自衛隊候補生として陸上自衛隊に入隊し、任期制の常備自衛官を目指す以外にも、年齢や最終学歴、持っている資格などに応じて自衛隊に入隊する道は複数ある。ここでは普段は学生や社会人として生活し、有事の際に自衛官として勤務をする「予備自衛官」の制度を紹介しよう。
非常勤の自衛官である予備自衛官制度
自衛官に興味はあるが、今の仕事を辞めてまでは……と思っているあなた。自衛隊には「予備自衛官」という、普段は学生や社会人として生活を送り、いざというときには自衛官として任務に就く制度があることをご存じだろうか。
「予備自衛官は非常勤の自衛隊員という特別国家公務員であり、3つの制度があります。1つ目は自衛隊未経験者が予備自衛官になるための制度『予備自衛官補』です。2つ目は『予備自衛官』で、自衛隊を退職した元自衛官、または予備自衛官補が所定の教育訓練を修了すると任官します。3つ目は『即応予備自衛官』。これは陸上自衛隊のみの制度で、第一線部隊の一員として任務に就きます。そのため、元自衛官または予備自衛官から選考し採用しています」
このように語るのは、防衛省人事教育局で予備自衛官室長(取材時)の武田学先任部員。予備自衛官は2011年3月に東日本大震災での災害派遣で初めて招集されて以降、台風、地震の災害などで7回招集されている。直近は20年7月の「令和2年7月豪雨(熊本県)」などで即応予備自衛官や予備自衛官が招集されている。
「即応予備自衛官、予備自衛官を雇用する企業に対して給付金を支給する制度もあります。予備自衛官は年5日間の訓練参加などが必須ですが、普段の生活を大きく変えず、有事の際は社会に貢献できる制度です」
3タイプある予備自衛官の役割となり方を知ろう!
即応予備自衛官
【役割】
第一線部隊の一員として、常備自衛官と共に任務に就く
【訓練日数】
30日間/年
【員数(注)】
7981人
(注)員数は2022年4月1日時点での数字
【手当など】
即応予備自衛官手当:1万6000円/月
訓練招集手当:1万400~1万4200円/日
勤続報奨金(注1):12万円/1任期(3年)
【採用まで】
元自衛官、元自衛官出身の予備自衛官の志願者から選考で採用。また、予備自衛官補から公募予備自衛官になった志願者から選考し、教育訓練を経て、さらに選考で採用
【雇用企業への給付金】
即応予備自衛官雇用企業給付金(注2):4万2500円/月(1人につき)
即応予備自衛官育成協力企業給付金(注3):56万円/人
雇用企業協力確保給付金(注4):3万4000円/日
予備自衛官
【役割】
第一線部隊の出動時に、駐屯地の警備や後方支援などの任務に就く
【訓練日数】
5〜20日間/年(自衛隊法には年に20日以内と定められているが、実際は年に最低5日訓練に参加すればよい)
【員数(注)】
4万7900人
(注)員数は2022年4月1日時点での数字
【手当など】
予備自衛官手当:4000円/月
訓練招集手当:8100円/日
【採用まで】
元自衛官の志願者は選考で、予備自衛官補の志願者は教育訓練を経て採用
【雇用企業への給付金】
雇用企業協力確保給付金(注4):3万4000円/日
予備自衛官補
【役割】
教育訓練のみを行い、教育訓練修了後に予備自衛官として任用される
【訓練日数】
一般採用:50日間/3年以内
技能採用:10日間/2年以内
【員数(注)】
4621人
【手当など】
教育訓練招集手当:8500円/日
【採用まで】
主として自衛官未経験の志願者が、採用試験(筆記試験など)に合格して採用
(注1)即応予備自衛官の1任期(3年間)を良好な成績で勤務すると支払われる
(注2)即応予備自衛官が年間30日の訓練および招集時にいつでも出頭できる環境を整えてもらうため、雇用企業に支給される給付金
(注3)即応予備自衛官になるために必要な知識や技能習得のため、教育訓練で勤務先を離れる日数が増えることから、雇用企業の協力を得るために任用者1人につき給付金を支給
(注4)予備自衛官または即応予備自衛官が招集され平素の勤務先を離れざるを得なかった場合に、その日数分の職務に対する理解と協力の確保に役立てるため支給される給付金
(MAMOR2022年10月号)
<文/臼井総理 撮影/村上淳>