーライター、元陸上自衛隊予備自衛官。著書に、当ページで紹介した連載をまとめた『誰も知らない自衛隊のおしごと』(扶桑社)、『いざ志願! おひとりさま自衛隊』(文春文庫)などがある

    (MAMOR2022年2月号)

    <文/魚本拓 漫画原案/岡田真理 漫画/日辻 彩>

    あなたが知らない自衛隊のおしごと

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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